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11月27日 04:30 到着予定時刻を過ぎても、ゲートの向こうにそれらしき人影は見えない。でも空港職員やJALの人々が増え始める。 外を見れば、1台だったU2バスが増殖しているし、黒塗りの車やワゴンタクシーも来ている。 たぶん、あっちはクルーで、メンバーはひとりずつあっちで……なんて予想するのも楽しい。 そういえば、ワタシがした準備がもう一つあった。 Wさんがひとつ余計に持ってきていたお手製プリントTシャツ、背中にはでっかく「U2」の文字、胸には「WIDE AWAKE JAPAN」と入っているヤツをお借りして着替えた。もちろん、誰かのサインを貰うためにね。 入国ゲートの両側にはられた誘導ロープに旗をくっつけようとしたんだけど、警備員さんから横断幕NG。でも、いらついたり怒ったりしていないの。ああ、しちゃいけないことをしそうになったら、優しく制止してくれるんだなと思って安心。って、ワタシは小学3年生ですか? それまでかなりはしゃいで、踊ってみたり、ゲートの中を覗き込んでみたりしてたんだけど、全然止められなかった。 最初はロープに沿って後ろに並んでたけど、「立ち入り禁止はこのゲートから」とか言って前に出てた。 こんなイレギュラーな時間帯の到着で、「他のお客様にご迷惑」じゃないからかな。 他のお客様といえば、この時集まっていたU2ファンは15、6人だったと思う。ワタシたち一行が8人だから、過半数だよ。何につけワタシが多数派になるなんて珍しいことだった。 ワタシはずっと一番外側で待とうと思ったんだけど、不意に気が変わって、ゲートの真横に立った。ロープの外側になっちゃうけど、なぜだかボノが一番最初に、それもふたつあるうち右側のドアから出てくるものと決めこんでいて、一番最初に視界に入りたいなんて、欲を出したの。 それから外側に行けばいいじゃん、なんて。 いま思えば、ほんとにボノのことしか考えてなかったみたいだ。 11月27日 04:58 左側の、つまりワタシが死角に入っちゃってる自動ドアが開いた。慌てて覗き込んだらクルーだったんだけど、思わず「Hello!」が口をついて出た。 あ、大丈夫だ。声出る。ぼーっと突っ立ったままじゃないや。勢いづいてもう一言「Welcome to Japan!」。 すっと人影が視界の端をかすめるように出てきた。 ラリーだよ! 度肝を抜かれてしまったみたいに、一瞬誰も声をかけられなかった。でも、それはほんとに一瞬。 「ラリー!」と誰かが呼んだら、ラリーはあっさり足を止めてくれた。もうそのまま、まっすぐ外に出ちゃいそうな勢いだったのに。 たちまちワタシたちは、群れになってラリーを取り囲む。サインをねだる。ワタシはわっかの外側から何枚か写真を撮って、それからスレインのDVDを差し出した。 ラリーは金色のペンを持っていて、黒いペンを差し出した人に「これがオレのペンだ」と言った。マジ? 用意してたの? んなわけないよね? 確かこれが、ワタシが聞いた初めてのU2メンバーの声。 あとで知ったんだけど、金色ペンはMさんが差し出したヤツで、「オレの」って言って持っていっちゃったんだって。 ラリーはまごうかたなき男前。金色のピアスも素敵。 ワタシが生まれて初めて貰ったU2のサインは、スレインのDVDケースの内側、観衆の群れに重なるラリーが書いた金の文字。 ああ、すごい。 この時が来ちゃったんだ。 ほんとにこんな近くに立って。 だって、手を伸ばせば触れるよ。失礼すぎてできないけど。 その時、誰かが叫んだ。
「ボノやあ!」 いや、いま思えば誰かってんじゃないよね。okazuさんだ。 声に振り向くと、そこにはいたんだ、いとしいしとが。 |

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