おるたな美術館

旅先で出会った東洋美術、西洋美術

カンボジア編

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第一回廊外壁のデヴァターは、アンコール・ワット中最もマイナーな部類に入るものといえそうだ。ここでは回廊内壁の壮大なレリーフがあまりにも有名な為、多くの人はその外側にあるデヴァターの存在など気付きもしないだろう。

ここの女神像達は様式的統一感が全く無く、気ままに様々なスタイルで造像されているに過ぎない。宗教美術としての厳格な様式から自由なこれらの像はしかし、洗練されていないが故にとてもパーソナルな嗜好が感じられ、まるで八百年以上も前の人々の生々しい息づかいや欲望を覗き見るようなちょっとアブナい愉しさがある。

とにかく、中央入口と一つ北側の入口に挟まれた外壁という狭いエリアの同じ3体組の像でもこの違いである。基本的に同じコスチューム、同じポーズ、頭部が大きめで肩幅が狭いというプロポーションなどの共通点以外は、彫工が自分の気に入った表現スタイルで仕上げた結果なのだろう。作者の嗜好や個性を押し殺した宗教美術のイメージとは大きく異なる。


上の3体は、微妙に傾けた頭部や身体がしなやかなイメージを創り出し、アンコール・ワットのメジャーなエリアのデヴァター達よりも艶かしい写実的魅力がある。宗教美術的形式性から自由であるが故の自然な動勢が印象的だ。

奇抜な髷を結った頭飾の柔軟かつシャープな描写はかなり見事で、お決まりの尖塔頭飾が無い分、とてもモダンでセクシーなイメージになっている。


下の3体はそれとは全く逆。形式的で正面性が強く、硬直しておりながら、それが冷たいイメージにつながらず、むしろコミカルな親しみやすさを感じさせる。

中央のデヴァターの頭飾を掴む左手は明らかに上腕部が短すぎてプロポーションがおかしいが、それが何ともいえない愛嬌がある。カッコ良く決めているのが逆に笑えるみたいな感じで、顔も全然美人じゃないところも上の3体とは対照的だ

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十時回廊のある沐浴場へ続く三つの出入り口のそれぞれ左側に位置するデヴァター達。これまで見て来たこのエリアの女神像にくらべると、ちょっと洗練度や緻密さにかける。

また、いずれも片手に蕾を持つポーズは共通しているが、プロポーションや肉付け、コスチュームがまちまちで、一定の図像的約束事を守りながらも、一体一体趣向を凝らしたヴァリエーションを展開しているのがわかる。

彫りの深さも、浅い彫りの左のものから、丸彫りに近いボリュームで背中側の半分を壁面にめり込ませたような中央のものまで変化に富んでおり,様式的統一感は無い。

龕に収まった単独像という一定のルール内での彫工の創意工夫を、見る側もつくる側も楽しんだのだろう。個人の趣向というものが前面に出てくるのは国家権力による大規模な宗教美術としてはとても珍しい気がする。


左は比較的オーソドックスで均整がとれているが,全体的に平板でメリハリが無い。宝冠尖塔の左に宙に浮いた状態で描かれているロゼッタ(円形花模様)とペイズリーをくっ付けたような模様は一体何を表しているのだろう。右手から首の後を通って頭部右へ伸びる植物の茎の延長線上にあるので、これらがつながっていたのが破損しただけなのかも知れない。

中央は肩幅も狭くシャープでスリムな身体で、その分頭部が大きい。立体的な胸は、皆触りたくなるのだろう。かなり黒光りしている。

右は、右肩などかなり均整が崩れている。他の2体に比べても野暮ったくなっているが、コスチュームは宝冠の尖塔が5本、その付け根のロゼッタ文が2つずつになっている他、アンコール・ワットで最も格の高い中央祠堂のデヴァター達と同じタスキ状(といっても胸でX状に交差している)の装飾帯などむしろゴージャスで、他と差をつけている。

しかもこのタスキ状の帯、中央祠堂のそれは身体にぴったり密着したように平面的に描出されているのに対し、こちらは脇でたわんだ状態まで立体的に彫られたリアルな表現で、妙に凝っているのが微笑ましい。

均整の崩れた稚拙なものが必ずしも手抜きではないというのが、アンコール・ワットのデヴァターのおもしろいところで、こういうのがあるから何百体あろうと見ていて飽きない。

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このエリアの女神像は全て開口部(テラス、中庭、十時回廊、第一回廊などへの出入口)の両脇に彫られ,西塔門中央入口の像 <http://blogs.yahoo.co.jp/sugafuto/29069658.html> のような守門神的な性格を全く感じさせないものの、龕の中に描かれているところなどにその名残をとどめる。

中央入口への通路を挟んで “その2” < http://blogs.yahoo.co.jp/sugafuto/32208240.html> の像と対になるのがこの “見返り不美人” とでも呼びたくなるようなデヴァターだ。基本的には “その2” を左右反転させたような像に異常に突き出た口と左右不揃いの乳房というデフォルメが施され、強烈な個性を演出している。

というか,格調高く石に彫られたギャグマンガのキャラクターみたいな逆説的表現といった方が近いかも知れない。

つまりこれはアンコール・ワット周壁西塔門の中央から離れた場所にある均整を欠いた奇妙な像のように、単に技術レベルが低いという理由によるものではなく、明らかに意図的なものだ。“その1” <http://blogs.yahoo.co.jp/sugafuto/32096483.html> 、“その2” の均整の整った美形の像という前提をふまえた上でのカリカチュアといってもいい。

それとも、こういった風貌の宮女が実在し、それを真面目に写し取っただけなのだろうか。いずれにせよその諧謔味は見る人の目を楽しませたことだろう。美女ばかりでは誰だって飽きが来る。人を喜ばせるにはこういう三枚目も必要だ。こういうのを見ると厳粛な祈りの場というより遊興空間的な遊び心を感じさせる。

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“その1” <http://blogs.yahoo.co.jp/sugafuto/32096483.html> の向かいに位置するのがこのデヴァター。“その1” が正統派コスチューム&ポーズながらもフェロモン度が高かったのに対し,こっちはスカート(サンポット)無しのナマ脚という変則技で対抗である。両者は眼を伏せているところなんかも,薄暗い空間で官能性を追求しているということがよくわかる。

これらのデヴァターは、単独の立像でコスチュームやポーズに派手さが無くおとなしいイメージでありながら、彫工のねらいがより強いセックスアピールの演出であることに気付かされる。

アンコール・ワットのデヴァターは通常折り畳んだ形状の帯と細長い帯を、腰から左右に一本ずつ垂らしているのだが、ここでは左に三本、右に一本と変則的で、それらが脚と相似形のカーブを成しナマ脚を引立てる工夫がなされている。

顔も正面向きでなく足の向きとは逆の左斜横を向いており、ちょっと見返り美人的なさりげない色気を演出するひねりの入ったポーズだ。変則的表現ながらバランスのとれたモダンな造形。

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アンコール・ワット周壁の西塔門から参道を東に進むと壮大なレリーフで有名な第一回廊のある西正面入口に辿り着く。この内壁にも各所にデヴァターが彫刻され、中央入口から一つ南の入口の内壁のものは特に優れている。

この一帯は薄暗く、デヴァターの姿が判然としないのを三脚を使い絞りを絞って撮影すると、けっこう克明に写っているので、帰国してからその魅力を再発見したりする。

画像のものはポーズ、コスチューム、持物などごくオーソドックスなものでありながら、参拝者が必ず通る場所の、しかも至近距離で見えるところにあるためか完成度が高い。場所は南に伸びる回廊の入口にあたるもので、ここを通り抜けると「マハーバーラタ」のレリーフが展開する。

肩から上腕にかけての線が力強くて堂々とした安定感があるだけでなく、身体各部に僅かずつひねりや傾きがあり硬直した印象を受けない。このエリアの大半を占めるつぼみを手にしたポーズの中でもとりわけエロティックで、ちょっと近寄ってみるとむせ返るような官能性がある。

そのせいか、つぼみのあたりから乳房まで参拝者によく触られたのだろう。黒ずんでいて、まるで黒いビスチェでも着けているかのように見える。普通黒ずんでいたとしても乳房の部分ぐらいだから、このデヴァターの “愛され方” は特別かも知れない。


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