おるたな美術館

旅先で出会った東洋美術、西洋美術

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“その4”の右上画像のチコメコアトルと同じ、中央が少し括れた円筒形の香炉を背後に背負った形式の土器。

これらは両方とも雨と稲妻の神トラロックのようで、展示室のライティングによる顔や仮面の陰影が効果的だ。当初の彩色が無くなってしまった現状ならではの魅力だろう。トラロックの扮装をした神官が複雑で深い表情を称えている。

ところで両者が右手に持つ波状にうねった平べったい物質が蛇であろうことは推測がつくが、何でこんな風にデザイン化されたのか気になった。ただ単に蛇を形象化したにしては頭部が無く、しかも平べったくてナメクジかヒルのようだと思っていたら、どうやら儀式用に使った剣らしい。なるほど刃物なら平べったいのは納得がいく。

とはいうものの、実際には蛇をかたどったメソアメリカの石器製ナイフの中には頭部をちゃんと表現したものも多く、この返ってきそうにないブーメランのような抽象化した表現の説明としては不十分な気がする。

そこで、『マヤ・アステカ神話宗教事典』(東洋書林)を繙くと「雷が砂地に落ちると、蛇状にうねった硬いガラス質のものができることがあり……」とあって、どうやらトラロックの放つ稲妻と蛇の形状がむすびついたものらしい。はたしてその “ガラス質のもの” がこれらにどのくらい似ているのか、実際に見てみたいものである。

そうした情報がなければ稲妻とはイメージしにくいこの形象も、実はギリシャ神話のゼウスやインド神話のインドラといった各文明の主要神と同じ持物なのだとわかる。雨と稲妻は災害を起こす畏怖すべき対象であり、農作物の実りをもたらす文明の礎でもある。トラロックもアステカの部族神ウィツィロポチトリと共に、テノチティトランの大神殿に祀られる重要な神。その持物は、ライトニングボルトのギザギザの形象が、蛇のヌルヌルしたニュアンスにとって替わられたものだった。

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こういう四角い物体を頭に載せる人物像というのも、何か建造物と人が合体しているようで、日本を含むユーラシア文化圏ではちょっとありえない造形だ。

右画像などは巨大な煙突が頭頂から突き出ているようで、インダストリアルな雰囲気すら漂う。この画像の上半分だけを見たら、下半分に人物像が続いているなんて想像出来そうにない。造形感覚としてあまりにも唐突な展開なのだ。また、形態の脈略無く両肩に花が咲いていたり、脇腹にドングリのような木の実がくっついているのも、“その1”のコアトリクエの造形感覚と共通している。

キャプションを見ると“チコメコアトル(トウモロコシの女神)像の水差し”とある。水瓶のような水(=生命力)を入れる容器(=子宮)が女神の属性となるのは私達ユーラシア文化圏と何ら変えわりないが、胴部両脇に縦長のスリットが空いており、これでは水が漏れてしまう。他の同じ形の器物を背にした神像ではここに板状の装飾的なものが貫通しており、しかも“儀式用の火鉢(香炉?)”と書かれていたりするので、女神の属性と器物の用途は必ずしも関係ないのかも知れない

豊穣の女神といえば通常私達のイメージでは腹が大きかったり、そうでなければ乳房や腰が大きかったりするものだが、このチコメコアトル像は一見すると男女の区別がつかない。小さく隆起した胸がかろうじて女性を思わせる程度だ。“その1”のコアトリクエのような“たらちね”状態のものや、先史時代の土偶には胸や腹や臀部が大きいものもあるとはいえ、メソアメリカではこうした小さな隆起の胸は古くからポピュラーな女性像表現のようだ。

とはいってもこの左画像は肩幅が広く胸板も厚く腰が小さいので、どうしても男性像に見えてしまう。それに引き換え右下画像のチコメコアトルは、四角い髪型がおかっぱに見えるし、目鼻立ちも小さく少女のようなので小さな胸も自然に思える。これはチコメチアトルに扮して儀礼に参加した少女達の姿なのかも知れない。

また、器物と人体の合体で土器といえば人物埴輪を思い出すが、埴輪の場合その造形の基礎である円筒形の器台のシンプルな造形から派生していて、これを人物像の足に見立てたり椅子や台としてその上に人物が乗った形で表現するなど、様式的統一感があるし、器物と人体の関係も自然なものになっている。

ところがこの左画像のチコメコアトルは、埴輪より写実的な人物表現とシンプルな器物がそのまま合体しているだけで、それ故のシュルレアリスティックな感覚が鮮烈だ。むしろ右下の抽象的な石像のチコメコアトルの方が顔の表現が埴輪とそっくりだったり、様式的統一感もあったりで親しみやすい。

実はこの左画像の像は下半身や頭頂の四角い部分の下辺などを見ると、右上画像のような過剰な装飾が欠けた状態なのがわかる。勿論、右上の像は左に比べると、目が平面的な処理だったりと、様式的に違うし後の器物の形も違うので、全く同じ装飾だったかどうかわからないが、図像学的にはかなり近いものだったのだろう。しかもこれなら胸から下は見えないわけで、身体が女に見えなかろうがそんなことは問題ないわけだ。

そう考えてみると、右上のようにフルセット完備でないところが左のチコメチアトル像が面白い理由なのかもしれない。欠損のない作品の図像を読み解く面白さとは別の、不自然で不完全故のイマジネーションの喚起力がある。手にトウモロコシを持っていれば、なるほど穀物の神だとわかるが、手に何かをつかんでいるようなのに何も持っていない方が、妙に惹き付けられることだってある。

そういう面白さというのは何も近代彫刻的な見方というだけでなく、人為的でない損壊に人智をこえたものの働きを感じる、私達の古い仏像などに対する畏敬の念に通じるものなのかも知れない。

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道釈人物画の仙人を彷佛とさせるような奇っ怪でユーモラスな2体。左画像は亀の甲羅から巨大な鼻ピアスの顔と手を覗かせたマクウィルショチトル( ”5の花” の意。アステカの祭祀歴で1から13の数と20の絵文字からできており、1年は13×20=260日。 ”花” も絵文字のひとつで祭祀の日がこの神の名になっている。 ”その2” の太陽の石の中心から3番目の輪が20種の絵文字に当たる。)という神。右画像のショチピリ(花の王子)は牙や爪がついたままのジャガーの毛皮を纏い、手足に花柄の刺青のような装飾がある。両者ともその異形ぶりが強烈だ。

ところが意外にも両者に共通するのは、名前に ”花” がついていることと ”青春” や ”芸術” を司るということ。彩色の無い現在のオドロオドロしい姿とは、おおよそかけ離れたキャラクターイメージだろう。どうも日本人の感覚だと亀は万年ということで長寿の老人をイメージさせるし、ショチピリ像などは頭部の玉眼が無くなって髑髏のようになっているせいか、即身仏のミイラにしか見えない。

これらが彩色された状態だともうちょっとロマンティックな王子様系!?になるのかも知れないが、現在はその様式と石の質感が重厚さを演出し、花と蝶に飾られたショチピリの玉座も、別物の異様な装飾に見えて来る。こうした経年変化は、図像学的な意味性が後退して造形そのものの訴求力が増し、それによって記号的明快さが深層的イメージへと移行した好例といえるかも知れない。

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アディナータ寺院のシカラの北西面にあるミノタウロスのような像は南西面にも見ることができる。これって、シヴァ神の乗物ナンディン(聖牛)を神格化したものだろうか?頭部が馬や象や水牛なのとは違い、牛っていうのは他ではあまり知らない。

足下に聖牛と女性像があり、太鼓腹が息子のガネーシャを思わせるので、やはりシヴァとゆかりの深い像のようであっても、持物は斧と法螺貝らしきものと水瓶、残りの手は与願印と、シヴァの属性を感じさせる要素は少ない。水瓶はシヴァも持っていたりするが、斧と法螺貝はビシュヌ系の持物だろう。

第一ここはジャイナ教の寺院でもあるし、後期密教の時代、様々な宗派の習合がこうした像を形作らせたのだろうか?

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アディナータ寺院のシカラの北西面にあるミノタウロスのような像は南西面にも見ることができる。これって、シヴァ神の乗物ナンディン(聖牛)を神格化したものだろうか?頭部が馬や象や水牛なのとは違い、牛っていうのは他ではあまり知らない。

足下に聖牛と女性像があり、太鼓腹が息子のガネーシャを思わせるので、やはりシヴァとゆかりの深い像のようであっても、持物は斧と法螺貝らしきものと水瓶、残りの手は与願印と、シヴァの属性を感じさせる要素は少ない。水瓶はシヴァも持っていたりするが、斧と法螺貝はビシュヌ系の持物だろう。

第一ここはジャイナ教の寺院でもあるし、後期密教の時代、様々な宗派の習合がこうした像を形作らせたのだろうか?


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