ここから本文です
すみだ山の会のブログ
随時 新規会員募集中

書庫全体表示

[南アルプス 農鳥岳 北東尾根]
〔日程〕20181230 日(日)〜201913 日(木)
〔メンバー〕佐久山の会:I 田(CL)、M泉、A川、東京さわらび山の会:S
大阪カランクルン:S木、S藤、墨田山の会:Y嵜(記)
〔コースタイム〕
1230日 晴れ〈510〉夜叉神ゲート〈800〉野呂川発電所ー〈1200〉尾無尾根取付ー〈1500〉荒川本谷幕営地
1231日 晴れ〈645〉荒川本谷幕営地ー〈805〉北東尾根取付ー〈1450
2500m付近幕営地
11日 晴れのち雪〈6152500m付近幕営地ー〈950〉農鳥岳ー〈1300
2500m付近幕営地
12日 雪のち晴れ〈6552500m付近幕営地ー〈1030〉北東尾根取付ー〈1350熊ノ平幕営地
13日 晴れ〈710〉熊ノ平幕営地ー〈915〉野呂川発電所ー〈1120
南アルプス林道ー〈1300〉夜叉神ゲート
 
1230430分。夜叉神峠駐車場に到着。I田リーダー、M泉両氏はすでに車のバックドアを開け準備を始めている。いつものように食料と酒を受けとりザックにしまう。重いものを持たされることを見越して、小さめのザックを持ってきたことをリーダーに見抜かれる。免罪符としてコンパクトなスリーシーズン用シュラフを持ってきたのだ。これで勘弁してもらおう。 5時すぎに出発。夜叉神トンネルは封鎖されているので横の扉から入る。黄泉の国に続いているのではないかと思われるくらい長いトンネルだ。上から水が滴っている箇所があるが、地面に広がる水溜りは凍りついていない。その後もいくつかの短いトンネルをくぐりながら、退屈な林道歩きがしばらく続く。

 630分、鷲ノ住山登山口に到着。登山口といっても林道の標高が高いので、頂上まではほぼ水平移動だけで着いてしまう。野呂川発電所への下りはやや急坂となっている。
積雪はなくアイゼンの出番はなし。

 8時、野呂川発電所の手前で吊橋を渡り、荒川本谷に入る。発電所を管理するためなのか、途中まで舗装道路が造られており、今も上流へ向かって延伸工事が行われている。
川の石には滑りやすい茶色い苔がついているので、アイゼンを履いて水深の浅い箇所を数回渡渉する。途中には大きな堰堤が2箇所あるが、偵察の際に梯子やロープをかけておいたので難なく通過する。
2番目の堰堤を越えると一段と川幅の広い場所に出る。川はその先で大唐松尾根から注ぐ南沢と出合い、大きくS字を描いて上流へと続いている。S字の中には滝があり遡行困難なため、カーブの手前で正面の弘法小屋尾根に取りつく。うっすらと雪のついた急登を登りきると、唐松林の中に熊ノ平と呼ばれる平坦な場所が現れる。テン場に最適だが、この先の尾無尾根を越えて荒川本谷に下りるまでが今日の行程なので素通りする。

12時、熊ノ平から下り、細沢に造られている発電所の取水口を渡って尾無尾根に取りつく。以前はここに吊橋が架けられていたそうだが今はなくなっている。尾無尾根を貫通して荒川本谷に抜けられる坑道も、今は扉に頑丈な鍵がかけられ利用することは出来ない。
 取水施設の脇の短い急登を登りつめ、尾無尾根の稜線に乗る。最初に痩せた岩稜があり、次第に針葉樹林の中の平凡な尾根に変わる。1600m付近から稜線を外れてトラバースし、視界が開けたところで比較的緩やかな谷筋を下降する。緩やかといっても最大傾斜は45度以上あるので落ちれば当然止まらない。リーダーの指示でザックからロープを取りだす。近くの太い木に支点を作り、ロープの末端を自分の体に結ぶ。リーダーのビレイで下降開始。先頭で下りるのは下への落石に気をつけなくていいので気が楽だ。傾斜が緩くなったところでロープを解き、末端を木の根っこにフィックスし、残るメンバーがロープを伝って下りてくるのを待つ。テン場はこの斜面を下りきったところにある。一人目のM泉氏が下りてきたところで、全員が下りてくるまで時間がかかりそうなので、残り1ピッチくらいの緩傾斜を下り始める。丁度落石の通り道になるような場所に差し掛かったところで、上から二度「ラク!」のコールがあり、ハンドボール大の石が近くを落ちていった。

15時、荒川本谷の幕営地に到着。ボルダリングが出来そうな巨岩のそばが平坦地になっている。テントを持っている人が下りてくるまで、一足先にスコップで雪面を整地する。
目の前が川なので水の心配はない。
最後にリーダーが下りてきて、先ほどの行動についてやんわりとお叱りを受ける。他のメンバーを待たずに下りてしまったことが不味かったのだ。どんなに注意しても落石は起こるものだ。したがって下りてくる人間がいるときには、落石の危険地帯の外で待っているべきというもの。確かにその通り。軽率な行動を反省する。
二張りのテントを張り終え、M泉氏を筆頭とする炊事班と何もしなくていい楽ちん班に分かれる。この班分けで一日ごとに炊事担当を交代する方式だ。今日の僕は楽ちん班なので一方のテントの中でS原、S藤両氏とビールを飲み、つまみをかじりながらおしゃべりしていれば、いつの間にか食事が出来上がっているという素晴らしい日なのだ。
隣のテントから「出来たよ〜」とコールがあり移動する。メニューはもちろん定番のしゃぶしゃぶ。タレはポン酢でいただく。肉に白菜、椎茸、そしてシメに餅を投入する。酒は5年ものの泡盛。「古酒(くーす)」というらしい。甘みがあって飲みやすい。アルコール度数は35度だとか。すぐに酔いが回って呑めなくなり就寝。

 1231日、4時起床。作ってもらった雑炊を食べる。
645分、北東尾根に向けて出発。何度か渡渉があるが凍ったところをうまく渡り濡れずに済む。
 805分、北東尾根取付に到着。最初はルンゼ状の窪んだところを登る。50度くらいの急登で途中にアイスも出てくるが、階段になっているので登りにくさは感じない。A川氏が手こずっているのでリーダーがロープを出すと言って稜線まで登っていく。立ち木に支点を作りロープをたらし、それを伝って稜線に出る。

ここから先は幅の広い尾根が続いている。事前の偵察では2200mまでしか登っていないので、その先がどうなっているのかはわからない。この尾根は距離が短いので全体的に傾斜がきつい。地図上では2450m付近に緩やかな場所があり、そこを今日のテン場にする予定だ。取付の標高が1750mくらいなので約700mの登りとなる。登りながら下山時に迷わないよう、所々木の枝に赤テープを結びつけていく。後ろを振り返れば辻山や鳳凰三山、右手には間ノ岳が見える。積雪は足首から膝下くらいまで。さらさらの乾雪だ。


1450分、2500m付近の幕営地に到着。樹林の間から甲府盆地が望める適地を見つける。雪を整地するが、さらさらなのでいくら踏んでも安定した平面にならない。二つのテントの間に30cm くらいの段差があるので、リーダーが長い倒木をあてがい崩れないように補強する。
ここで二泊するのでできるだけ快適に過ごせるよう丁寧に土台を作る。 
 今日は炊事班なのでビール片手に水作りを始める。同じ班のS籐氏は仙醸の「年とり酒」という日本酒を振舞ってくれた。口に入れた瞬間ふわっとフルーティーな香りが鼻に抜け、口当たりはとても軽やか。まるでジュースのようにグイグイ呑めてしまう。リーダーが「これは危険だな〜」とこぼす。酒に不慣れな僕にはその真意が理解できていなかったのだが、この数時間後に身をもって痛感することになる。
 水を14 リットル作り終え、豚汁作りにとりかかる。といっても、すでに切ってある具材を鍋に入れ、味噌を入れるだけなので簡単だ。酔っ払っていてもこれくらいはなんとかなる。適当に具を入れ味噌かカレーを入れれば、とりあえず食えるものにはなるのだ。

隣のテントに声をかけ、団欒して楽しい食事タイム!…のはずだった。いや、厳密に言うなら食事は十分に楽しんだ。問題は食後に起こったのだ。ビールから始まり、日本酒ときて、泡盛に辿り着いたとき、車のギアを5速から3速に落としたように急に気分が悪くなった。

何度か生唾を飲み込んだあと堪らずに、胃の中のブツを残らず吐きもどしてしまった。
さっきまで「美味しい!美味しい!」といって食べていたそれらを、左手に持っていたコッヘルに勢いよくぶちまける。受け止めきれなかったブツたちは銀マットへとグランドフォール。直後に第二波が来たとき、横にいたリーダーがとっさに自分のコッヘルでナイスキャッチ!このファインプレーのおかげで被害は最小限に抑えられました。めでたしめでたし。
コッヘルの中身も、こぼした内容物も、周りにいた人たちの適切な処理のおかげで迅速に片付けていただき、もう足を向けて寝られないので、シャチホコのように寝ようかと思うほど感謝した夜でした。

114時起床。軽い頭痛を抱えながらむっくりと起き上がる。今日はテントを撤収しなくていいので楽ちんだ。ゆっくりと朝食を摂り、身支度を整える。アタックに必要な最小限の荷物をザックにつめる。頭痛はいつの間にか消えている。身も心も軽やかだ。胃腸の調子も抜群だ。おまけに天気は快晴だ。

 615分、アタック開始。先頭を交代しながらの腰ラッセルから始まる。さらさらの雪を崩さないよう慎重に足を乗せる。樹林帯を抜けるとウインドクラストが現れる。硬いと思った雪面を踏み抜いたりして、ラッセルとは違う意味で消耗する。
振り返ると富士山の左側から初日の出が昇っているのが見える。
イメージ 1

北岳や間ノ岳がオレンジ色に染まっている。この尾根から見る北岳は尖っていてかっこいい。前を見上げると、これから向かう尾根の上部には雪煙が舞っている。急な雪壁や痩せたリッジもちょこっと出てくるが、全体的には幅の広い歩きやすい雪稜だ。岩壁登攀はない。
イメージ 2

頂上直下になると上部に雪庇が張り出していて、その下の斜面は雪崩れ落ちた部分と残った部分とで、はっきりと段差が出来た雪面になっている。その斜面の真ん中を僕が先頭でまっすぐ登っていると、後ろにいたリーダーから右に寄れと指示が出る。
イメージ 3

上部の雪崩れずに残った部分が雪崩れてくるかもしれないからだ。雪庇の崩壊もあるかもしれない。指示通り右に寄りながら稜線に出る。山の反対側の景色が目の前に広がる。塩見岳や悪沢岳、赤石岳を眺めながら悠々と山頂標識まで歩く。

950分、農鳥岳山頂に到着。メンバーと握手を交わし、登頂の喜びを分かち合う。北岳から縦走してきた若者に集合写真を撮ってもらう。
イメージ 4

山頂は思ったほど風が強くない。 
少し下ったところで大休止をとり下山を開始する。
 
 13時、テン場に到着。炊事テントに荷物がある関係で、今日も炊事担当は僕らになる。
メニューはみんな大好きカレーライス。水を入れすぎて薄まっても満腹保証のカレーライス様だ。残っていた「年とり酒」をちびちびやりながらのクッキング。隣のテントにいるS木氏が焼酎いるかと聞いてくるが、酒はまだ売るほどあるのでリーダーが断る。今日は吐くわけにはいかないのでペースを気にしながら呑む。S籐氏が「やわらぎ」と称して白湯を作ってくれる。酒と交互に白湯を飲むというテクニカルスタイルを伝授してもらう。
ちょっと外の空気を吸ってくればと、S籐氏や他のメンバーも警戒しているので、気持ち悪くはないが言われたとおりにする。外に出ると細かい雪が降っている。心配するほどの量ではない。間ノ岳が見えるところまで歩いていって、その堂々とした山容にしばらく見とれる。テントから僕を呼ぶM泉氏の声が聞こえたので、振り返って「生きてますよ〜」と返事してテントに戻った。

 12日、4時起床。予定では今日下山なのだが、この場所から夜叉神まで帰るとなると日没になってしまう可能性大なので、予備日を使い熊ノ平でもう一泊することになった。日が昇るとともに雪も止んだ。積雪は20cm くらい。トレースは微かに残っている。農鳥の頂上は雲に覆われているが、テン場付近は晴れてきた。朝食を済ませテントを撤収して下山を始める。 登るときに付けてきた赤テープとうっすら残ったトレースを頼りに下る。尾根の幅が広いのでルートは慎重に見極めなければならない。

 10時、北東尾根取付手前のルンゼ状斜面に到着。事前の打ち合わせでロープを出すことになっていたのでザックから取りだす。木の根っこに支点を作り、リーダーのビレイで僕が最初に下りていく。ロープが伸びきったところで簡易ハーネスに結んだ末端を解く。
丁度斜面の中間あたりだ。側壁から流れた水が凍りつき、でこぼこの滑り台を形成している。落石が起きるとここは通り道になるが、良さそうな退避場がないので用心する。
M泉氏、S籐氏、A川氏と続々と下りてきて、次にS木氏が下りてきたとき、「キャーー!!」という悲鳴が谷底にこだまする。何事かと悲鳴のほうを見上げると、A川氏の足にS木氏のアイゼンが食い込んでいたのだ。スパッツは破けていないようだが、相当痛かった模様。 S木氏はそれ以前にもM泉氏のカッパにアイゼンを引っ掛けて破いている。にもかかわらず、当人はいつもけろりとしている。フレンドリーではあるが近寄りがたいデンジャラスなおじさまなのだ。

 1030分、北東尾根取付に下りてきて小休止。この先は熊ノ平に向けて荒川本谷を下降するが、尾無尾根の乗越をどうするかとリーダーに聞かれる。つまり、本谷を下れるところまで下れば、尾無尾根の低いところを登れるので楽ができる。しかし、このルートは沢の状態によっては引き返す可能性も含まれている。一方で往路を忠実に辿った場合、また落石の多いザレた急斜面を登り返す羽目になる。
前者は偵察では通っていないルートなのでなんとも言えないと答える。行ってみようとリーダーが言うので本谷を下ることにする。何度か渡渉があるが慎重に渡渉点を探せば濡れずに渡れる。両岸の岩壁がそそり立つS字カーブの手前で尾無尾根に取付く。少し登ればすぐに稜線に出られる。こちらのルートで正解だったとみんなが口をそろえて言う。

 1350分、熊ノ平に到着。テント設営班と焚き火班に分かれる。リーダーが渡渉に失敗して濡れてしまったのでガンガン燃やして暖をとる。手前の細沢で水を汲んできたので水作りの心配はいらない。焚き火を囲んで酒を呑む。ここは山屋のオアシスだ。今日は炊事班ではないので、酒を呑みながら夕食が出来上がるのを待った。

 13日、4時起床。寒くてあまり寝られなかった。入山からすでに5日目なのが信じがたい。山の中は竜宮城のようだ。もしかしたらまだ初夢の続きなのかもしれない。ほっぺたをつねる。痛い。スマホの画面を見る。「13 日 木曜日」、夢ではなさそう。今なら玉手箱を開けた浦島太郎の気持ちに寄り添える気がする。朝食のラーメンをすすりながら感慨に耽る。

 710分、熊ノ平をあとにする。往路を忠実に戻り、鷲ノ住山の急登で何人かの入山者とすれ違った。きっと北岳に向かうのだろう。林道をしばらく歩いて振り返ると、間ノ岳にかかっていた雲はほとんど消え、シルクの真っ白な布でも被せたみたいに輝いていた。左側には北東尾根がぎりぎり見える。農鳥岳の頂上にダイレクトに伸びている素直な尾根だ。

 13時、夜叉神ゲートに到着。A川氏、S籐氏、S原氏、S木氏の四名と、帰りに桃の木温泉に立ち寄る予定だったが、行ってみると改装工事のため休業中の張り紙。芦安温泉に変更し、5日分の汗を流して帰路についた。

顔アイコン

顔アイコン・表示画像の選択

絵文字
×
  • オリジナル
  • SoftBank1
  • SoftBank2
  • SoftBank3
  • SoftBank4
  • docomo1
  • docomo2
  • au1
  • au2
  • au3
  • au4
  • 名前
  • パスワード
  • ブログ

本文はここまでですこのページの先頭へ
みんなの更新記事