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ヒガンバナは、普段はその存在すら気付かないのに、お彼岸の時期にだけ突然花を咲かせて自己主張したかと思うと、彼岸の終わりと共に消え失せてしまう不思議な花だ。
実際は、春夏と地中に潜ったままで、開花する前に急に地面から茎だけを伸ばして花をつけ,花が枯れた秋冬には葉だけが生えるらしい。葉だけだと単なる雑草と区別がつかないので、私達は花が咲いているときにしかヒガンバナを認識していないということのようだ。
お彼岸はあの世とこの世が交錯する期間でもあるし、また、こうした実体感の薄い生態から曼珠沙華(天上に咲く花)、地獄花などという、まるで異界の存在のような異名があるのだろう。
ところで近年、路肩の排水溝の開口部から、いろんな植物がにょっきり葉や花びらを出している光景をよく見かける。排水溝に土砂や有機物が溜まり、そこに種子が落ちて芽が出るわけだが、通常、種子を付けないはずのヒガンバナが、排水溝から顔をのぞかせているのには驚いた。
ヒガンバナは球根によって増えるので、日本で見られる種は殆ど自生でなく人為的に移植されたものらしい。ということは、誰かが排水溝の蓋を開け、底にヒガンバナの球根を植え付けてから、またそのコンクリートの蓋でふさいだということになる。……って、いったい何の目的で…?
ごくまれに種子を付けるとはいえ、それが排水溝に落ちる可能性はかなり低いだろうし…。
いずれにせよ、今年の9月は残暑とすら呼べないような異常高温の為か、お彼岸を過ぎてから花が咲いたので最早この花は“彼岸花”ではない。かといって、このように地中から顔をのぞかせているわけだから“曼珠沙華”というのもふさわしくない。
というわけで、この花は“地獄花”と呼ぶのが妥当だろう。もし、これが株を増やして来年も花を付けるようなら、“ド根性……”の称号を与えてもいいかも。
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