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目次:割愛(長いので) 文庫本の第1刷が比較的手が届きやすい場所におっ転がっているのになぜか読んでいなかった。その上1巻は本屋で見かけて衝動買いし(家にあるということをはっきり覚えていなかったので)、買ったその日におそらく電車の中でなくした。 結局家にあったものを読んだのだが、だいたいワタシは、過去に司馬遼太郎の作品を読み切った覚えがない。読み始めた本があったかどうかも曖昧だ。さすがに本書は最後まで読んだのだが……。 (司馬遼太郎のファンの方、どうぞこの先を読まないで下さい。 ワタシがU2についてこんなふうに書かれた記事を読んだら、きっと気分が悪くなります。 もしくはすっ飛ばして、下の方から読んで下さい。 そしていやな予感がした時点(すぐか……)でウィンドウを閉じて下さい。) まず第一に、1巻の3分の2を過ぎないとアイルランドに辿り着かない。この時点で1巻は書名を「愛蘭土への紀行」に変更すべきでないかと思う。 第二に、その後もしばしば記述がさかのぼって島の外に出てしまう。いっそ2巻も含めて「愛蘭土への紀行」としてはどうか。 第三に、どうもこの人の人物の描き方になじめない。アイル内のドライバー件ガイドのライリー氏など、司馬氏抜きで知りあいたいと思うくらいだ。 第四に(これは司馬氏の責任とは言えないが)経済的に低迷の底にあった時期のアイルランドなので、そこに同情しつつ「経済とは無縁に、私たちのユートピアとして」的な未来を描いているのがどうも気にくわない。 中でも読んでいて一番気に障ったのが第三の点なのだが、いまパラパラっとめくっただけでも目に付いた記述があった。アラン島におけるくだりである。 「お前たち、日本人だろう」 この顔をみればわかるはずだのに、大声は無用ではあるまいか。 1.ではあなたにアイルランド人とスコットランド人の見分けはつくのか。 2.もしくはあなたに日本人と韓国人の見分けはつくのか。 3.「お前」と「きみ」のこの場合の違いは。 4.アラン島という風が強い場所に生きる人々に日常的な大声は無用か。 5.貧しい国の、さらに貧しい島にすむ人たちのたつきを想像してほしい。出稼ぎに行くプロレタリアートか、さもなくば漁師か……どちらも聴力が弱りやすい状況におかれはしないか。前者は機械音で、後者は海風で。 こんな調子でよく読み終えたものだと自分でもあきれるが、そこはさすがに司馬氏である。アイルランド文学ガイドとしては参考になった点も多い。 イエイツ、ジョイス、ハーンに関する記述はもちろんだが、懐かしいロード・ダンセイニについて書かれているのが嬉しい。ジョイスの『ユリシーズ』に二の足を踏み続けて十数年というワタシだが、『ダブリン市民』を読もうかという気になる。ボノも行ったというジョイスタワーにも上りたいし。 結論その1 初めてアイルに行く前にこの本を読んでいなくてよかった。また、『物語 アイルランドの歴史』の前にこの本を読んでいなくてよかった。 結論その2
乱暴を承知で、2巻からの読書をおすすめしたい。 |
読んだ?
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年々読書量は減ってるような気が…
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目次: 序章 古代アイルランド 第1章 中世アイルランド 第2章 イギリスによる植民地化 第3章 近世初期のアイルランド 第4章 カトリック教国アイルランド 第5章 アイリッシュ・ナショナリズム 第6章 独立運動の高揚 第7章 アイルランド自由国から共和国へ 終章 戦後のアイルランド ワタシのアイルランドへのアプローチは圧倒的に文化・文学の面からで、まあそれも「ケルト展」とか民話・神話のたぐいがほとんどだったりで、要するに生ぬるい。イギリスとの関係もおぼろげに知っているだけで、近・現代史について知っていることはほとんどない。せいぜいダブリンのオコンネル・ストリートにたってるオコンネルさんは革命の英雄らしい、とか。 (だからほんとはU2の背景としてのアイルランドだって、雰囲気を感じてるだけだった。) 今回アイルを再訪するに当たって、どうしたってこのまま行くんじゃしょうがなかろ、と思い、家に転がっていたこの本を読んでみた。 驚いた。「アイルランド共和国」が正式に成立したのは、なんと1949年のことである。うちの母ちゃんよりも若いじゃないか。 ちなみに前回訪ねた時の予習テキストは『アイルランド・パブ紀行』だった……いい本ですよ。 筆者の波多野氏は1990年から3年間、駐アイルランド大使を務めた外交官である。赴任にあたってアイルランド関連書を求めたところ、包括的な理解に役立ちそうな本が見つからなかったのが、本書執筆の一因であったと書かれている。
たぶん1989年前後だったと思うが、日本におけるアイルランド年だかそれに類したものがあったと思う。その時期には日本人は国際運転免許がなくても(日本の免許があれば)車に乗れるというので驚いた。なんでこんなことを知っているのかというと、そしてうろ覚えなのかというと、図書館でよんだアイルランドのパンフレットの記憶だからだ。そこにそんなパンフレットがあったのも「アイルランド・キャンペーン」の一環だったのだと思う。 たとえ一時期のことにしても免許なしでいいというくらいの関係にあったにもかかわらず、確かにアイルランド関連の書籍は少ない。その中にあってこの本は、確かに包括的にアイルランドを捉えるのに適した一冊だと思う。 読み通すまでの間、何度も悔し涙がにじんだ。アイルランドの歴史を知ることは、イギリスによる搾取の歴史を知ることに等しいからだ。ヨーロッパのパワーバランスに翻弄されながら、過酷なまでの搾取に耐え抜き、独立国となったこの国に対する尊敬の念は、以前とは比べものにならないほど大きい。 この本が書かれた1993年は、アイルランドが徐々に国力をつけ始めていた時期に当たるのだと思う。本書の最終章を締める「アイルランドはいま古いケルトの国から脱皮し、新しいヨーロッパ統合へ進む一員として、希望に満ちた未来に向かって着実な第一歩を踏み出している。」という一文は、まさにアイルランドの現在を予言している。 |


