酔月亭

ブログを引っ越しました! 今後ともよろしくお願いします。

BONO in ......

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『BONO in conversation』のなんちゃって翻訳。ゆるゆると参りましょう。
あくまでなんちゃってですので、原書を傍らにお読みください。
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それはすごくおかしいことだと思うけど、同時にそれが秘密なんだろうね。だってきみは自分を愚か者にすることを怖れないし、ばかげた存在に見えることも怖れない。そうすることを疑ったことさえないだろう。
きみの友人のナイアル・ストークスが書いた「Into the Heart U2の歌に隠された物語」という本を読んでいるのだけれど、実を言うと彼が引用しているこの歌に覚えがないんだ、こんなラインの……「A picture in gray, Drian Gray……*」。
    *"The Ocean"『BOY』

ああ、うん、ファンタスティックだ!

「I felt like a star……」

「I felt the world go far if they listend to what I said. 世界がぼくの言っていることを聞いたら、見捨てられるような気がする。つまり、これは皮肉と、幾分かウィットも含まれてるけど、何か言うべきことがあるという思いなんだ。

ぼくはきみに成功してほしいと思っていた。きみに何か賭けた様なつもりになっていたんだ。
でも、ここまで成功するとはまったく思っていなかったんだよ。NMEに登場していた、ストリートで支持されることを誇りに思うような80年代のバンドのように、カルトな人気に留まるだろうと思っていたんだ。

ぼくはそういうものにはまったく興味がなかったよ。ゲットーから抜け出すということと、そこに入ることにはすごく大きな違いがあるからね(笑)。ゲットーは知的な場所だっていうのと、生まれ育った場所だっていうのとじゃ、まるで違って聞こえるだろ?

でもごらんよ、ボノ、きみは最も辺境であるダブリンの出身だ。きみは英語で語るけれど、誰もダブリンから出てきたとは思わないだろう。

シン・リジーのフィリップ・ライノットがいる。アイルランドのたった一人の黒人……そしてロック・バンドの一員!(笑) 彼は素晴らしいよ。

確かに彼は70年代の大物だね。でも、彼が唯一のきみのモデルかい?

ボブ・ゲルドフの存在にも励まされたよ。彼もダブリンの出身だ。

そうだ、君たちにはブームタウン・ラッツがいたね。彼らは偉大だ。このふたつのバンドが、きみに可能性を抱かせたのかな?

彼らはダブリンに住んではいなかった、アイルランドを出ていったってことが言いたいんだろ。正しいよ。フィル・ライノットもボブ・ゲルドフもロンドンに移ったし、ボブに至っては国籍も替えた。
で、ぼくはボブから多くのことを教わったんだ。ぼくの言葉の多くは、ボブから学んだことだよ。不可能を可能にするってことをボブから得たんだ。
おかしなことだけどね、社会運動については彼から学んだわけじゃないんだよ。もちろんそれについて話し合うことはあったけど。
ポップやロックはセックスや楽しみから外れることはないって、彼は言ってた。革命は政治家にとっといてやれ! 
彼は彼なりに、突然気がついたんだ。「これは単なるロックで、オレはこいつが好きだ」ってね。
ぼくらはぼくらのやり方を見つけなければならなかった。それで最終的にダブリンに留まることにしたし、それが世界に対抗するぼくらのやり方だったんだ。
他のどこかになんて属したくなかった。

ぼくは、きみたちが無垢だって思いを抱いてた。明らかにそうじゃなくても。
無垢なる場所からやってきた若者、シニカルな場所に率直さを持ち込んで、シニシズムに勝利した。
美しさというものは優雅に形作られ、消えていくって言うのは、たぶんフランス人のロマンティックな思いこみだったんだろうね。(ボノ、笑)ぼくはきみたちの飢餓感を過小評価してたよ。

ああ、ぼくたちのは満たされることのない飢えなんだ。
「Rattle and Hum」の頃、アダムがぼくに言ったことを思い出すよ。「見ろよ、俺たちはこんなとこまで来てるぜ。たいした努力もしてないのに」。
アリとぼくはいつも同じ問いかけをしてた。「ぼくらはリラックスできてるかな」って。ぼくは「うん、大丈夫だ。でもぼくらは一秒ごとに無意味になろうとしてる。意味のあるものになるってことは、成功するよりもずっと大変なんだ」って言ってた。
ぼくらがこの家を買うだけの金があるってことで、ぼくらの存在を判断しようとするなら、それは危険な基準だよ。
ぼくは、頭の中で聴いてる音楽にどれだけ近づけているか、どれぐらいもっている能力を実現させたバンドに近づけているかってことで、ぼくらのありようを判断するんだ。
それはまったく違うことだ。
ぼくは不幸せだった……だってぼくらはまだまだだって感じてたから。今はだいぶ近づいたよ。
まさしくぼくらのリーチが問題だってことは、いつもわかってた。右フックが6インチばかり足りないボクサーみたいなものだってのが、U2がいつも感じてたことさ。
一方でぼくらの内なる力はすごく早く目標のひとつに達したけど、いつだってリーチは思っている以上に短かったんだ。
お父さんは大家族の出身だったのかな。

兄がひとり、弟が二人、それに妹がいた。トミー、レスリー、チャーリー、イブリンだ。
素晴らしい人たちだよ。クリケットをやって、オペラを聴く。型破りな労働者階級だ。

彼は弟や妹の援助をしなければならなかったんだね。

そうだよ。そうなんだけど、父はカソリックだったし、母はプロテスタントだった……あるいはユダヤ教徒だね(笑)。あの頃はそれが大きな問題だったんだ。彼らの結婚は本当に許されたわけじゃない。

隠さなければならなかった?

いや、そうじゃなかったけど、場所によっては異議を唱えられたし、また別のところに行けば正当なものだと認められなかったりもした。

でも、彼らが住んでたのは明らかにカソリックのエリアだったんだよね? どうしてまたお母さんの家族みたいなプロテスタントが住んでたんだい?

さあね。
そのカソリック・エリアの中心に、小さなプロテスタントのコミュニティがあったんだ。父も母も宗教の違いを深刻な問題だと思わなかったし、どちらの教会組織もばかげた騒ぎで軟化したんで、母は日曜日ごとにぼくら兄弟を教会に連れて行き、父は外で待ってるってことになった。
宗教はしばしば神の道を辿るって感覚が両親から得たことのひとつだって、認めなければならないね。

母方のおばさんやおじさんはまだ生きている?

うん。母の兄弟はみんな生きているよ。父の兄と弟たち3人もね。

彼らはきみのお母さんが亡くなった時、きみの面倒を見てくれたのかな。

ああ。とりわけ二人のおばがね。
ルースおばさんは母とすごく親しかったし、バーバラおばさんは父とすごく親しかったんだ。

彼女たちはきみに愛情や助けを……

(質問を遮って)いや、ぼくは気づかなかった。まったく心を許してなかったんだ。ぼくはほんとにいやな子どもだったんだよ。
バーバラはすごくロマンティックな人だった。読書家だった。しょっちゅうぼくに代わって父に取りなしてくれた。
ルースはもっと現実的な人だった。ランキン一族のくそまじめ、って感じでね。

それで、お父さんがきみにひどく辛くあたる時には、彼女たちが守ってくれたのかな。

二人とも、父はぼくに厳しすぎるって思ってたよ。みんなそう思うだろうね。彼が充分に厳しかったかどうか、ぼくにはわからないけど(笑)。
だって人間ってのは自分自身に厳しくすべきだと思うからね。違うかい?
ぼくらはみんな自己愛の傾向があるだろ、ほんとにさ。自己愛と、自己嫌悪のね。

きみは正しいと思うよ。そのふたつは1枚のコインの表と裏だ。
ぼくらは自分自身に悩まされるものだ。みんな自分から始まって、自分に返っていく。行き詰まりの自己陶酔だね。

ある程度の自己陶酔は必要なんだと思うよ。自分の内側にため込んでいるものや、反応を見るためにね。
文章を書く時にさ、自分勝手になるのはしょうがなかったりするじゃないか。
きみはどうなの? つまり、きみは自分に陶酔してるようにも自分に悩まされてるようにも見えないからさ。

いつもそうなわけじゃないけどね!

でもきみは書くよね。なぜなんだい?

ああ、ぼくには他の表現方法がないから。
ぼくの口から出てくる言葉がぼくが使うべきたったひとつの言葉なわけじゃないんだって、時々信じるんだ。確信しないで何かを失うってことができないんだよ。

それは多分いいことなんだろうな。

うん、いいね。でもそれが言い訳になることもある。

ああ、うん。

仕事をしないための、さ……。

そうだね。しょっちゅう言い訳になるよ。
失敗もしなくちゃいけない。すごく大きなことだと思うな、失敗を怖れるってことは。
ぼくは失敗を怖れたことがないんだ。おかしいよね。
ぼくの父方をずーっと遡った親戚も、そうだったんだ。布製品を売ってたんだよ。

面白いね。服の取引だ。そうだろ?
ユダヤ系の話だね。ユダヤ人は偉大なる商人だよ……ぼくの母方はユダヤ人だったんじゃないかって誰かがほのめかしたことがあるんだ。Rankinはユダヤの名前だからね。家族のひとりが名前について研究して、思いついたんだ。

話さなくちゃいけないことがあった。きみがまだ若い頃の写真の1枚を見た時、ものすごく驚いたよ。だってぼくの父親に見えたんだ。

母方の一族はみんな、こんなテルアビブのタクシードライバーみたいな顔をしてるよ。

うん、暗い色の髪やなんかだね。初めてきみを見た時、なんだかすごく親しみを覚えたんだ。「ぼくはこいつに前にも会ってるな……」という感じの。

ぼくらのタクシーの1台に乗ったことがあるに違いないね。

ああ、で、ぼくの家族の誰かはきみにブーツを一足、売ったね。こういう一族共有の記憶をきみは信じる?

たぶんDNAに蓄積されるんだよ。
咳とか背中の痛みが父親や祖父から遺伝するよね。たぶんほかの文化的な嗜好とか興味も一緒なんだ。
そうは言ってもぼくはまだカバラの研究をしようとは思わないな。どうも聖書への信仰を失うみたいだし……それで救世主信仰を持つらしいから(笑)。
でもぼくがユダヤに関係する多くのことに興味があるのは本当だよ。もしぼくがユダヤの出身だってわかったら、すごく光栄だな。すごく嬉しいと思う。

可能性はあるね。

わからないけど、ロマンティックにぼくは本当にそうだったらいいと思う。

きみの母方の先祖はどれくらいまでさかのぼれるんだい?

彼らは突然現れたんだよ。

きみの両親はどうやって知りあったのかな。

ああ、二人とも同じ通りで育ったんだ。

ダブリン北部の?

うん。労働者階級のエリアだ。カウ・タウンって呼ばれてる地区だよ。カウパー・ストリート。家畜市場があったところだよ。田舎の牧場主が、家畜を町中に連れてくるんだ。
Dubs、つまりダブリンの都会に住む人間は牛糞の臭いに鼻をつまんで座って、下品なやつらだってこき下ろしてたし、Culchies、つまり牧場主たちだけど、彼らは彼らで自分たちの方がましな人間だと考えていたんだ。

お父さんの最初の職はなんだった?

父は14才で学校をやめたんだ。彼に教えていた修道士たちはぼくの祖母に続けさせるように頼んだけど。数年にひとりの出来のいい生徒だったからね。
でも彼は十五才で公務員の職に就いた。安定した職業だし、年金受給資格がもらえるから。定年退職するまでずっと職に留まったよ。
恐れは彼の人生の大きな部分を占めていたんだ。何が起こるかわからない、どんな間違いがあるかわからない、っていうことに対する恐れがね。それが彼の原動力のひとつだったんだ。
そして恐れは、きみも知っているように、信仰の対極にある。
彼の恐れの原因は父親にあったんだと思う。結核持ちだったし、1930年代の大恐慌も経験してるし、その他なんでもね。
結核はアイルランドでは数年前まで恥の源泉だった。貧者の病だから。で、彼の父親は結核持ちだったんだ。
明らかに多くの人がそうだった。彼らは痩せていくんだ。そして結核であることを隠す。
職場では体重を量るんだ。これは父が話してくれたんだけど、彼の父親は体重を量る時に靴に鉛を入れてたんだって。結核で死にゆくことも明かさなかったし、それで職も続けられた。
これはダブリンや他の多くのヨーロッパでかつて見られた、まさに最も恥ずべき光景だと思うよ。
でも、父のリスクに対する嫌悪は、彼が育ったこういう危機感に満ちた環境から来ていると思うんだ。

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あの日ぼくたちが見た夕日、ぼくの到着以来変わることのなかった光を言葉にするのは難しい。
雰囲気はとても穏やかなもので、暖炉のそばでジグソー・パズルでも始めてるみたいだった。
音楽や、一般的な芸術について書く時の使い古された言葉で言えば、それは霊感、インスピレーションだ。
U2の音楽がスピリチュアルな響きを宿すようになってから、「霊感によってつくられた」だとか「霊感を与える」だとか、しばしば呼ばれてきた。
これは私もしばしば自分に持ち込んだ神話だけど、あれからというもの、ボノがどうやって霊感を生みだすのかということが不思議だった。
彼は今でもそれを手に入れているのだろうか。それとも考えを暴露する準備ができているんだろうか。
とにかく彼は名声の神話をぶちこわしたいと切望していた。


ぼくは霊との交感を絶対信じないけど、何人かのミュージシャンは実際に声を聞いているんじゃないかっていうすごく素朴な考えがいつもあるんだ。

ああ、でもきみは人の言うことを注意深く聞く人じゃないか(笑)。でも、うん、きみは正しいよ。
世界は描写されることを要求してるし、それで、画家や詩人、ジャーナリスト、ポルノグラファーやシットコム・ライターたちは、偶然にか計画的にか、天からか地からか、いずれにしてもただ命令に従っているんだ。彼らがいる世界を描写するためにね。

きみが思いつくのは考え抜かれたものばかりではなくて、しばしばつまらないものだと、示唆してるよね。

その通りだよ。実際に、たいていのすごく感動的な音楽は、ちっともまじめじゃないんだ。知的なこととは違ってね。
70年代の音楽を考えてごらん。今ではフォークのひとつになってる音楽だよ。
70年代の音楽で継続してるのはポップとダンス・ディスコミュージックだった。70年代のまじめな音楽とされているフュージョンやプログレッシヴその他の、いわゆる偉大なミュージシャンによって演奏された音楽はひどく時代遅れになってしまった。
きみは正しいよ、Michka。魂は描写されるけど、神は期待通りに人を使うわけじゃない。

それはどこから来るんだい? きみがメロディを聴き始めるのは?

うん、ぼくは頭の中で聞くんだよ。どこから来るのかはわからない。

言葉と一緒に?

メロディだったり、言葉だったり……。(起きあがって机から黄色いポストイットを取ってくる)

それはなんだい? なにか書き留めてあるのかな?

最近の例を思い出そうとしてるんだ。昨日の真夜中だよ。なんと言うこともないんだけど。
(読みあげる)
    もしハートが辛くても、ましになると思う
    一度や二度しか壊すことはできない
    血を失ってしまえば、それを凍らせることができるから
……わからないな。(疑わしい顔をする)

悪くないんじゃないかな……。

うん……夢なのか、頭越しの会話なのか、いずれにしてもわからないな(笑)。

言いたいことはわかるよ。

きみにもこういうことがあったんだ。

うん、ぼくもある意味、そういう経験をするよ。ときどき今まで見たどんな絵よりも素晴らしい絵が見えるんだ。

でもきみはそれを取り出せない。

そうなんだ。だってぼくは画家じゃないからね。すごくがっかりさせられるよ。

ぼくがメロディに感じるのと同じだ。

でもきみはメロディを聴くことができるし、再現する力がある。

うん、でも取り出すことはできないんだ。わかるだろ? 言葉だったら書き留めることができる。でもメロディはコードで妥協するしかないから、難しいんだ。

きみにはエッジやバンドがいるじゃないか。

そうだね。でもバンドに会う時までにはどっかにいっちゃうよ。
(カップの中をスプーンでかき混ぜる)おかしいな……何年もこうしてないのに。

なんだい?

紅茶に砂糖を入れてしまったんだ。ぼくは砂糖を使わないのに。過去のことを話し続けてたら、そっちに戻っちゃったみたいだ。ぼくら、どこにいたんだっけ?
ああ……メロディだね。ぼくにはそれを聴くための耳はあるよ。名案を見つけるみたいなものなんだ。
素晴らしい考えってやつはたいてい、素晴らしいメロディとおなじ一般性を持ってるからね。
確かな必然性、確かな清らかさ、すごく覚えやすいもの。哲学的にも商業的にもなりうるもの、あるいはDrop the Deptのような政治的なアイデア。
さっききみに話したようなことだよ。ぼくは自分をメロディとアイデアのセールスマンだと考えてる。母方のセールスマン一族の長いラインの出身だからね。
お父さんとの関係について、何が最も罪深かったと思っている?

大きな点は、彼がすこぶるひどい子どもを扱っていたって思うことさ。まったく簡単にはいかないし、とくに彼はすべてひとりでやろうとしたからね。
ぼくが思うに……腹立たしいのは……たぶん最後のほんの数週間になってやっと手放すことができた、父と息子の間の緊張みたいなものがあったんだ。
父が死んでから、まだぼくは自分自身に戻っていないって、攻撃的で怒りっぽくて、まるで父のそういう面を見せているようだってアリが言ったよ。
イタリア人は長い時間を喪に費やすよね。一年間も黒い服を着るだろ。
父が死んだ時、「酒飲み遠足」と称して短い休暇を取ったんだ。酒に溺れるのが好きなわけじゃない――何にしても溺れるとあとで痛い目に遭うからね。でも、ぼくは酒を飲みにバリに行ったって言うのが正しいだろうな。
友人のサイモン(・カーモディ、脚本家)と一緒に、ただ逃げ出したんだ。父の死を少し吹き飛ばしたくて、背中に張り付いてるものを降ろしたくて。
でも帰ってきた時、すごくおかしいんだけど、まだそこにあるんだよね。ぼくの周りを取り囲んでいるような気がしたよ。
それで、ちょうどイースターの日に、フランスで住んでいる小さな村の教会に行って、やっと手放せる時が来たんだと感じた。
イースターの前の週に感情の火山が落ち着いて、ぼくはただ見つけたかった。それが一体どこから来たものなのか、知りたかった。
その小さな教会で、イースターの朝に、ぼくはただひざまずいて、父に対して抱いていた怒りを手放したよ。そして、彼をぼくの父にしてくれたことと、父を通してぼくに贈り物を与えてくれたことを神に感謝した。それで、怒りを手放せた。
ぼくは泣いた。やっと背中に張り付いていたものが取り除かれたと感じた。

すべてがいちどきに?

思うに『How to Dismantle...』は、そういう溜まってたものを全部はき出させてくれたんだ。原子爆弾、それはぼくにとってはまさに父なんだ。
"Sometimes You Can't Make It On Your Own"は彼のための最後の曲なんだ。葬式の時に歌ったんだよ。

 (歌わずに暗唱する)
    タフだって、あなたは自分のことをそう思ってる
    すごく厳しい人間だって、ぼくに対しても、みんなに対しても言ってたね
    でも、闘わなくたっていいんだ
    常に正しくなきゃいけないわけでもない
    今夜はあなたに向けられたパンチをいくつか、ぼくに受けさせてよ
    ぼくの話を聞いてほしい。わかってほしいんだ、ひとりでやらなくたっていいってことを
    時には自分でできないことがあるんだってことを

50年代ぽい、フィル・スペクターの詩みたいだろ。
レコードには使わなかった詩があるんだよ。

    ぼくがシダーウッドの町の少年だった頃
    ただのよい子じゃ充分じゃなかったから、グレートになりたかった
    今は年をとったけど、物事がよく見えるようになったわけじゃない
    遠く、遠く離れてしまったけど、ぼくたちは今、すごく近くにいるね
    ひとりでやらなくてもいいって、わかってほしいんだ
    時にはひとりでできないこともあるってね

それで、素晴らしいミドル・エイトに入っていくんだ。叫ぶように歌うところだよ。

    あなたこそ、ぼくが歌う理由
    ぼくの中にオペラがある理由
    今でもまだ、家があるだけじゃ家庭にはならないって、わかってほしい
    ぼくをひとりきり、取り残さないでほしい
    あなたひとりじゃできないこともあるんだ

これが終わりまで続くんだ。
単純な曲だよね。でもこれが、ぼくはそう願ってるんだけど、彼について書く最後の曲だよ。

お父さんは本当はきみの仕事について、どう思っていたと思う?

ぼくがどう考えてるか、話そう。
魂の旅ってやつは、父にとってすごく興味深いものだった。彼は信じる者ではなかったからね。死に向かうに連れて、彼は神を信じなくなった。彼はカソリックだったけど、だんだんに信仰を失ってしまったんだ。

彼に信仰を失わせた特別なできごとがあったのかな?

それが何だったのか、ぼくにはわからない。教会が彼を消耗させたんじゃないかな。スキャンダルとか、その手のもので。
ぼくはバイブルをあげただろうし、彼が興味を持てば、福音書のぼくの解釈とか、それがどういうふうに書かれたかとか、特定の一節の文脈とか、そういう話をすることもできた。でも彼はついにそういうものを受け入れなかったんだ。
彼はまだ、ぼくが祈りを捧げることが、すごく重要なことだと考えているように見えた。実際、バンドに関して彼が最も好きだったのはそれだからね。つまり、ぼくらの信仰だ。
彼は90年代のぼくらの作品のいくつかを理解しなかった。不信心なものだと思ったからだよ。

U2ファンたちのある人々も、90年代のレコードには同じように感じていたね。

その通りだね。彼らにはわからなかったんだ。
『Pop』には神との強い絆が書かれてると思うんだけど。

    ぼくの魂を救う手だてを探してくれ
    どんな花も育たない場所で
    神の形をした穴を埋める手だてを探してくれ

これはすごく面白い詩なんだ。本物のブルースだからね。ロバート・ジョンソンから来てるんだよ。マシン・エイジを通して、やかましいテクノの音を通してるけど、そこにあるのは同じ切望なんだ。
でも、彼にはわからなかった。たくさんの人々にわからなかった。なぜなら彼らはそれを感じたいのであって、考えたかったわけじゃなかったからね。それが違いだよ。
彼がそう考えていたように見えることが重要だったんだ。
父はいつもぼくにこう言った。「道を失っちまったんじゃないのか?」。
ぼくはこう答える。「誰が聞いてるんだい? あなたのこと? 失うべき道なんか持ってないじゃないか!」。
日曜日、ぼくらはパブに行って一緒に酒を飲んだ。ぼくらはウィスキーを飲んだ。アイリッシュ・ウィスキーだよ、もちろん。
時たま、彼は本気で質問するんだ。本気で答えなきゃならないようなね。それはいつだってぼくの神への信仰についてだった。
「ひとつだけお前が羨ましいことがある。他はまったく羨ましくないんだが」。
彼は一度、そう言った。
でも、考えてもみてくれ。ぼくは歌ってたし、彼がそうしたいと思い、愛してたすべてのことをやってた。創造的な人生ってやつをおくってたんだ。
彼は言った。「お前は神と関係を結んでるように見えるな」。ぼくは「父さんはそうしたことがないの?」と聞き返した。「ないね」と彼は答えた。
それで、ぼくは言ったよ。「でもあなたは人生のほとんど、カソリックだったじゃないか」。
「うん、まあ、たくさんの人間がカソリックなんだよ。それは一方通行の会話だ……でもお前は、沈黙から何かを聞いているように見えるな!」
「うん、そうだよ。聞こえるんだ」と答えると、「どんな感じなんだ?」と聞いてくる。
「なにか本能的な方法で聞くんだ。祈りへの応答を感じたり、進むべき方向への導きを感じたりするよ。聖書の勉強をしていると、それらが奇妙に生き生きしてくるし、ぼくがいるこの瞬間のこともわかっているように感じる。ただの歴史の記述じゃないんだ」
彼はこの言葉に心を打たれたんだ。

じゃあ……彼はきみを信心深いと思ったのかな。

信心深い人間だって書かれるような生き方ができたらと思うよ。
ぼくはそういう訓練をしてないから、説教はできない。ぼくが神にとってのいい宣伝塔じゃないことは明らかだね。アーティストってのは、自分勝手だから。

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