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先日、代官山にあるなじみの店でカットをしてもらった時、ずっとビートルズがかかっていた。どうやら、海外のビートルズ専門FM局の放送らしい。
さすが専門局だけあって、”You won’t see me”だの“Yes it is”だの、シングルカットされていないマイナーな曲がたくさんかかっていた。
僕がビートルズをよく聞いていたのは、中学の時。ビートルズがちょうど解散する頃だった。解散していくグループを遡って追いかけるように、ビートルズのアルバムを買いあさって、毎日LPの上に針を落として聴いていた。最後のビートルズ世代というよりは、最初のポスト・ビートルズ世代といった方がいい年代だ。
髪を切ってもらいながら、僕は自分が歌詞をよく覚えているのに感心していた。
そういえばビートルズの歌詞から英語を多く学んだ。アルバムについている歌詞カードの単語を辞書で引いて書き込んだりしていた(ちなみにもう一組英語の勉強になったアーチストは、カーペンターズだった。多分この2組の英語が、比較的聞き取りやすかったせいだと思う。レッド・ツェッペリンやグランド・ファンク・レイルロードなんかじゃ、何言っているか分からないから)。試験勉強の役には立たなかったけど、”you’ve got to do”だの”cause 〜”だのの言い回しを「ふーん」と言いながら学んだことを覚えている。
今でも覚えている、当時僕を悩ませた歌詞がある。
一つは、”ain’t”だ。ain’tは辞書で引くと、「am notの短縮形」と書いてあるが、歌詞をそれに当てはめても文法的におかしい。ビートルズの曲ではないが、”Ain’t no mountain high enough”というシュープリームスのヒット曲があった。「私たちの愛の前では、どんな山も高すぎることはない」という内容の愛の歌なのだが、これも先ほどのain’t = am notが全然当てはまらない。Mountainなのにam??、と当時中学生だった僕を悩ませた。
二つ目は、ビートルズの” Ticket to Ride”という曲の中にある歌詞で、”She`s got a ticket to ride, but she don`t care”というのがあった。どう聴いてもそう歌っているし、歌詞カードにもそう書いてあった。「3人称単数の場合は、don’tじゃなくてdoesn’t」ということを勉強したばかりの僕は、「イギリス人が間違えたことを歌うはずはないし----」と思い悩んだことだった。
極めつけは、とっても有名な曲、’Let it be`だ。be動詞の活用を覚えたばかりの中学生にとっては、これは難問だった。大体、”Let`s〜”という構文は習っていても、”Let〜(do)〜”のような文は習っていなかったと思う。それに”it”ってなんだ?僕の頭は「???」で埋め尽くされた。
その頃仲の良かった友人に、小学校時代の大半をアメリカで過ごした奴がいた。今でいう帰国子女だ。そいつに「ねえ、Let it beってどういう意味?」と聞いたことがある。そいつは、「あ〜、”Let it be”ねー。うーん、”Let it be”はだな、つまりその----- ”Let it be”だよ!」と答え、さらに僕の頭を混乱させたのだった。
それにしてもビートルズは、曲が多彩で、メロディーが美しくて、今聴いてもとてもいい。ジョージ・ハリソンの名曲”Here comes the sun”のさわやかなメロディーに送られて外に出ると、少しだけ秋の気配が漂い始めた午後のうららかな光が満ちていた。すっきりした髪を晩夏の風に吹かれて、美容院を後にして賑やかな午後の街に出て行った。
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