|
最近読書熱が戻りつつあって、寝る前に本を開くことも多い。昨夜は50ページほど残っていた本を最後まで読み切った。 ジョナサン・キャロルの『天使の牙から』。 久しぶりに読むキャロル、久しぶりに読む浅羽莢子訳に夢中になって、自分の書架にあるキャロル×浅羽の一番初めの本から読み直そうと思った。 巻末の解説を読み、何気なく訳者紹介を読み、混乱した。 「2006年歿」って書いてある。そんなわけない。 混乱して、見返しの著者紹介を見ると、こちらには生年しか書かれていない。ってことはあれか、ほんとに浅羽さんが死んじゃったってことか。 2006年9月18日、乳ガンの転移で逝去。もう1年半も前の話。 ワタシはほとんど本を読まない時期が続いていたから、新聞の訃報欄を見逃せば知るはずもない。 このころは何をしていたんだっけと、自分のブログを見たら、10月に「阿部謹也氏が一ヶ月くらい前に亡くなった」って書いてある。 2006年9月、ワタシは大好きな「作家」をふたりも失っていたんだってさ。 落ち込んで今日を迎えたら、昼前に一本の電話。 癌と闘っていた知人の逝去の報せと、ワタシといくつも年が違わない別の知人が癌で手術するという報せ。 別に自分の周囲が特別だとは思っていない。 毎日たくさんの人が癌になったり癌で死んだりしているんだから、誰しも身辺に縁があるはず。 ここ数年にまとめてそういうことがあるのも、ワタシ自身の年齢のせいなんだろう。 でも、そう思うことが何がしかの慰めになるわけでもない。 浅羽さんの逝去を知る直前に読んでいた『天使の牙から』は半分が「自分が癌(血液の癌=白血病)で死ぬことを知っている男」の物語だ。 ワタシが読んだのは昨年出た文庫版だけれど、単行本として出版されたのは1995年だから、もちろん浅羽さんは(近いうちに)自分が死ぬなんて思っていなかった。 読んだ直後に逝去を知って、寝付くまでの間に、物語の様々な場面が蘇ってきた。それから結末が。 強大な絶望を前にして、はかなく、単純で、でも絶対的な希望を提示する結末が。 浅羽さんは自分が訳した希望のことを思い出しただろうか。 少なくともその希望が真実であることを知る瞬間はたくさんあったんじゃないかと、ブログを読んで思った。 浅羽さんは2006年1月から8月の頭までブログを書いていた。 乳がんの手術をしたあとで、おそらく転移のこともわかっていたと思われる。 亡くなる約3ヶ月前の記事で、ご自分のお仕事について書かれている。 それは最期を目の前にした人の言葉のようにも読めるけれど、今現在自分がどのような立場で仕事をしているかについて述べているようでもある。 実際、浅羽さんは翻訳や改訂の仕事を続けられていて、2006年8月5日、最後の記事も仕事(を続けていること)に関することだ。 もう一人、自分が癌で死ぬことを知りながらブログを書いている人を知っている。 ほぼ毎日その人のブログを読んでいる。ほぼ毎日更新されるので。 1年か数年かわからないけれど、自分に残された時間が限られたものであると常に意識しながら、自分がやるべきことはまだたくさんあるのにやりきる時間はおそらくないと思いながら、その人は立ち止まることなく日々を生きている。 そうやって生きられることの理由は強さであり、優しさであるのだと思う。 強くないし優しくないと言われるかもしれないが、それが強さで優しさなんだと思う。ワタシが欲しいもの、筆頭の二つだ。 浅羽さんは木村拓哉さんのファンだったんだって。全国のコンサートを追っかけてたんだって。 対象は意外だけど、追っかけという点には納得できる。 思えばワタシのミーハーな耽美好みを満たしてくれたのが浅羽訳作品との出会いだったから。 そういえば、浅羽訳作品と出会ったのって、アイルやU2と同時期だ。 ああ、もう、とりとめもなくなるので終わりにする。
|
全体表示
[ リスト ]



私達も(一緒にしてごめんなさい)そういう年齢になってきたってことでしょうか。私の身内も数年前から癌で生死を彷徨ったり、また友人の旦那さんが3人の幼い子供を残して亡くなってしまったり。
人生は誰しも必ず終わりがある。。とわかってはいても、それが限られた時間であると知った時、自分がどんな風になるか想像もできません。きっと強くなければ優しくなれないし、優しくなければ強くはなれないのでしょうね。ああ。。無性にU2が聴きたくなってきました。。
2008/3/6(木) 午前 11:25 [ sara1999 ]
優しさって、信念がないとできないような気がするんだけど。この間のキヨちゃんの復活祭のパンフに載ってrいるインタビューで、倒れてもまた起き上がるのは、自分の為だけじゃないのかもしれないって思いだしてきた・・・って書いてあった。これも、強さや優しさだな〜って思ったよ。
2008/3/6(木) 午後 3:13 [ sumomo ]
>teruchiさん
癌=死ではないケースが増えてきた昨今ですが、それでもやっぱり圧倒的に死に近い病ですよね。ましてやカウントダウンを始めなければならないとしたら、ワタシは周囲のことも自分のことも考えられないんじゃないかと思う。
強くなければ優しくなれないし、強くなければ人の優しさを受け取ることもできないんじゃないかと思っています。
2008/3/6(木) 午後 11:00
>sumomoさん
「信念」という言葉自体、すごく強い意味を持ってるよね。すべての信念が優しさに繋がるわけではないとは思うけど、二つが繋がるととても美しいと思う。
起き上がって「自分のためだけじゃないかもしれない」って思うのは、すごく優しいなあ。そういう人だからこそファンに大切に思われるんだよな〜。彼を必要としている人、たっくさんいるもんね。
2008/3/6(木) 午後 11:06
存じませんでした。。。私もショックです。
中高時代はファンタジーオタクでしたので、リー作品やゴーメンガースト等浅羽さん訳を愛読してました。。。
あの絢爛豪奢な世界も浅羽さんでこそ、と思えます。
(「とまれ」「なんとなれば」なんて文章に初めて会ったのも浅羽訳だったように思います。当時、真似してファンタジー書いたりしてました。。。)
2008/3/10(月) 午前 0:41 [ ray ]
>rayさん
ほんとにほんとに残念です。
美しい世界描写もさることながら、登場人物への理解がとても深いと感じられて、感情移入が激しく出来るんですよね。
自分もこんな文章を書いてみたいと思う気持ち、よく分かります。
翻訳者で、これほど指示されている人も珍しいと思う。亡くなってからもファンは増え続けるだろうなあ。
2008/3/10(月) 午後 5:05