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シッディ・ラクシュミー。数々の女神が統合されたマハー・デーヴィー(大女神)を形象化した金銅製ネワール彫刻の傑作。
ベースとなるイメージは、神々の十の武器を十臂に具えた最強の女神ドゥルガー。そこに、彼女の怒りから発出する血に飢えた女神カーリーの“持物”である魔神の首と、生首を数珠繋ぎにした首飾り等が付け足され、密教色が濃厚になっている。
その他の手にも、ドゥルガー本来の持物ではない密教法具が見られ、さらに、頭部は背面も入れて、計五面。カーリーは通常、横たわる伴侶、シヴァを踏みつけているが、ここでは、横たわる人体の上に跪くバイラヴァ(シヴァの畏怖相)に支えられている。
この三段構造の、上ほど身体が大きくなる構成は女神のパワーの強大さを見事に表現している。
ネパールでよく見られる大女神の形象は、大抵がシンメトリーで単調な構成で十本もしくはそれ以上の腕が表されることが多い(日本でも多面多臂像の代表、千手観音などは、シンメトリー過ぎて動感に欠け、十一面観音に比べても、個体数が多いわりには傑作といわれる作品が少ない)。それに比べ、この像は向かって左側の腕を変化に富んだ動的な構成にし、右側をコンパクトに静的にまとめて、豊かな表情を演出している。
完全に正面観(正面から見ることだけを意識してつくられている)なので、彫刻的おもしろさはないが、4年前に、この決して大きくない(40cm)女神像の神秘的かつ艶かしい像に魅了されて以来、再会できることを楽しみにしていた。
それにしても3つの目の表情がすごい。
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