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チャウ・サイ・テボーダとは道を挟んで向かいに位置するトマノンは,同じ時期(12世紀初頭)の寺院で、やはり、新旧両タイプのデヴァターが併存する。
こちらは修復がいきとどいており、画像のように壁面を埋め尽くす装飾が豪華で美しく、デヴァターたちも、チャウ・サイ・テボーダのそれらと比較すると随分様子が違う。ここには旧型から新型への移行を感じさせるような変化が見られない。
ここのトラッドなコスチュームのデヴァターは、チャウ・サイ・テボーダのように古めかしい感じがしない。ニューモードのデヴァターにふさわしい作風が出来上がってから、その感覚で旧式のデヴァターも彫刻しているように思える。従ってトマノンの場合、新旧両デヴァターはプロポーションも、雰囲気も変わりがない。
これは彫刻の表現様式だけの問題ではなく、実際の当時の伝統的装束に、ニューモードのアレンジが施されたからかもしれない。左画像右のデヴァターを見ると、アクセサリーが大振りになっているのがわかるし、サンポット(スカート)上部の折り返しがより大きく装飾的になり、プリーツも柔らかく、生地が薄く軽やかになっているように見える。
トマノンでは、チャウ・サイ・テボーダのように新旧両タイプの差異を明確にせず、様式的な統一感がある。
細かいところに目を配ると、例えば、右画像と左画像のそれぞれ右側の旧型デヴァターのサンポットはそれぞれ中央にバプーオン様式(11世紀)の“魚の尾びれ”型の折り返しを持っており、その内、右画像はサンポットの端を折り返しているように見えるが、左画像のそれは別材をくっ付けているように見える。これは彫工による解釈の違いか、それともサンポット自体が違う構造なのか。
いずれにしても、宗教美術らしい厳格な装束の表現から多様化へと向かう萌芽を感じさせもする。
あと、アンコールワットで見られるようになる、それぞれの像に特定のモデルがいたような肖像性も既に感じられるのは、様式的統一感から来るものかもしれない。そうでなければデヴァターの顔つきが違うからって、それがモデルの違いなのか作風の違いなのか区別がつかないからだ。
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