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引き続き、池澤夏樹を読んでいる。 『真昼のプリニウス』も読み終えた。 どうでもいいことだが、ワタシはこの本の題名を『真夏のプリニウス』と間違えて憶えていた。真昼と真夏は一文字違いだから早合点していたのだろうと思っていたのだけれど、久しぶりに文庫を開いて間違いの原因が分かったような気がする。 ワタシが持っているのは1993年10月発行の中公文庫版なのだが、そのp.13からp.33まで、左肩のノンブルの隣に入っているタイトルが『真夏のプリニウム』となっているのだ。 いや、似てるけど。あまり見ない誤植だなあ。 それはさておき、いま読んでいるのは紀行エッセイ『明るい旅情』(リンクはamazon.co.jp)。 6年前に発行の文庫版だから、その頃はまだ本を読んでいたのだなあと思う。たぶんぎりぎりのころだ。2001年6月。この年の秋以来、読書量ががた落ちしたはずだ。 5年以上のブランクは大きくて、文字を追うペースがはっきりと落ちているのを感じるのだけれど、以前のワタシはコスト・パフォーマンスの悪い読み方をしていたから、これくらいゆっくり読む方がいい。とくに池澤氏の文章は端正で美しくて、単語の選び方もワタシ好みなんだから、ゆっくり咀嚼して味わった方がいい。 今日読んだ一編は「あのクジラのこと」。 二年以上前にドミニカ沖でほんの数秒だけ会ったザトウクジラのことを回想する文章だ。 池澤作品にはしばしば自分を見透かされている思いをさせられるのだが、この短文にもそんな一節があった。 (前略) 自分が今ここにいて、具体的に言えば太平洋の北西の端の島に住んでいて、別の大洋に住むクジラのことを考えるのは不思議な気分だ。ひょっとしたら、あいつもこっちのことを覚えているかもしれない。シルバー・バンクの浅い海でひょいと水に潜って自分の方を見た奇妙な生き物のことが、あの偉大な脳のどこかに微かな記憶として残っているかもしれない。地球一つを間に挟む別々の大洋に暮らしながらお互いに相手のことを考えることができれば、それで思いが伝われば、それはずいぶん愉快なことだ。実際には、あのクジラへのぼくの思いは一方的な、有名人に対するファンの気持ちのようなものなのだが。 (中略) あの偉大なる脳はシルバー・バンクで出会った奇妙な生き物のことなど覚えていないだろう。それで結構。彼はもっと大きなこと、なぜ自分は存在し、こうやって生きていることを喜んでいられるか、それを考えている。 (中略) それにしても、今、あいつはどこにいて何をしているのだろう? (池澤夏樹『明るい旅情』収録「あのクジラのこと」より)
そうか、あれは、あの人はクジラだったか。それでワタシはクジラが好きなのか。いや、逆か? いずれにしても、ワタシも思う。 「ワタシのクジラはどこにいて、一体何をしているのだろう?」 広い海原を回遊するあの巨大な生き物に、また会いに行きたい。池澤氏のクジラ同様、ワタシのクジラもワタシのことを認識していないかもしれないが、ワタシは他のクジラと見間違えるわけがないから。 |
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クジラ・・・星野道夫さんの本に出て来たクジラが思い出されるんだけど、どの本に出て来たのかが思い出せない。SIONの「しろながすくじら」も好き。
2007/3/10(土) 午後 9:46 [ ぢみおん ]
>ぢみおんさん。クジラ、いいですよね。哺乳類、海棲、巨大と三拍子揃った素敵な生き物です。SIONの「しろながすくじら」というのはお歌? 絵本とか? シロナガスクジラの存在を知ったときは衝撃だったな〜。
2007/3/11(日) 午前 9:54