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続いて取り上げるのは、アルバム『How To Dismantle An Atomic Bomb』の2曲目、"Miracle Drug"。 この曲を語る時に、ボノはよく高校の後輩の話をします。 生まれる時のトラブルで体中の筋肉を動かせなかったクリストファー少年の話です。 周りで起きていることがわかっているのかどうかさえ定かではなかったクリストファー少年のことを、彼の母親だけは信じていました。 彼が11歳の時、やっと見つけた薬のおかげで、首の筋肉を1インチだけ動かせるようになりました。 クリストファーは、額にユニコーンのような角をつけ、タイプを覚え、言葉を操れるようになりました。 意識や感覚があるのかどうか、世界を認識しているかどうかわからないと思われていた間中ずっと、クリストファーは頭の中で詩を書いていました。 彼の最初の詩集のタイトルは『Damburst Of Dreams』。ダムを決壊するほどの、夢の奔流。 奇跡の薬によって溢れ出したクリストファーの世界そのものです。 ボノによれば、ある日、ボノとラリーとアダムの前に、宇宙船が現れました。そこから降りてきた宇宙人がエッジだったというのです。 しかも、ただの宇宙人ではなく、未来から来たというエッジに、「未来はどんな感じ?」と聞くと、彼は「今よりもいいよ」と答えたそうです。 このMCに、ボノはエッジと、彼の娘さんへの思いを込めています。 小児白血病と闘うサイアンちゃんのために、未来がよくなっていますように。彼女のための「Miracle Drug」が現れますようにと。 ボノは『U2 BY U2』の中で、「この曲はエイズやそれに対抗する薬の曲だともいえる」と語っています。 抗HIV薬の開発が進んだおかげで、今ではエイズは死の病ではなくなりつつあります。 HIVに感染しても、薬が発症を押さえ、普通の暮らしを送ることができるようになりました。 薬による治療を受けさえすれば、学校に行くことも、工場で働くこともできます。 しかし、残念ながらそれはまだ一部の話でしかありません。 HIVはアフリカの貧困層に広がっていますが、彼らの多くが暮らす農村地帯には、医療施設そのものが不足しています。彼らにとって抗HIV薬はまだまだ夢の薬なのです。 HIVだけでなく、結核やマラリヤという、日本においては過去のものとなった病気についても同じことです。 既に対抗手段が存在しているというのに、救えない命が数えきれないほど存在している。 助けられる命を見殺しにしているのです。 慈善ではなく、正義の問題です。 さて、"MIRACLE DRUG"に、「The Songs in your eyes」という歌詞があります。直訳すれば「君の瞳の中にある歌」となりますが、Kyokoさんはこれを「お前の瞳はオルゴール」と訳しました。 それを読んでワタシが真っ先に思い出したのが、ボノの講演録である『on the move』という小さな本です。 ムスリム、ジューイッシュ、クリスチャンと、ボノが「CoeXisT=共存」を訴える3者 それぞれから代表的な立場の人が集うのがこの「朝食会」です。 収録された講演も素晴らしい内容ですが、ワタシにとってはそれよりももっと待ち望んだものがこの本におさめられていました。 1985年、エチオピアを訪れた際にボノが撮影した写真です。 "Miracle Drug"の冒頭の歌詞は「I want a trip inside your head」、あなたの頭の中を旅したい、そこで何日も過ごして、あなたが聞くものを聞いて、あなたが見るものを見たいというものです。 これはそのまま、ワタシの望みでもあります。 ワタシはボノが見る世界が見たかった。 エチオピアで撮影した写真を、ボノは1988年に一冊の写真集「A String Of Pearls」にまとめました。 その存在を知った時に、これこそ望みの一端を叶えてくれるものだと思いました。 写真というのは、その人が見た世界を切り取るものです。 ボノが撮った写真を見るということは、ボノが見た世界を見ることに他なりません。 残念ながら「A String Of Pearls」はたった2500部だけの出版で、唯一ネット上で流通している1冊には、500ポンドという値がついていました。 『on the move』はもっと簡単に、ワタシの望みを叶えてくれました。 ボノはエチオピアにカメラを持っていったものの、目の前の現実の厳しさに、はじめのうちは写真を撮る気にはなれませんでした。 滞在も終わりに近づいた頃やっと、健康状態の良い人たちの写真を撮ったのです。 ボノ曰く、彼らの顔には威厳があり、確かにシバの女王の面影があるそうです。 Kyokoさんの訳詞「お前の瞳はオルゴール」に、ワタシはこの子たちのカメラを見つめる瞳を思い出しました。 もちろんそれはボノが見つめた瞳、ボノを見つめる瞳です。 この子が瞬きするたびに、オルゴールのふたが開いて音楽が流れ出したのだと思いました。 アフリカ問題の中でも、ボノが最も力を入れているのが、子どもたちを感染症から守ることと、子どもたちに教育を与えることです。 そのために、彼らを殺す極度の貧困を、なんとしても終わらせたい。 ボノにとって、歌の生まれる理由と、アフリカを助ける理由は、同じところにあるのだと思いました。 そう思ってこのイベントに臨んだ次第です。 私はボノの傍にいたい。ボノの力になりたい。強くそう願っています。 長い時間お付き合いいただき、ありがとうございました。 |
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ありがとう!お疲れ様!う〜ん、続くはこの道は。満月さんの続きが、私の人生の
One Piece になったのは間違いないな。Vertigoツアーでの来日でさいたまにみんなが辿り着いたのは、偶然ではなく必然だったのかもね。U2もボノも含めて。
2008/6/5(木) 午前 1:44 [ sumomo ]
すみません、先にメールを見たので「添付ファイルが…」とか書いたのですが、ここで全部読めたのですね。
こうしてあらためて見ると半端じゃない量(もちろん質も)です。
画像の選択にもこだわりが感じられます。
アップするのも大変だったでしょう。すごい時間になってるし。
当日版は近々ビデオがアップされるでしょう(tks to Naoさん!)から、こちらには完全版を上げていただいてよかったです。永久保存版ですね!
2008/6/5(木) 午前 11:04 [ Kyoko ]
いつも面白楽しく拝見させて頂いております。
今回初コメです。
これからのご活躍も楽しみに、もちろん拝読させていただきますよっ!頑張ってくださいね。
2008/6/5(木) 午前 11:11 [ はるか ]
>sumomoさん
少なくともさいたまからここまでは確実につながっている。ボノはそう思っているみたいです。
で、まだまだ先につながるんだよね。ちょっと覚悟しなくちゃいけないな。
2008/6/5(木) 午後 3:37
>Kyokoさん
すみません〜、添付忘れメール。
ワタシもアップしながらちょっと青くなりました。まさか日付が替わるとは思わなかったです。
画像は、もちろん当日読まなかったものはスライドに使わなかったのですが、せっかく皆さんに送っていただいたので、少しだけ公開しました。
ビデオ……怖い(笑)
2008/6/5(木) 午後 3:41
>はるかさん
コメントありがとうございます。
どうぞよろしくお願いします。
2008/6/5(木) 午後 3:43
ん〜。やっぱりすごい〜。満月さんは「言葉」で何かを伝えることが出来る人だ〜。感じていることを思うように形にできない私なんかは満月さんにかなりスッキリさせてもらってる〜。
このレポートはまとめて1冊の本にしましょう。そうしましょう。
行動してくれて、読ませてくれて、考えさせてくれて、ほんとにありがとう。ねぎらいと感謝のはぐはぐとちゅー。
2008/6/6(金) 午後 2:56
>nekoさん
ボノから受け取るものは厖大で、果てしがなくて、それをなんとか自分の中で消化したくて、なんとか言葉にしようとしています。ワタシにはそうすることが必要なんだな。
「言葉」は昔から大切なものだったんだけど、まさかこんなに自分のために使うことになるとは思わなかったよ。
はぐはぐとちゅーはリボンかけて、会ったときに手渡ししてね(^^)
2008/6/6(金) 午後 3:59
遅くなってしまいましたが、やっと読み切りました。膨大な資料良くまとめられていて、凄すぎです。満月さんの情熱のなせる技ですね。MDも自分では見えていなかったとても大切な部分が伝わってきました。大切な曲です。そしてSTREETSの写真、久々に見てビビッときました(笑)。
お疲れ様でした、というかG8がすぐそこですね。しばらくは走れそう、かな。
2008/7/2(水) 午後 0:45 [ R1100 ]
>R1100さん
コメント返しが大変遅くてすみません!
なにしろMDなので、R1100さんには聞いていただきたかったです。
この原稿を書いて、また自分の中のMDが広がった気がします。原稿だけじゃなくて、音つけて読んで聞いてもらうって、やっぱり未知の世界でした。楽しかったです。
2008/7/7(月) 午後 2:14
Damburstの意味がわからず、ここで発見しました
助かりました。
『Damburst Of Dreams』。ダムを決壊するほどの、夢の奔流。
2008/12/18(木) 午後 11:43 [ 164 ]
>164さん
意外なところでお役に立てたみたいですね。
よかったです(^^)
2008/12/21(日) 午前 1:23