2012日本映画

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監督 原作 脚本 赤堀雅秋
出演 堺雅人(中村健一) 山田孝之(木島宏) 綾野剛(小林英明) 谷村美月(関由美子)
      高橋努(久保浩平) 山田キヌヲ(川村幸子) 坂井真紀(中村久子)安藤サクラ(ミカ)
      田口トモロヲ(星信夫) 新井浩文(青木順一) でんでん(佐藤進)
       木南晴夏(小林昭子) 峯村リエ(スナックのママ) 黒田大輔(谷稔)
       小林勝也(スナックの老人) 三谷昇(詩集を売る老人)
[2012年11月17日公開]
ジャンル ドラマ
製作年 2012年
配給 ファントム・フィルム
上映時間 119分
映倫区分 PG12

人間の機微を丹念に描きながら、市井の人々を描くその世界観で熱狂的なファンを持つことで知られる劇団「THE SHAMPOO HAT」。本作は、これまでの全作品の作・演出を手掛けてきた赤堀雅秋による同名戯曲を、自らの手で改稿、演出も手掛けて映画化したもの。主人公の中村に堺雅人、ひき逃げ犯・木島役に山田孝之を配し、演技派二人の息詰まる演技合戦を堪能できる一作となった。堺はボサボサの髪にぶ厚いレンズの眼鏡をかけ、冴えない中年男に扮し新たな一面を見せれば、一方の山田は孤独と狂気を併せ持ち、粗暴さを露わにするアブない若者を好演している。エンディングで流れ、深い余韻を残すUAが唄う主題歌も印象的だ。

東京のはずれで小さな鉄工所を営む中村健一(堺雅人)は、5年前、トラック運転手に最愛の妻久子(坂井真紀)をひき逃げされた。死んだ妻の思い出から抜け出せず、留守番電話に遺された妻の声を延々再生しながら糖尿病気味にも関わらず甘いプリンを食べ続けている。喪失感を抱え絶望的な毎日を過ごす中村に、従業員の久保(高橋努)や佐藤(でんでん)たちは、腫れ物に触るように接するしかない。久子の兄で中学校教員の青木(新井浩文)は、中村を早く立ち直らせようと、同僚の川村(山田キヌヲ)と見合いをさせるが、中村は「僕なんかあなたにふさわしくない」と新しい人生に向かうことを拒絶する。一方、久子をひき逃げした犯人、木島宏(山田孝之)は、2年間の服役後、ひき逃げトラックに同乗していた腐れ縁の友人小林(綾野剛)の家に転がり込んでいる。そんな木島のもとに、1ヶ月前から「お前を殺して俺も死ぬ。決行まで後○日」という無記名の脅迫状が連日執拗に送られてきていた。(gooより)
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ドキュメンタリー・タッチに長回しのカメラ、俳優達のリアルな演技に本物を感じると共に、独特の世界観にどこか浮世離れした虚構性も感じられる不思議な味わいの作品であった。中村健一(堺雅人)は妻久子(坂井真紀)をひき逃げされて以来、復讐の為に犯人である木島宏(山田孝之)を執拗にストーカーしている。妻の命日に木島を殺して、自分も死ぬことを最終目的としているようだ。

健一は他人とのコミュニケーションがとれない。久子の残した留守電のメーセージ延々と繰り返し、妻の下着を持ち歩いては匂いを嗅いでいる。他人とは心の交流は持てずに、自分の世界に閉じ籠ってしまっている。久子の兄で学校の教師・青木(新井浩文)は、見るに見かねて同僚の幸子(山田キヌ)を紹介しようとするが、健一は一向にその気にならない。彼にはやらねばならないことがあるのだ。

それぞれの想いは一方通行で、どこまで行っても結びつかない。

コミュニケーション欠如の白眉はホテトル嬢ミカ(安藤サクラ)との一夜だろう。性的不能に陥り目的を果たせない。ミカは諦めてカラオケに興じているが、健一はそれを止めさせて会話しようにも話が繋がらず気まずい時間だけが通り過ぎて行く。人の世の孤独。女は金目当てで、男は身体目当て。それが成立しなくなった時、そこに心の交流が生まれる余地もない。ポテトチップの袋が開かない苛立ちも、哀しい一人相撲である。

一方、極悪人の筈の木島には、何故か人が集まってくる。それも虐げられた被害者である人間達だ。彼らは暴力を振るわれながらも、何故逃げないで木島の元に引き寄せられてしまうのか。暴力もコミュニケーションの一種なのだろうか。星(田口トモロヲ)も由美子(谷村美月)も、孤独な人間だったのだろう。例え切っ掛けが暴力ではあっても、自分を構ってくれる人、関心を抱いてくれた木島に服従することによって、自分の居場所を見つけ出したのかも知れない。

木島はどこまでも性根の腐ったような男だ。ひき逃げしたにも関わらず、反省の弁が聞かれるどころか、自分の方が被害者だと嘯いている。誰かれ構わず暴力を振るい、散々脅した挙句、自分の行為に飽きてしまう。観ていてこちらが殺意を抱いてしまうような人物だ。こういう男をのさばらせていたら、被害者は増えるばかりである。健一に是非とも復讐を遂げさせてあげたいと願ってしまう。

そして、その夜の二人の対決…。

「他愛のない話がしたい」という幸子の言葉が甦る。会話の内容は何でも良い。意味のないことで構わない。そこから何かが始まることだってある。それがコミュニケーションのとばぐちとなる可能性がある。そしてそれが通じる人間と通じない人間がいる。

「元々この物語に、お前は関係なかった」という健一のセリフの意味するところとは…。「お前を殺して、俺は死ぬ」。「俺も」ではないことに注目したい。「お前」と「俺」は一緒ではないのだ。それぞれ別の物語であることを暗示している言葉使いだ。健一は自分の中で、木島の存在を消すことによって、関係無い人間にすることによって、殺したのだ。それによって自分の行為は無意味になり、自分自身も死ぬことになる。そして新しい自分が生まれるのだ。

ラストシークエンス、散々食べていた三個パックのプリンと留守番電話に健一が取った行動に、新たな一歩を踏み出す兆しが見えてくる。

 

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監督 中村亮介
出演 渡辺麻友 (ナツキ)  本城雄太郎 (ケンジ)  小野大輔 (京極)  花澤香菜 (カホリ)
       戸松遥 (山際ゆりこ)  平田広明 (京極の使い魔)  内田直哉 (関耕児)
       木内秀信 (斉藤先生)  木村良平 (神野ゆう)  石川由依 (曽我はるか)
[2012年11月10日公開]
ジャンル アニメーション
製作年 2012年
製作国 日本
配給 松竹
上映時間 106分

1973年に発表された眉村卓のジュブナイル小説「ねらわれた学園」。過去に薬師丸ひろ子や原田知世主演で何度も映像化されたこの作品が、舞台を現代の古都・鎌倉に移し、新たな登場人物でアニメーション映画となった。本作では、異世界からやって来た少年・京極リョウイチは自分の使命とケンジたちとの友情の狭間で苦しむ人間として描かれている。美しい鎌倉の自然を色彩豊かに描いたこの作品は、本当の気持ちをうまく伝えられなくなり始める年頃である中学生たちの友情物語ということが出来るだろう。監督を務めたのは、マッドハウス出身の中村亮介。AKB48の渡辺麻由が涼浦ナツキ役で初めての主演声優を務め、主題歌「サヨナラの橋」を歌っている。

古都鎌倉。中学二年生に進級した始業式の日、関ケンジ(声:本城雄太郎)は、朝の海で、密かに好意を寄せていた生徒会書記・春河カホリ(声:花澤香菜)と初めて言葉を交わす。そんな彼を幼なじみでカホリの友人でもある涼浦ナツキ(声:渡辺麻友)は、複雑な思いで見守っていた。その後、ケンジは、高台で桜の花びら受けながらまるで風を操るように立っていた少年と遭遇。その少年に何か不思議なものを感じるケンジだったが、彼との再会は思ったより早く訪れる。ケンジたちのクラスにやってきた転校生・京極リョウイチ(声:小野大輔)、彼こそがその少年だった。ケンジ、ナツキ、カホリのいるクラスに現れた京極は、次第にクラスに溶け込んでいきながら、一方で何かクラスメートの持つ雰囲気と相容れないものを漂わせる。やがて京極に密かに惹かれ始めるカホリ。そんな中、学園では不思議な出来事が起こり始める。事件はケンジ、ナツキ、カホリだけではなく、生徒会の面々、担任の先生、ケンジの祖父である関耕児(声:内田直哉)、不登校を続けていた山際ゆりこ(声:戸松遥)たちをも巻き込んでいく。それぞれの心の想いが明らかになっていく中、ケンジとナツキの距離感も変化を見せ始める。果たして、京極は何者なのか。そして学園では何が起ころうとしているのか……。 (gooより)
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その昔、眉村卓の原作を読み、NHK少年ドラマシリーズで『狙われた学園』を元にした『未来からの挑戦』を見た。そして大林宣彦監督、薬師丸ひろ子主演の映画も見ているが、内容はほとんど忘れてしまっていた。今回のアニメ化は現代風にかなりアレンジが加えられているので、大分過去作とは印象の違う作品に仕上がっていた。

映画の中では、学園を巡るある陰謀が語られるが、説明されても正直その必要性がよく分からない。関ケンジの家族についても疑問点が残されるが、敢えて詳しく語ろうとはしていない。どうやら過去作と関連がありそうなので、これは次世代映画という位置づけだったか。京極達の企みは物語の背景に過ぎず、メインに描かれるのは中学生達の恋愛模様である。その関係性は何れも一方通行。AさんはBくんを、BくんCさんを、CさんはDくんを好きという流れで、ACさん同士は友情関係にあり、やがてはBDくんの間にも友情が芽生えて行く。

作られる映画はその時代を反映している。本作で学園の生徒会が問題視するのは、携帯所持についてである。最近では携帯依存症で、常に所持していなければ不安になってしまう人もいるという。携帯というアイテムがあって、メールのやりとりをしていなければ、人との繋がりが実感出来ないのだろうか。人付き合いが面倒なくせに、孤独には耐えられないという矛盾。人は一人では生きていけないが、その分人間関係という煩わしさも出てくる。どこかで折り合いをつけなければならない。

京極達には携帯はいらない。彼ら独自のコンタクトの方法があるからだ。この時代の人間からもそういう能力の持ち主を探し出して味方にしようとしている。その力と現代の携帯と結びつけた物語展開はなかなか面白いと思う。しかし、人の心が分かってしまうのは、本当に良いことだと言い切れるだろうか。相手の気持ち、好き嫌いが分かれば、話が早いことは確かである。

ケンジにはナツキの気持ちが分からない。昔から男の子は好きな女の子をいじめてしまうという照れ隠しがあったが、ナツキのケンジに対する行動は誇張したアニメではあるが暴力に等しい。観客はすぐにナツキの気持ちに気付くが、ケンジはいつまでも気付かない。昔から隣の家に住んでいる幼馴染同士。永遠のお隣さんだ。

携帯でやりとりしていても、結局本音は語れない。それよりも直接面と向っての生身の人間同士の付き合いが大切なのだ。お互いの目を見て、手と手を握り合って、それで通じる本当の気持ちというものがある。

映画は現実ではあり得ないような色使いで各場面を表現している。それは登場人物達の心象風景の色なのかも知れない。大量に舞い散る桜、溢れんばかりの光、色の洪水での描写は、独特の世界観で圧倒される。それでいて舞台が鎌倉というミスマッチ感が何とも言えない味わいをもたらす。

物語はエンドクレジットの後まで続く。切ない初恋ストーリーの筈なのだが、それほどの胸キュン感がないのは何故だろう。もしかしたらナツキの好きの表現が、暴力的過ぎてあっけらかんとし過ぎて感じられるのが、敗因かも知れない。
 

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監督 タナダユキ
出演 永山絢斗(斉藤卓巳) 田畑智子(岡本里美) 窪田正孝(福田良太) 小篠恵奈(あくつ純子)
       田中美晴(松永七菜)  三浦貴大(田岡良文)  銀粉蝶(岡本マチコ)
   原田美枝子(斉藤寿美子) 梶原阿貴(長田光代)  吉田羊(西村あや) 
    藤原よしこ(野村先生)  山中崇(岡本慶一郎)  山本浩司(有坂研二)
[2012年11月17日公開]
ジャンル ドラマ
製作年 2012年
配給 東京テアトル
上映時間 142分
映倫区分 R18+

2011年本屋大賞2位、2010年本の雑誌が選ぶベスト10の1位に選ばれ、山本周五郎賞を受賞した窪美澄の小説を映画化。原作は主人公が異なる5つの短編からなる連作だが、映画はそれを1本にまとめあげた。そのため主婦と不倫関係の高校生の話と思って観ていると、突然その友人が主人公になったり、また時間が巻き戻って同じ場面が別の視点で語られたりする。共通するのは、出てくる人たちはみなふつうに生きたいのに、周りの状況に追い込まれてしまうのだ。各キャラクターは、脇役に至るまでその過去や背景が感じられる人たちばかり。俳優たち力もあるが、これは脚本を活かした演出力が大きい。監督は『百万円と苦虫女』のタナダユキ。“性”に始まり、“生”につながる視点は、原作も監督も女性ならではのものだろう。力作。

高校生の斉藤卓巳(永山絢斗)は、助産院を営む母子家庭のひとり息子。友人に誘われて行ったアニメの同人誌販売イベントで、あんずと名乗るアニメ好きの主婦・岡本里美(田畑智子)にナンパされる。里美は卓巳を自宅に招き、大好きなアニメキャラクターのコスプレをさせて情事に至る。以降、里美が用意した台本通りにセリフを言いながらコスプレセックスをすることが日常的になっていた。だがある日、卓巳は同級生の松永七菜(田中美晴)に告白され、里美との関係を断つことを決心する……。里美は、元いじめられっこ同士で結婚した夫・慶一郎(山中崇)と二人暮らし。執拗に子作りを求める姑・マチコ(銀粉蝶)からは不妊治療や体外受精を強要され、マザコンの夫は頼りにならず、卓巳との関係だけが心の拠り所だった。卓巳の親友・福田良太(窪田正孝)は、団地での極貧の生活に耐えながらコンビニでバイト中。店長の有坂(山本浩司)からは“団地の住民たち”と蔑まれ、共に暮らしている痴呆症の祖母は辺りを徘徊、新しい男と暮らしている母親には消費者金融の督促が後を絶たない。だがバイト先の先輩で元予備校教師の田岡良文(三浦貴大)が「団地から脱する武器を準備しろ」と勉強を教えてくれるようになる。痴呆が進んだ福田の祖母を父親の病院に入院させる田岡だったが、彼もまた心の闇を抱えていた……。(gooより)
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あんずと名乗るアニメ好きの主婦・岡本里美(田畑智子)は不妊に悩み、高校生の斉藤卓巳(永山絢斗)はあんずとのセックスに溺れる。卓巳の母・寿美子(原田美枝子)は助産院を営み、卓巳の親友・福田良太(窪田正孝)は自分を生んだ母を恨む。時間軸をずらし各登場人物の目線で、里美と卓巳のセックス・スキャンダルを中心に、不甲斐ない人生が綴られていく。何れも性が基本となる悩み事である。間合いを十分にとったタナダユキ監督の演出に、上映時間は2時間22分。終盤はその長さが感じられてしまい、かなりしんどくはあった。

夫・慶一郎(山中崇)の母で、里美の妊娠に執念を燃やすマチコ(銀粉蝶)の存在が不気味だ。妊娠できない嫁を不良品扱いする物言いに、嫁を自分の息子の子を生ませる道具としか捉えていない不人情が感じられて心寒い。自分が孫を見たいという気持ちだけが先走り、夫婦の問題に必要以上に口を出してくる。慶一郎は自分達の遺伝子に劣等感を抱いていて、それほど子を持つことに積極的ではない。嫁の所業を目にしても尚、子供を生ませることを強要する妄執が恐ろしい。
 
里美はコスプレで現実逃避している。しかし、魔法の言葉が効力を発揮することはない。

里美はつぶやく「こんな気持ちのいいセックスの果てに子供が生まれるとしたら、それはなんてしあわせなことなんだろう」。それは相手を如何に愛しているかのバロメーターではなかろうか。心底から愛し抜いた相手との間に芽生える生命こそ、かけがえのない愛し抜ける存在となり得るのかも知れない。

一方、良太は自分のことを望まれなかった子供だと思っている。母親は借金まみれで、彼を捨てて家を出てしまっている。痴呆で手のつけられない祖母の面倒を看ながら、コンビニでバイトしている。コンビニ店長・有坂(山本浩司)の言葉が残酷に胸に突き刺さる。卓巳のことが気になりながらも、その鬱屈した感情は、彼に正反対の行動を取らせる。

映画では団地住まいの人間が悪く言われている。要するに低所得者層を指しているのだろう。子供達は万引きをし、親から虐待を受けている。手を差し伸べようとする良太にくってかかる少女が印象的だ。彼らは同情を嫌う。施しは恥だと思っている。良太の母親が用意してくれた弁当を処分するシーンと、それと対比される、純子(小篠恵奈)と水浸しの部屋を掃除するシーンが印象的だ。またコンビニでは余った弁当類は、ゴミとして捨てている。その日の食事も満足にとれない人間の目の前で、処分されていく食物。飽食と言われた時代からもう何年も経過しているが、まだこの国ではこんな勿体無いことが日常的に行われている。

良太がこんな生活を続けていれば、勉強している時間もない。大学への進学も出来ず、何の特技もない人間は、結局また低賃金層の仲間入り。この負の連鎖から脱却することは難しいのだ。金持ちの息子なのに、コンビニでバイトしている田岡良文(三浦貴大)の存在がユニーク。彼の影響を受けた良太の終盤での変化が、彼に「団地から脱する武器」を準備させ、救いようのなかった物語に仄かな希望の灯りが見えてくる。

人を愛する気持ちと、それが裏切られた時の憎しみ。人間は誰しも恐ろしい程の心の闇を抱えている。憎しみは愛とは対極にある感情だと思うが、愛が満たされない人間は、憎しみによってその心の空虚感を生めようとするのだろうか。何が何でも別れないという夫。意地でも嫁に子供を産ませようとする姑。恋敵に相手の不実を知らせた上に、好きな相手まで追いつめてしまう女子高生…。そんな行動をとっても、彼らに罰は当たらない。映画はそのまま放置してしまうが、これこそが現実であろう。分からない人間は一生気付かないまま終わってしまうのだ。

 
 
PS
2012年キネマ旬報ベストテンの第七位にランクインした作品。こちらでは今年になってから公開されたのだが、年内に観ていても僕がベステトンに入れたかどうかは微妙なところである。

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監督 山本透
出演 麻生久美子(アキ) 大泉洋(ヤグ) 三吉彩花(ハツキ) 能年玲奈(トモちゃん)
     竹村哲(茂樹) MAH(ヒロシ) 塚地武雅(カニ) 小池栄子(小川先生)
[2012年12月15日公開]
ジャンル ドラマ
製作年 2012年
配給 ショウゲート
上映時間 106分

名古屋在住の作家、吉川トリコ原作の同名小説を映画化。自由気ままに生きる母とロックが捨てられない彼氏ヤグに育てられた主人公ハツキが、二人の生き方を受け入れ、成長するまでの姿を描く青春ストーリー。型にはまらない母アキの生き方が許せず、恥ずかしく思っていたハツキ。しかし、わがままな態度を初めてヤグに起こられ、叩かれた時、ハツキの心は、両親と同じROCKに向かい始めるのだった。演技に磨きがかかった大泉洋のヴォーカルが超カッコいい!出演は、麻生久美子、大泉洋、三吉彩花(ドラマ『高校生レストラン』)。竹村哲、MAHら、ミュージシャンが多数出演しており、ファンは見逃せない。監督は、『キズモモ。』の山本透。

中学3年生のハツキ(三吉彩花)は、名古屋市内のアパートで母のアキ(麻生久美子)と二人暮らし。以前パンクバンドでギタリストをしていたアキとハツキは友達同士のように仲がいい。桜が満開の頃、1年半前から「世界ツアーにでる」と言って音信不通になっていたヤグ(大泉洋)から葉書が届く。そこにはカンガルーの写真と共に「グッモーエビアン!」と書かれていた。半年後。ハツキが商店街を歩いていると、世界放浪を終えて突然帰国した薄汚い格好のヤグに出会う。その日からアキとハツキ、そしてヤグの騒がしい3人暮らしが復活した。15年前、ヤグは自分が父親ではないにもかかわらず、ハツキを身ごもっていたアキにプロポーズ。当時アキは17歳、ヤグは中学3年生。やがてハツキが無事に産まれ、3人は一緒に暮らし始める。アキとヤグはバンド活動も続け、籍は入れなくとも3人は家族同然だった。だが2年ぶりの3人暮らしにハツキは戸惑いを隠せない。仕事もせずにその日暮らしをするヤグと、それに対して文句も言わないアキにも理解できなかった。そんな中、ハツキの親友、トモちゃん(能年玲奈)に「あんな人がお父さんだったら毎日楽しそう」と言われ、思わずハツキはキレてしまう。だが翌日、トモちゃんは学校に来なかった。(gooより)
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あなたが生まれたとき あなたは泣いて まわりはみんな笑っていたでしょう
だからあなたが死ぬときは まわりが泣いて あなたが笑っているような そういう人生を歩みなさい

 実に素敵な言葉だと思う。うまいことを言う。笑って死ねる人生。出来れば僕もそういう人生の終わり方をしたい。たった一度しかない、やり直しの効かない人生。何れみんな死んでしまう。それならば、楽しく過ごした方が勝ちだ。人間いつ死ぬか分からないので、この為には毎日を楽しく過ごさなければならない。これが意外と難しい。大体人とのトラブルや、仕事が思うように行かなくて、つい悩んでは立ち止まってしまう。やりたいことだけやっていける人生なら、どんなに楽しいことだろう。

矢口ことヤグは、演じる大泉洋そのまんまのイメージの人物である。顔にカエルやゴルゴの落書きをされても、それを楽しんでしまう脳天気振りには笑わせてもらった。このキャラはいつもハイテンションで、実際近くにこういう人物がいると、周囲の人間を疲弊させてしまうだろう。同居している中学生のハツキ(三吉彩花)からウザがられるのも当然だ。彼は自分が楽しいことが基本ではあるが、自分が楽しければ周囲も楽しいと思っているのかも知れない。

自分の子供ではないハツキを身ごもっていたアキ麻生久美子)と同居を始め、一緒にロックバンドも組んでいた。ヤグがアキを愛しているのは良く分かるし、アキもそんなヤグの総てを受け入れているような大らかさが感じられる。

アキが外に出て働いて、ヤグが主夫か。大体働かない夫に妻が苦労するという話はよく聞くので、本当に成立する話なのか心配はしてしまう。その点アキは男には頼らない自立したイメージの強い女性なので、ヤグがいても手のかからない子供が1人増えただけという感じなのかも知れない。その分ハツキがかなりしっかりしていて、安い食材を手に入れるのに敏感だったり、家の中にスーパーのバーゲンのチラシが置いてある細かい描写には感心した。ヤグの作るヤグカレーは絶品らしく、この匂いが家の外に漂っていて、帰宅するアキやハツキが嬉しそうな顔をする描写もまた、一つの家族の風景であって微笑ましい。

ハツキと親友のトモちゃん(能年玲奈)がとても良い。お金持ちの箱入り娘らしく、おっとりとしていて苦労が無いように見えるが、その実悩みを抱えている。それを悟らせないのはハツキに心配させたくないからか。いつもとちょっと違うトモちゃんの様子は観客には分かり易過ぎるのだが、ハツキが感じ取れないのは演出上であっても、やはり友達甲斐がない。ハツキが疎ましがっているヤグのことを、羨ましがるトモちゃんの気持ちは、その内実を知れば納得できる。

ハツキの教室にヤグが飛び込んでくるシークエンスは、何か安直なテレビドラマのような演出で好きではないのだが、ついホロリとさせられてしまったことは事実である。それはおそらくヤグの「さよならとありがとうは、言える時に言わなきゃダメ」というセリフに感じるところがあったからだろう。後に語られるヤグの過去を知れば、その想いは痛いほどよく分かる。

自転車二人乗りの激走からも熱い想いが伝わってきて、ヤグがただのお調子者ではないことの証明となる。ハツキもヤグを父親だと思っていた頃の自分の気持ちを取り戻せたことだと思う。この後の展開は、冒頭の言葉に繋がると思い込んでいたので、ヤグに騙されてしまった。

終盤のヤグのMCはやや長い。ロックは歌で、映画は映像で伝えなければならないのに、セリフで語らせるのは残念。それでもハツキの心の変化は心地良く、こんな家族もアリかなと思わせてくれる。人生やりたいことだけやって生きていけるなら、こんな楽しいことはない。しかし現実の母親が支えている家庭の生活は、かなり大変だと思われる。これは現代の寓話として受け取っておいた方が良さそうだ。

 

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今年もマイベストテンを決める時がやってまいりました。
劇場鑑賞本数全166本。うち日本映画は68本でした。
昨年も一昨年も235本でしたから、今年は緊縮財政での為、かなり本数が減りました。その分家庭鑑賞が184本と、かなり増えています。
 
映画のレビューをする時点で、点数をつけておりますので、自ずと順位は決まったようなもの。しかし、時が経つと自分の中で評価が変わる作品もあります。
僕の場合★が一つ20点、☆は10点です。
100点満点は上位確実。90点はほぼベストテン入り予定。80点は次点の候補作品。
『鍵泥棒のメソッド』は当初80点でしたが、日が経つにつれてどんどん自分の中で評価が上がってきました。で、結局以下の通りです。
 

① 『ALWAYS三丁目の夕日'64』

これは僕、大好きなシリーズで、三作ともその年のベストワンとなりました。
感極まって★10個、200点つけちゃいましたから(笑)、これは一位にしない訳には参りませんね。公開が1月でしたから、2012年早々にベストワンは決まっていたのです。
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② 『わが母の記』

原田眞人監督は静岡県出身なので、実は前年のうちから特別試写会で映画を見せていただいておりました。そして今年になってからまた試写会で鑑賞して、その素晴らしさを堪能しました。樹木希林の演技は、女優賞確実だと僕は思います。
 

③ 『北のカナリアたち』

吉永小百合さんも素晴らしかった。湊かなえの原作も良く、木村大作のカメラの美しさといったら格別です。若手演技陣も後へ続けとばかりに、皆お見事。いいぞ、満島ひかり勝地涼宮崎あおい小池栄子松田龍平。

④ 『桐島、部活やめるってよ』

複数の登場人物達の行動が、ラストへと結びつく脚本の巧さ。これぞ映画の醍醐味。
吉田大八監督作、結構好きなものばかりです。
 

⑤ 『終の信託』

寡作な周防正行監督。いつも慎重な題材選びが面白い。
今作は久し振りに映画らしい映画を堪能しました。このヘビーさこそ、映画の重量感であります。役所広司の熱演に引きづり込まれます。

⑥ 『苦役列車』

森山未來くん、日本映画史上に残りそうなダメ主人公の熱演で、主演男優賞有力候補。
ライバルは役所さんですね。

⑦ 『ポテチ』

伊坂幸太郎作品撮らせたら外れの無い中村義洋監督。短いながらもしっかりと泣かせます。本作に出た木村文乃ちゃんは、2013年ブレイク予定です。
 

⑧ 『鍵泥棒のメソッド』 

繰り上がり当選の本作。内田けんじ監督も外れなし。これからが勝負かな。
広末涼子を初めて好きだと思わせてくれた作品。
今でも頭でキユンキュン鳴ってます(笑)。

⑨ 『綱引いちゃった!』

良く出来た群像ドラマだと思うのですが、世間一般的にはまあまあといったところでしょうか。綱引きという地味そうなスポーツと地方の町興しの合わせ技。

⑩ 『任侠ヘルパー』

これは甘く見ていまして、観る予定がなかっただけに、僕的には拾い者。 
草なぎ剛ポンはこういうの、はまり役だと思います。
老人問題は、深刻になってまいりました。
 
 
次点
『天地明察』『ロボジー』『カラスの親指』 
 
 

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