おるたな美術館

旅先で出会った東洋美術、西洋美術

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実は、オリッサの彫刻で一番見たいと思っていたのが州都ブバネーシュワルにある、このヴァイタール・デウル寺院(8世紀)のドゥルガーマヒシャースラマルディニー(水牛の魔神を殺す女神)。

ハリウッド映画・アニメ・ゲームでよく見られる肌も露なグラマー美女かつ武装した戦士というキャラをより追求した、攻撃的女性イメージの究極形態ともいえる。例えば、ギリシャ神話の武装した女神のアテナのような抑制された表現なんかと比べると、そのセクシー度、バイオレンス度、グロテスク度の差がよくわかる。これがさらに発展すると、カーリー、チャームンダーといった血と殺戮を好むスプラッター、ホラー系“テリブルマザー”となる。

この像、インド美術の本ではけっこう紹介されていたし、両脇の精巧な浮彫共々、なかなかパワフルでカッコいいなと期待していた。

ところが、ドゥルガーの刻まれた北壁面は、寺院を囲む濠の外側が隣の建造物の壁になっており、濠内に降りないと正面から見ることが出来ない。そこで、仕方なく私は雨の中、膝まで濠の水に浸かってドゥルガー様に拝謁することとなった。本の図版で見たときは、濠には水が全くなかったので、乾期ならこんな苦労はいらないのだろう。

それで、いざ近づいて見ると、思っていたより顔が摩滅していた。さらに供養の色粉によって、日本で見た写真とはかなり印象が違い、なんかヘタクソな漫画みたい。両脇のミトゥナの顔に至っては人為的な損傷に見える。右のカップルなんか、実に充実した人体造形なだけに残念。

とはいえ、ミトゥナの上の保存状態のいいシンメトリーの獅子の装飾は予想通りカッコよかった。

ドゥルガーは神々に与えられた武器を持つ十臂で表されることが多い中、この像は八臂。よく見ると、ヴィシュヌの持物でもある法螺貝を持つ手とチャクラ(光輪)を持つ手が無い。ヴィシュヌ派ではなく、シヴァ・シャクティ系の寺院なだけにそうなっているのだろうか?もっとも、ドゥルガーの活躍が描かれた「デーヴィーマハートミヤ」では、法螺貝はヴァルナから、チャクラはクリシュナ(ヴィシュヌの化身とされる)から授けられたとなっているらしい。

後世のオリッサの寺院壁面にくらべると、神像彫刻と装飾浮彫の区別がはっきりしているため、全体として生動感に欠ける表現のようでいながら、中央のドゥルガーの放射状の造形を両脇の浮彫に反響させたような、充実した壁面となっている。

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