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“スライとストーン一家”のCDが、やっとまともなリマスターでリイシューされたからといって、このアルバムを喜々として買うことができるだろうか。何せ、見なくてもやり過ごせるかも知れない“白々とした残酷な真実”を、まざまざと見せつけられるような内容である。正直、買うのは躊躇してしまった。
だったら買わなきゃいいようなものだが、恐いもの見たさというか、学生の頃、中古レコードによって、その“究極のリアル”を体験してしまった以上、避けて通れるようなものでもない。
そこで、リマスターによる高音質が期待できそうな、比較的ポジティヴで洗練された『フレッシュ』を先に買って聞き、心の準備ができてから『暴動』を買うという、随分まどろっこしいプロセスを踏むことにした(この場合『スタンド』を先に買ってからという、時系列に沿った順序は衝撃が大きく、逆効果なので避けなければならない)。……まあ、それほど自分にとって特別なアルバムだと言える。
音質は、リマスターとはいえ、以前からの音の歪みはマスターテープによるものだろうから変わっていない。反面、音の分離は良くなったので、混沌としていたミックスが整理され、その独創性(というか、時々私には異星人の音楽のように聞こえる)と完璧さが増したようだ。リズムギターやキーボードの切れ味も鋭くなったし、リズムボックスとベースのサウンドは、聞く者の心理を深く抉る。そして、何と言ってもスライのヴォーカルが、より生々しくなった。
おかげで、軽い曲調の「ファミリー・アフェアー」もヴォーカルがエグくなって、鳥肌立ちっぱなしである。
残念なのは、CDになってから、タイトルトラックの存在感が無くなってしまったこと。アナログでは針が上がる音によって、A面最後の「暴動」という無音トラックの存在を確かに感じ取ることができた。ところがCDでは、5曲目のあとに4秒間(以前のCDでは8秒)の空白があるのみ。ほとんどその存在に気付くことなく次の曲に移ってしまう。
いっそのこと30秒ぐらい空白を設けてもいいのでは?
かつて、このアルバムには無音のメッセージが刻み込まれていた。リスナーはA面終了後の寂寞に、様々な思いを巡らしていたはず。今聞くことができるのは“有”のみで、最早“無”から何かを聞きとることは叶わない。
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