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「NEET」ニートという言葉を友人から教えてもらい、
今さらながら調べてみると、「Not in Employment, Education or Training」の略で、
つまり教養も技術も持たない無業者のこと。
これは曲りなりに社会参加しているフリーターとも根本的に違っていて、
まず初めから働く意志がない、という腹の座った無為徒食の方々。
元々イギリスで生まれた言葉だが、日本でも「NEET」の数が一昨年60万人を突破し、
社会問題化してきているという。(こういうのってどうやって統計してるんだろうか?)
「NEET」などと洒落た名称を使わずとも、これまでみたいに「引き篭もり」でいいんじゃないか、
とも思ったが、やはり新しい名称を使うにはそれなりの意味があって、厳密に言うと、
「引き篭もり」ですらないようなのだ。
例えば「引き篭もり」をしながらも、独学で資格を取得したり、ハローワークに行ってみたりと、
何とか社会参加しようとする人もいるのに対して、「NEET」は根っから社会参加の意志がない。
国の雇用対策制度を充実させたとしても、本人にやる気がなければ、社会参加させようがない。
「引き篭もり」までは理解できるが、「NEET」は確かにつかみ所がない。
しかしその一方、これも社会の食み出し者という点では同じながら別種の感動を与えてくれるのは、
老人犯罪である。
今日のニュースでも、こんなものがあった。
「63歳の売春婦が72歳の男性をホテルに誘い逮捕」思わず爆笑。
高齢化の歪みで老人犯罪が増えてきているのは分かり、時には笑えないものもあるが、
こういう逞しい事件には無責任に拍手を送りたくなる。
社会の食み出し者を描くことで、社会の姿を逆照射してきたのが正統的な文学の方法。
「老人犯罪」と「NEET」はそれぞれの世代を表す象徴的な現象であり、
文学が死んだ、などと言われるのは、こんなところで妙に説得力を持つ。
つまりはその食み出方の問題なんじゃないか。ベクトルの方向も強度も全く違う。
食うためには還暦を過ぎても売春に身を投じる老婆と、
食うための努力を一切放擲し、それでも何となく食えてしまう若者。
もちろん、「NEET」だってこれから先食えなくなる時がやってきて、
新たな社会問題を生み出すのかもしれない。宇宙人のように不気味な予備軍だ。
まさに新人(ニート)。
厳密に言えば彼らは、社会から「食み出して」すらいない。
犯罪を犯す老人が社会を通過して向こう側に突き抜けてしまうの対して、
まずニートは、こういう心理学的な言い方は抵抗があるんだけど、子宮の内部に留まったまま。
主体的な行動によって摩擦を生み出すということがなければ、文学的な題材として難しい。
あと、「NEET」の統計ってどうやって出してるのか引っ掛かったのは、「引き篭もり」との
境目が曖昧なものだから、正確な値なんて出せないんじゃないかということ。恐らく推測して出して
るんだろうと思う。でもこれって、例えば「ゼイリブ」とか「ビジター」みたいな宇宙人物みたいな
ものをやはり連想させる。人間の皮を被った宇宙人がいつのまにか地球を支配していくという物語で、
実際のことろ、格好は人間だから、どのくらいの数が紛れているのか分らないという恐怖があった。
日本の「家」というのは、世間の視線を遮断する「箱」として機能しているわけで、
そうなるとどれだけの「NEET」がその「箱」の中に潜んでいるのか、分ったものではない。
そうした未知の宇宙人に言葉を与え、同時に地球に棲む場所を与えるのが文学の力だとすれば(?)、
これはやっぱり書かなきゃいけない題材なんじゃないか。
それとも彼らが犯罪なり職業訓練なりして社会にドドっと溢れ出てくるのを待つべきなのか。
これからますます高齢化が進む中で、これからの若者が支えなきゃならないのは老人ばかりと
思っていたら大変な錯覚。上の「老人」、下に「NEET」の板挟みだ。
いきなり重たい話になってしまったので、「元気な文学」らしくもう一つニュースを。
海洋冒険家・堀江健一さん(66)が単独無寄港世界一周に成功。
ブラボー! 老人は強い。
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