おるたな美術館

旅先で出会った東洋美術、西洋美術

カンボジア編

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「その3」は北側の階段、この像は中央の階段の近くと、似たような場所の単独像ではあっても両者は全く違った個性を見せる。

やたらと尖った鼻、三重の瞼、深く刻み込まれた口の端、T字形のアンコールワット様式を逸脱したY字形を形作る眉と鼻筋など、個性的な顔の独特な造形感覚ながら、さすがに十字回廊だけあって均整を崩すことのない洗練された美しさ。

さほど写実的ではない両手の指が見せる造形は、にぎやかな髪型の造形と見事に呼応している。小さめにまとめた乳房や腰を含め、プロポーションもモダンな印象に寄与して古くささを感じない。

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十字回廊と第二回廊を結ぶ階段の上部から連子格子越しに見ることの出来る、払子を持った門衛としてのデヴァターは、ちょっと原田知世似である。

同じ門衛、守門神的女神像でも“西塔門その1” <http://blogs.yahoo.co.jp/sugafuto/29069658.html>のそれと比べると随分洗練されたものだと思う。凛々しさと美しさを兼ね備えている。

これだけ高浮彫なのは、左画像のように、斜めから見ることを想定してのことだろう。事実右画像のように正面から見ると、左肩が張り出しすぎていてぎこちなくなってしまう。

左手に持つ花の花びらが一枚無いのはどういう意味なのだろう。人差し指を使わずに、親指と中指で茎を持っていたりするところなども実に芸が細かい。

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何か硬いもので殴ったような鼻と口の破損部(内戦時代のもの?)。顔面の10ヶ所以上に及ぶ意図的な引っ掻き傷(こっちはかなり新しい)。これらの傷には単なるいたずらやイデオロギーでは説明出来ない、もっと感情的な歪んだ欲望を感じてしまう。

このことはこのデヴァターの持つ、あまりにも人間的な肉感性への反感のように思える。実際こういった種類の傷というのは他では見かけなかったし、またある意味アンコール・ワットのデヴァターに残る弾痕よりも強いショックを受けもした。

重く硬く冷たい石造の宗教施設で、この像のウェットな表現はある種の違和感を感じさせ、人によっては苛立ちすら覚えるのだろう。それくらいに生身の体温がある。

エロティックな像なら他にもこの寺院にたくさんある。問題はこの場にしては場違いに情緒的な佇まいだ。ここらへんがサディスティックな衝動を呼び起こす原因かも知れない。

そういえば、この極端に頭が大きく手が小さい独特のプロポーションは浮世絵の大首絵を連想させる。なるほど、この像の情感の豊かさは写実性のみならず、大首絵的プロポーションに起因していたのか。

その独創性と表現の素晴らしさ故に惨い傷跡がショックで、ついいろいろと思いを巡らせてしまった。

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第一回廊と第二回廊を繋ぐ沐浴場のある空間の十字回廊は、アンコール・ワットを訪れる人は必ず通る場所で、此処で身体を清めるために暫しの時間を過ごすわけで、従ってこのエリアの浮彫にはそれなりの鑑賞に耐えるものが必用だったろう。

人を飽きさせない質の高さと、それだけでなく中央祠堂程の厳粛さは要求されないことから、形式性に縛られない自由度もあった。そこら辺が此処のデヴァター達を魅力的にしている。

おとなしいポーズながら、緻密な仕上げと豊かなボリュームが密度の高い造形を生み出しているのが特徴。

画像の2組もよく紹介されるもの。第一回廊外壁と違ってじっくり鑑賞されるだけでなく、胸の辺りが黒光りする程さわられていたりするのも、このエリアならでは。

左画像は、間接光が豊かな陰影をつくりだし、アンコール・ワット様式をベースにしながらも、自然な立体感とモデルの存在を思わせる個性表現が、生々しい程の実在感を示している。

右は、間接光が正面からあたって陰影がなく、かつて貼られていたであろう金箔の下地の赤い顔料が中央部だけ残る荒れた表面は、近代絵画的なタッチと固有色にこだわらない色彩表現を感じさせる。

当初は金色をしていたと考えると随分変わり果て姿ではあっても、緻密な陰影による古典的な品格と、激しい筆触による色彩表現という対照的な2組の現在の姿が、今は両者の魅力をより際立たせているようにも思える。

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結い上げた髪に付ける飾りを摘むポーズは、このエリアではおなじみのもの。その中でこの2体もまた、かなり個性的な作風が印象的だ。

この2体、挙げた右腕の肩の部分をよく見ると、臂釧と瓔珞(胸飾り)の重なり方が違う。二の腕の瓔珞が上に重なる右画像(中央塔門の西側)はわかるが、左画像(中央塔門の東側)のように臂釧が上に重なるというのは臂釧がかなりユル目なわけで、手を下げたらずり落ちてしまうのではないか? これって相当無理があるような気がするのだが…。

その他左の作者は、両手共、掌を見せた状態でしか表現出来ないようで。身体もぎこちなく、右の作者に比べて解釈や表現力に問題がある。

とはいっても、右画像のグローブを填めたようなゴツイ手と大きな口は、かなり品位に欠ける。ちっともカワイくないし、セクシーでもないというのも問題ではある。

さらに問題なのは、右手で摘まれた頭飾だけが壁から浮き上がる立体的な処理がなされていること。こんなどうでもいいところに工夫を凝らすなんて、笑いを取ろうとしているとしか思えない。

普通なら落書きで済ましてしまうようなくだらないギャグが、しっかりと石彫というかたちで残ってしまっているところが、他では見られないアンコー・ルワットならではの醍醐味でもある。


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