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きみと道で行き合った人たちのうち何人かは、きみを偽物だと思うっていうのは本当のことなのかな?
ぼくが気づいてるよりも多くね。でも今は面白い闘いの話をさせてくれ。
名前は教えられないんだけど、違うジャンルの有名なシンガーとレコーディングをしたときのことだ。わかるかな?
彼らはダブリンにやってきたんだけど、大きなスタジオには入れなかった。辿り着いたのは市の中心部にある妖精がいそうなささやかなスタジオ。今では彼らはアイルランドは第3世界だと考えてる。少しおかしな気分にさせられてそこにいる。
確かなことといえば、ビッグ・スターが来るってことだけだ。
ぼくは車でスタジオに行った。決してすごく素敵だとは言えないヤツでね。で、外の駐車場に停めようとした――駐車はあんまり得意じゃないんだ。
スタジオの外側にはスターのセキュリティが立っていて、ビッグ・スターのスペースに車を停めようとするばかげた挑戦を見張っていた。
「申し訳ないが、この場所は私たちが押さえているんです」
ぼくは「いいんだ、大丈夫だよ、ぼくのことだから」と言ったよ(笑)。
「いや、ほんとに、ここに停めてもらうわけにはいかないんですよ」と、セキュリティが答える。
まるで巨人の国のできごとみたいだろ! 「違う違う、ぼくがアイルランド人のシンガーなんだよ」と言うんだけどね。
なぜなら、彼らの頭の中じゃあ、ぼくがたくさんのセキュリティを連れていないなんてあり得なかった。やがて、トランシーバーを持った男がやってきた。
たいていこういうことになるんだよ。
ビバリー・ヒルズで開かれる大きなパーティーに、取り巻きと一緒に車に乗っていくのじゃなしに、歩いていったとしよう。みんなすごく混乱するだろうね。
ぼくがすごく誇りに思うのは、決して失うことなくそういう人生を送っているってことだよ。
実際、セレブリティ・レーダーの監視下にあるんだけど。
そういうのは少し厚かましくないかい。それが真実だとは思えないな。
たいていの場合、ぼくらの人生は放映されるに足るほどビビッドなわけじゃない。
思うに、パパラッチでさえぼくらのプライバシーを尊重することを学んでいる。なぜかと言えば、もちろんパパラッチを最もやる気にさせるのは、彼らから隠れたり、彼らをやっつけようとすることなんだ。
彼らに向かってはこう言えばいい。「見てくれ、ぼくはここにいるよ。写真を撮りたいかい? 撮りなよ」ってね。
奇妙に思うだろうけど、ぼくは彼らと飲みに行くこともある。みんなにおごるんだよ。彼らは生活のために働いているんだ。ぼくは彼らから多くのことを教わったよ。
で、ぼくはたいていの人はぼくのプライバシーをすごく尊重してくれてるって感じるんだ。
でも彼らに脅かされている仲間もいるって言ってなかったっけ?
うん、友人のマイケル・ハッチェンスはこう言ってた。
「これはスター・ファッカーの商売だ。スターは最悪のスター・ファッカーだ」。
たぶん「ぼくの写真を撮りたがらない人間がいる。ぼくのサインを欲しがらない人間がいたらぼくはやってられない。この前のアルバムは失敗だったに違いない」って感じの症候群があるんだろうね。
無意識のレベルでは、ぼくたちは注目を求めているんだ。ぼくもそのひとりに違いないと思うよ。
でも、それは仕事上のことだけで充分で、プライベートな生活の中にまで求めはしないな。
でも、違うかな……だってぼくは、偶然にも、本のためだから言うけど、世界のメディアの前で大統領と握手している自分を見つけちまったんだ。
つまり、きみのポケットに入ってる心理学の本ではなんて定義されてるんだろうね。「充分に注目を得ていない」?
もししょっちゅうこんなシチュエイションに身をおいたら、そこにいたくなるに違いないよ。
たぶんぼくはどちらをも望んでいるんだろうけど、重要なのはいつだってプライバシーについてだ。
ぼくはただアイルランドに、ダブリンに引っ込んでいるのが好きなんだ。外出してスターらしく振る舞っても、ステージを離れて特別な外見も振る舞いもないと思うときでさえ、ふたつの世界のどちらについても、最高のものを与えてくれるからね。
でも、ぼくがもう一つの人生に戻りたいと望んだときには、ダブリンやニースやニューヨークで手に入れられる。
ぼくは長い時間をニューヨークで過ごした。人々はぼくに気づいても、冷静なんだ。警官もね。ニューヨークの警官にはアイルランド人が多いんだ。
それに、9.11が起こって、U2がNYをサポートしてからは、すごく愛情を感じるようになった。まさに世話になってるよ。
時々、ぼくがタクシーを呼び止めようとしてると、パトカーが近づいてきて「ヘイ、ボノ。どこでも行きたいところに連れてってやるよ」って言うんだ。最高だね。
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