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年金フェイク

 東洋経済今週号は「年金大激震」特集である。
 実は東洋経済は、6月15日号でも「50歳からのお金の教科書」という特集をしている。西原理恵子と村上世彰が登場し、銀行預金や賭博よりも証券投資がお得、と勧める「異色対談」である。なんのことはない。6月3日の金融庁金融審議会に合わせた「高齢社会における資産形成・管理」報告のための提灯記事である。雑誌特集が数日でできる筈がなく、金融庁とマスメディアは、周到に事前準備をしていたのである。
 それが世間の大問題となり、釈明のために慌てて出したのが今週号の特集、ということになる。金融庁を間違ったメッセージを出したと責めながら、東洋経済はお得な年金情報を出す国民の側に立つ雑誌です、一緒にしないでね、という訳だ。しかし、中身は、政府の年金100年安心を補強する内容でしかない。つまり、マクロ経済スライドは正しいし、繰り下げ年金すれば減額を回避できるとしている。オバカの上塗りである。
 付け焼き刃だからボロが出る。というか、編集部に年金を理解する人がなく、誰かの、たぶん役人の受け売りだから間違えてしまう。あるいは、だまされたふりをして役人のための偽情報を垂れ流す。
 30頁から35頁にかけて、クイズ12問というのがある。
 Q3,マクロ経済スライド制で将来世代の給付水準はどうなるか?
 A,増える。世代間の給付配分の変更であり、積立金の増加や取り崩し減少で将来世代の給付水準は引き上げられる。
 Q5,将来世代が、受給開始年齢を3歳遅らせると給付水準はどうなる?
 A,現在の高齢者より給付水準は上昇する。
 中にはまともな分析もあるのだが、マクロ経済スライド制は正しく、将来世代の年金は盤石であるとするこの部分はインチキそのものである。フェイクの見本のようである。
 まとめて指摘すると次のようになる。
 将来世代の給付水準はマクロ経済スライド制の導入で確実に低下する。所得代替率を62.7%から50.6%に下げていく仕組みなのだから、下がらずには置かない。将来の日本人所得が激増すれば、絶対額としては現行世代より増えるかもしれないが、そのような僥倖はまずないだろうし、相対的な割合としては低下せずにおかない。
 東洋経済は、将来世代の給付水準が引き上げられる根拠として、積立金というパイの配分の変更があるからだとしている。つまり約190兆円の積立金を、現在の高齢者のためではなく、将来の高齢者のために用いるようにするからというのである。しかし、Q6で吐露しているように、積立金は給付財源の9%を占めるに過ぎない。小さな一部分にすぎないパイの配分を変えたとしても、全体の給付額を増減させることなど不可能である。
 編集部はおそらく、パイというのは総収入のことであって、積立金に限定されるものではないとの言い逃れをするつもりなのだろうが、無効である。財源の71%は保険料であり、20%は税金である。将来世代の給付の91%は将来世代の負担によって賄われるのであり、現在の高齢者から移転させることなどできない。
 現在の高齢者はマクロ経済スライド制の影響をほとんど受けず、将来世代こそが減額を完了した給付額を受忍させられる。減額の悪影響は将来世代にとってこそ甚大なのであり、「年金カット法案だ」という野党の批判は正しい。制度を理解していないのは東洋経済の方である。将来世代はインチキ情報にだまされることなく、野党を応援するべきである。
 このようなインチキはQ5で極まる。将来世代が、受給開始年齢を3歳遅らせると給付水準が上昇するという説明である。
 ここで比較されているのは、14年度時点の所得代替率62.7%と、将来世代が受給開始年齢を3年遅らせた場合の所得代替率63.4%である。上回っているではないか、というのである。しかし比較されているのは、65歳受給開始と、68歳受給開始なのである。3年分の受給額をガン無視した、比較してはならないケースの比較である。
 小学3年生に、小学校卒業まで月3000円のお小遣いを我慢して0にしたら、中学校から高校生の間のお小遣いを3100円に増やしてあげると持ちかけたら、受け入れる小学生はどの程度いるだろうか。チコちゃんだったら真っ赤になってふくれ上がるに違いない。馬鹿にスンナよ、である。
 年金は、受給開始年齢を繰り下げても受給総額としては変化しない。それははからずも、P40以後の繰り下げ受給の検証記事で明らかである。
 P33のグラフにあるように、将来世代は所得代替率で10%以上少ない、ということは受給額で20%ほど少ない額の受給となる。繰り下げてもその影響は逃れられない。将来世代の年金額はマクロ経済スライド制で絶対的に減るのである。比較してはならないものを比較し、将来世代の年金額は増えると誤解させる、トンデモない記事である。
 記者クラブの党首討論で安倍は、マクロ経済スライド制の下においても受給額は減らないと主張していた。それに対して志位は7兆円減額されると述べていた。すれ違いは、安倍が名目額で語り、志位が実質額で語っているところにある。数字は変わらないように見えるが、実質では7兆円減額される。それがマクロ経済スライド制である。
 そして、たった7兆円の節約で、年金の財源が盤石となる訳がない。生活に不安のないお金持ちの安倍や麻生、高給取りの東洋経済の記者さんにはどうでもいいことかもしれないが、一般国民の年金不安は全く解消されていない。制度を正しく知れば知るほど、「不安が和らぐ」ことなどないのである。

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