おるたな美術館

旅先で出会った東洋美術、西洋美術

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手の込んだ力作の多い十字回廊でも、南東の隅っこあたりとなると下画像のような作品に出会うことが出来る。似たようなコスチュームとポーズの上画像(北西壁面のもの)と比較すれば、その落差に目眩すら覚えるひともいるだろう。

特に下画像中央の1体など、その左側の像と比べてもとても同じ時期の造像とは思えない。額の生え際から頭頂までが異様に短く、結い上げた髪の表現の稚拙さ(生え際から結び目へと髪の流れがつながってない)、歯を覗かせたお下劣な落書き風表現は、後の時代の誰かが摩滅した(または未完の)頭部に新たに刻んだものだろう。

単純に表現の多様さといってもアンコールワットの女神像群は、壮健当初の創意工夫だけでも充分に多様なものがあり、さらに後世の補完・補修、風化による変色・崩落と、そのイメージの変容・多様化は底無し沼の様相を見せる。高度な造形から稚拙なもの、保存状態の良いものから破損の著しいものへと作品の状態は裾野を広げ、そうして成り立ったデヴァターの宇宙は、このようなおちゃらけた造形すら時代の違うものとして分け隔てすることなく、難なく呑み込んでしまう。

そういう意味ではこの下画像中央の彼女(顔だけ見てると男に思えるが……)も、間違いなくアンコール・ワット境内の一員なのだ。


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