酔月亭

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リリック・トークの"Miracle Drug"で、ボノが見たもの、つまり『on the move』に掲載された写真について取り上げました。
以前にもこの本について触れています(On The Move // ボノの視界@酔月亭)。出版前ですが。
ボノのとった写真を見るということは、ボノの視界に自分の視界を重ねること。しかしもちろん、ボノが見たものはこれらの写真に写されたものだけではありません。
『U2 BY U2』の中で、ボノは帰国の直前まで写真を撮る気にはなれなかったと明かしているし、『ボノ・インタビューズ』でも「アフリカで見たことについては話さない」と断言しています(p275)。
「目の前で失われた命やその時に感じた気持ちについて口にすることはない」。その理由は戦場カメラマンに体験談をせがみ、あることを話してもらったことでひどく当惑し、聞かなければよかったと思っているからだそうです。

「だって、時にイメージは目を圧倒するからね。脳に襲いかかり、それで頭がいっぱいになってしまう。僕もそんな体験をたくさんしているけど、それを他の人に伝えたくないんだ」(『ボノ・インタビューズ』p276)

写真に収めることなど到底できない現実に直面したボノ。
ボノはそれを私たちに明かそうとはしません。
だからこそ私は「「I want a trip inside your head」、あなたの頭の中を旅したい、そこで何日も過ごして、あなたが聞くものを聞いて、あなたが見るものを見たいというものです。これはそのまま、ワタシの望みでもあります。ワタシはボノが見る世界が見たかった」などとのんきなことを言っていられるのです。
かといってボノはもちろん、厳しい現実に目を向けるなと言っているわけではありません。
一日でエイズに死ぬ人数、救えるはずなのに救えなかった命の数を私たちに突きつけます。
数字だけで充分だろう? と言っているのかもしれません。
確かにその通りで、「毎月一回、飛行機がビルに突入する/大津波が襲う/大地震が起こるのと同じだけの人が死んでいる」という言葉から喚起されるイメージだけでも、アフリカの現実に思いを馳せることはできます。
ボノはここでも私たちを甘やかしてくれています。

でも、ボノ自身は違う。
カメラマンから知らされた戦場の現実を「聞きたくなかった」と言いながら、なおかつ「あなたの見るものを見たい」と歌うのは、美しいものだけではなく、その人が直面する厳しい現実、見たくない、見せたくないものまで引き受けようという、強い意志を感じます。
私もそうありたい、と言えるぐらいに強くなりたい。

以前に(もう記事を探すのもいやですが)、ボノのようになるにはアリが必要だと書きました。
ボノは、人に話して聞かせたくないほどの光景を、アリと分かち合っています。
ボノがアフリカから離れていた期間はほぼそのまま、アリがチェルノブイリに深く関わっていた期間でもあります。
その頃、ボノはきっとアリから、話したいことも話したくないことも聞き出したことでしょう。
アリの頭の中に入って、アリが見るものすべてを見たいと思ったんじゃないだろうかと、今にして思います。

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