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前に読んだ「フェルマーの最終定理」がすごく面白かったので、同じ著者のこの本を選んだ。
「暗号」というと、スパイとか陰謀とかを思い浮かべるが、この本では暗号のいろいろな側面が紹介される。歴史的にも、古くはローマ帝国のカエサルの時代から、フランス王朝をめぐる陰謀など、暗号が常に権力を持つ側の手段として使われてきたことが示される。

そしてなんと言っても戦争。必要は発明の母、とはよく言ったもので、暗号は第一次、第二次大戦をきっかけとして大きく発展していった。
この本では、見破られない暗号をどう作ったか、そしてどう解読していったかが、図や例えを駆使して描かれている。第二次世界大戦でドイツ軍がもちいた「エニグマ」の説明など、かなりの苦労のあとがある。限られたページで、難しいことを分かりやすく説明するのは、どんな分野であろうと難しい。本当にその内容を理解していることと、それを表現するすべを知っているものだけがそれができる。

そしてこの本のすばらしい所は、暗号の歴史をあくまで「人の物語」として描いたことだと思う。エニグマの解読に成功したのは、ドイツ軍侵略の恐れが切実だったポーランド政府に雇われた、天才的数学者のひらめきと不屈の闘志があったから、などのくだりは感動ものだ。そして、戦後も暗号解読ができることを知られたくなかったイギリス諜報局が、戦時中の暗号解読の経緯を発表しなかったせいで、かれらの偉業は歴史の中に埋もれていった。

この後、「厳密に言えば暗号ではないが----」と前置きされて、古代文字の解読について一章が割かれている。エジプトのヒエログラフや、楔形文字の解読をめぐるプロ・アマ双方の努力とブレーク・スルーの物語りは、戦争や陰謀に彩られた暗号の歴史が語られる中での一服の清涼剤として、純粋に楽しむことができる。きっと古代文字解読の歴史だけで、魅力的な本ができることだろう。

そして最後の3分の1ほどは、「現代の暗号」について語られる。たぶん著者は、この章を書きたくてこの題材を選んだのではないかと想像させるほど、現代を生きるわれわれに密接で切実な問題である。ビジネスのグローバル化とネット社会の成熟を背景として、破られない暗号の必要性はどんどん高まっていった。しかし一方で、テロリストなど犯罪者捜査の必要性から暗号の普及に反対する体制側の葛藤については、双方の主張が記述されている。

そしてついに実用化された、絶対安全な暗号。それを破るためには、地球上のすべてのコンピュータが束になってかかっても宇宙の年代以上かかる。その開発の陰には、時代の先を行く(≒変わり者の)数学者の出現が欠かせなかった。その成果は、われわれがネット上で日常的に使っているショッピングや銀行口座からの送金などに用いられている。

しかし、それに続いて描かれる「暗号の未来」では、この暗号製作者と解読者の競争がこれからも続くであろうことが示される。量子コンピュータが実用化されたときには、現代の暗号も簡単に破られてしまう。そしてこの壮大な競争の最終兵器として紹介されるのが、「量子学的理論に基づく、絶対安全な暗号」である。
現在も含めてこれまで用いられてきた「安全な暗号」が、「その時に存在するテクノロジーでは、実際上破ることができない」ものであったのに対し、この究極の暗号は、「理論的に破ることが不可能」ということで本質的に異なる。
どうやら暗号の歴史は、製作者側の勝利で終わりそうだ、という予見でこの本は終わる。

サイエンスライターは、難しい科学上の命題を分かりやすく紹介することが求められるのは先に述べたとおりだが、それだけでは「科学技術の紹介書」になってしまう。サイモン・シンは、それに加えてこの問題にかかわる人や組織のたどった道を、実に魅力的に描いている。現代の暗号開発の経緯を書くにあたって、存命の関係者に直接話しを聞いていることは、著者のスタンスを如実にあらわしている。

しかし、科学の歴史を書いた本にも、それぞれの立場によって、少なからぬ偏りが出ることは、例えばDNAの構造解明の真相が、未だに論争の種になっていることからも明らかである。偏らない立場を心がけていても、自分の考えが書かれた著書の中に反映されることは避けられない。

膨大な資料を集め、その中から取り上げる人物やエピソードを厳選して、暖かい目線で彼らを書ききること。サイモン・シンが真に優れているのは、絶妙なバランス感覚に裏打ちされた、その人間性にあるのかもしれない。

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閉じる コメント(3)

しまねこさんこんにちは。いい本でしたね。

2008/5/5(月) 午後 11:34 runomee

みのさん。コメントありがとうございます。今度は、「『ビッグバン宇宙論」を読もうかと思っています。

2008/5/6(火) 午前 0:22 sup*r*r0151

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初めまして。

究極の暗号解読は、脳波から思考の解読です。

まず、離れた場所から脳波を計測し、
次に、ニューラル・ネットワーク・コンピュータを使って、
脳波から思考を解読します。

DARPAは既に成功しています。

2014/1/17(金) 午後 2:55 [ patentcom ]


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