おるたな美術館

旅先で出会った東洋美術、西洋美術

インド編

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インド博物館その1

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インド博物館(コルカタ)にあるカジュラーホ出土のナーイカー(神的エネルギーのシャクティを象徴する世俗的描写の女性像)3体の内の1体。これほど濃厚な造形のナーイカーは、現在カジュラーホの寺院では見られない。

特にこの1体は、身体のひねりを解剖学的に解釈せず、別の角度から見た右半身と左半身を一体化するというキュビスム的展開がユニーク。どっしりとした身体表現も、ピカソの新古典主義の作風を彷佛とさせるし、カジュラーホで良く見かける、頭が大きく手足のすらりと伸びた体型とはひと味違うモニュメンタルな造形だ。上部に樹木が見られることから樹木神(ヤクシー)的性格も感じられる。

それにしても、ピカソはこの作品を見ていたとしたらどう思ったのだろう。

左手の修復がへたくそで、ゴツい男の腕みたいになってるのが残念。上腕部だけ見てると、リストバンドをしたレスラーといったところ……興ざめ。

左脇後に爪痕が数ヶ所あり(画像を拡大するとよく見える)、“爪痕”はインドの性愛文化では重要なアイテムらしく、『カーマ・スートラ』でも爪痕についての章がわざわざ設けられている。女は、この爪痕をつけた男に恋文を書いてるところらしい。

過ぎ去った情事を思うよすがなら“キスマーク”でも良さそうだが、石像の場合、着色したとしても表現が難しそう。ヘタすると虫さされの跡だからな…。

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ナタラージャ(舞踏王=シヴァ)といえば、ニューデリー美術館等にある中世南インドのブロンズ像があまりに有名で、インド美術の看板的なイメージとなっている。炎の円輪の中、しなやかな体躯で4臂を持ち、片足立で矮人を踏みつけながら踊る洗練された造形。下半身は着衣で、リンガ(男根)は表されない。また、たなびく髪がガンジス川を表しているなど、宇宙論的性格も強い。

ヴァイタール・デウル寺院東正面のナタラージャ(写真右上)は同じく円形に囲まれた構図ながら、洗練とは程遠いコミカルな表現で、リンガを屹立させて踊る様はなかなか笑える。

どういう事情か知らないが、同じ東面のスリヤ像(写真右下)と比べても、かなり彫りが荒いので未完成なのだろう。表面がゴツゴツしているし、宝冠の正面も全く細工されていない。頭上のキールティムカ(獅子面装飾)の精巧さとは対照的。

腕が十二臂もあり、それで足の為のスペースが無くなったのか、足がえらく短い。スリムで手足の長いブロンズのそれとは随分印象が違う。

そればかりでなく足下の矮人の代わりにシヴァの乗物ナンディン(牡牛)が股下からリンガを見上げ、さらには傍らの神妃(パールヴァティー?)の頬を愛撫しながら踊っているという、円形画面を埋め尽くす狂躁的でにぎやかなものだ。

実際、ナタラージャの図像は6世紀ぐらいから作られ始め、中世南インドのおしゃれなブロンズ製とは違い、石造のものは多臂で狂躁的イメージが強いものが多い。

ブロンズのナタラージャの典拠とされる、シヴァが異教の聖者の差し向けた獰猛な寅の革をはいで腰に巻き付け、続く大蛇を首飾りにし、最後に差し向けた凶悪な矮人ムヤラカを踏みつけて踊るという、もっとも有名な神話とは違うテキストが数多くあったことを、石造のナタラージャは示しているようだ。

左の写真は隣のシシレーシュヴァラ寺院のものだったと思う(あまり自身が無いけど)。似た構図でも、腕が八臂とやや少なく、三叉戟を持っていない。細部まで仕上げられ、しなやかな動きをしている。

共通するのは両者ともカパーラ(髑髏杯)を手にしていること。これらのシヴァはバイラヴァのような忿怒相で、ナタラージャの中でもより密教的な典拠を伺わせる。

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右半身男、左半身女のアルダナーリーシュヴァラ(両性シヴァ)があるヴァイタール・デウル寺院西面。東が正面になるから、こっちは裏面になる。小規模な寺院であるにも拘らず、5つの彫像のある龕がそれぞれ間隔を空けて配置されているせいか、この写真で見るとけっこう大規模に見える。

ここでミトゥナ(男女交歓像)は写真最上層でフリーズ状にぎっしりと並べられているし、その下の層には獅子と象の動物装飾を配置、それらが水平垂直の区画に整然と分けられ、厳格なイメージを演出している。

下の写真中央が、5体の内真ん中にあるアルダナーリーシュヴァラ。右半身(向かって左)がリンガ(男根)を屹立させたシヴァ。左半身がその神妃パールヴァティー。彼女は上の写真左から2番目と、1番右端のナーイカーのように鏡を手にするという世俗的表現になっているのが面白い。

このように正中線を境に男女を描き分けるとき、コスチュームを男装と女装に分け、肉親部を女性の乳房と腰の張りで区別するのが手っ取り早い。これで下半身を着衣にすれば問題なく造形出来る。

しかしシヴァは、インダス文明のリンガを屹立させた土偶と同じく、性器信仰の伝統を受け継ぐ神でもある。

で、右下半身は裸になる訳だが、困るのは、身体の中心にあるリンガを半分に切って表現するわけには行かないことだ。そこで、この像ではパールヴァティーの腰布の端から左側へニョキッとリンガ全体が、片側の睾丸とともに顔を出しているような方法をとった(リンガが少し欠けているのでわかりにくいが)。

下の両端の写真(上の写真では左から1番目と4番目にあたる)は、樹木が彫られていることから、古代インドの仏教遺跡でも見られる、民間信仰の樹木神ヤクシーの伝統を受け継ぐ所謂樹下美人。いずれも堂々とした体格の重厚な身体表現。

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ヴァイタール・デウル寺院の訪問は雨に祟られたので、青暗い写真ばかり。元々赤褐色の寺院は、かなりくすんだ色調になってしまった。

そんな中でもこの2枚は、“その1”と同じく最も暗い北面。雨天の色調と逆光のおかげで独特の雰囲気になっていて、却っておもしろくなった。

“その1”のライオンが口から吐いていた“連珠”はこの寺院の特徴的なモチーフで、これら二枚の写真にも随所に見られる。電飾看板の電球みたいでもあるな。こうした球形の連なりは、植物文様よりシンプルなようでいて浮彫りするのはけっこう大変そうだ。

左の写真。“その1”のドゥルガーのある北壁面の上部で、その中央ではミトゥナがラテンダンサーかスーパーヒーローみたいにポーズを決める。壁面装飾の造形感覚の緻密な重厚さとは裏腹に、人物は陽気でコミカルなのがオリッサ風。

そのミトゥナの下の小さな像と同じポーズをとるのが、右写真のナーイカー。こっちは北壁面東端にある。

典拠を全く知らないが、例によって世俗的な恋愛譚に宗教的寓意が織り込まれているのだろう。縦長の龕にナーイカーと開かれた窓の扉らしき物(違うかも)、そしてその上の鳥が、かなり窮屈に構成されているにも拘らず豊かな情感を感じさせる。

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実は、オリッサの彫刻で一番見たいと思っていたのが州都ブバネーシュワルにある、このヴァイタール・デウル寺院(8世紀)のドゥルガーマヒシャースラマルディニー(水牛の魔神を殺す女神)。

ハリウッド映画・アニメ・ゲームでよく見られる肌も露なグラマー美女かつ武装した戦士というキャラをより追求した、攻撃的女性イメージの究極形態ともいえる。例えば、ギリシャ神話の武装した女神のアテナのような抑制された表現なんかと比べると、そのセクシー度、バイオレンス度、グロテスク度の差がよくわかる。これがさらに発展すると、カーリー、チャームンダーといった血と殺戮を好むスプラッター、ホラー系“テリブルマザー”となる。

この像、インド美術の本ではけっこう紹介されていたし、両脇の精巧な浮彫共々、なかなかパワフルでカッコいいなと期待していた。

ところが、ドゥルガーの刻まれた北壁面は、寺院を囲む濠の外側が隣の建造物の壁になっており、濠内に降りないと正面から見ることが出来ない。そこで、仕方なく私は雨の中、膝まで濠の水に浸かってドゥルガー様に拝謁することとなった。本の図版で見たときは、濠には水が全くなかったので、乾期ならこんな苦労はいらないのだろう。

それで、いざ近づいて見ると、思っていたより顔が摩滅していた。さらに供養の色粉によって、日本で見た写真とはかなり印象が違い、なんかヘタクソな漫画みたい。両脇のミトゥナの顔に至っては人為的な損傷に見える。右のカップルなんか、実に充実した人体造形なだけに残念。

とはいえ、ミトゥナの上の保存状態のいいシンメトリーの獅子の装飾は予想通りカッコよかった。

ドゥルガーは神々に与えられた武器を持つ十臂で表されることが多い中、この像は八臂。よく見ると、ヴィシュヌの持物でもある法螺貝を持つ手とチャクラ(光輪)を持つ手が無い。ヴィシュヌ派ではなく、シヴァ・シャクティ系の寺院なだけにそうなっているのだろうか?もっとも、ドゥルガーの活躍が描かれた「デーヴィーマハートミヤ」では、法螺貝はヴァルナから、チャクラはクリシュナ(ヴィシュヌの化身とされる)から授けられたとなっているらしい。

後世のオリッサの寺院壁面にくらべると、神像彫刻と装飾浮彫の区別がはっきりしているため、全体として生動感に欠ける表現のようでいながら、中央のドゥルガーの放射状の造形を両脇の浮彫に反響させたような、充実した壁面となっている。


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