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***滴の宝石***花滴(はなしずく)***
小説**独り言*****水滴石穿*****

書庫短編小説・玉滴

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短編小説・たましずく

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初恋の人。朋子は夏の終わりに静かに逝った。
18歳の誕生日前だった。

窓の外で、花びらの先で、膨らんでいた水滴がひとつ
 こらえきれずにポトリと落ちた。

胸を患い、2年間の入院闘病の後である。
朋子は何時も窓から外を眺めるのが好きだった。
窓際には、大きく枝を伸ばした、季節外れの桜の古木が在る。
側に立つ名も知らぬ木は、今も花を付けていた。
木の葉や花びらから滴る、水滴のふくらみが美しいと、
「見て!ほら、見て御覧」と、よく僕を誘った。

異存はない。玉滴を見るのは僕も大好きだった。

朋子が、楽しそうに、水滴の玉を見てはしゃぐ姿は
美しく、可愛かった。

魚座に生まれたせいか、僕は子供の時から水が好きだった。
泉も川も、滝は勿論、池も湖も海も、
雨や水溜りさえ楽しむ方だった。
勿論噴水も大好きで、トレビの泉も見た。

水が最も愛らしく、輝きを放ち、美しいときは
花びらから滴る寸前の、水滴の玉である。
シャボン玉のように、周りの景色を映し込み、
震えながら膨らんでくる。
後何秒かで尽きる命の、張りつめた煌めきは、
華やかな花火や、漁火にも、勝ち目は無い。

僕は
名優がつぶらな瞳より、はらりと落とす涙より。
チャンピオンが、流す歓喜の一粒より
滴る寸前の玉滴が好きだ。

是に勝るものは

 
 朋子だけだった。


朋子は玉滴と仲良く
一緒に逝った。



おわり


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安芸茂
安芸茂
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