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シンメトリー(左右対称)の構図、暗いモノクロームの色調、複雑なディテール、ぬめっとした光沢感等、パーラ朝とそれに続くセーナ朝の後期密教美術とH.R.ギーガーの絵画はよく似ている。
チベットの仏教美術を見てもわかる通り、血、骨、生首、髑髏、裸体、性器、性交といったモチーフは後期密教の得意分野だが、そういったモチーフは、パーラ・セーナ朝のものでは少ない(残っていないだけかもしれないが…)ようだ。
ましてや上の画像のパールヴァティー(12世紀)は、同じシヴァの神妃であっても“その4”のドゥルガーとは逆の貞淑、温和なキャラで、エロ・グロ・ホラー度はより低いから、そこら辺はギーガー作品とは違うかも。
とはいえ、造形的にはやはり共通点が多い。ギーガー作品の“バイオメカノイド”といわれる肉体と機械の合成は、造形的に見れば、柔らかくぬめっとした形態・テクスチュアと、硬質で複雑な形態・テクスチュアのコントラストであり、これはこのパールヴァティーの肉身部とその表面を荘厳する装身具に対応する。また、入り組んだ管状、襞状の形態が空間恐怖症的に背景を埋め尽くすのも良く似ている。
ギーガー作品が、西洋神秘思想の影響を指摘されるように、密教のような神秘主義的な精神世界のイメージと、こうした造形的特徴は深く関係しているようだ。
女神が重視される後期密教にならって、通常シヴァの隣に寄り添う姿の多いパールヴァティーも、ここでは堂々と中央で脇侍を従えている(右側の脇侍なんかけっこうチャーミングだ)。
そればかりか頭光の上部には、シヴァを中心として左にブラフマー、右にヴィシュヌの坐像が彫られており、さらに、その両脇にシヴァの息子達のガネーシャとスカンダが坐している。このことは、トリムルティー(三神一体)と、シヴァファミリーを統合したパンテオンの中心を占める大女神と見ることができるのかもしれない。
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