私立直江津高等学校に入学して最(もっと)も楽しみにして居た事を、私はした。
戦場ヶ原先輩に会う事だ。
入学したての何回かは、一年間のブランクも有って、なんと無くだが、戦場ヶ原先輩の事を遠くに感じていた。
が、其れも思い直した。
なあに、中学校と高等学校の違い何て其れが、何(なん)なのだ。
一学年の違いが何だと言うのだ。
私は必死で勉強して、戦場ヶ原先輩と同じ高等学校に通って居るのだ!
遠く感じる必要等無い!
が、其(そ)う思い直した後に私が戦場ヶ原先輩に出会った時に
私は、初め、「彼女」が「彼女」で有るとは分(わ)から無かった。
話し掛ける事に躊躇をしてい無かったのにも関わらず、『分から無かった』。
雰囲気が中学生の頃と異なって居た故(から)だ。
其の不意打ちの校内での出会いが、私立直江津高等学校に入学してから戦場ヶ原先輩と会った一度目だ。
不覚にも、私は声を掛け損ねて仕舞った。
戦場ヶ原先輩が中学生の頃と比(くら)べて余りにも美しく変化して居た事が原因だ。
此の私が、何たる失態。
私が移動教室の際に忘れ物をして一度教室に戻ってからもう一度移動先の教室に行った事が有った。
其の際に戦場ヶ原先輩とだけ擦れ違ったのだ。
其れが二度目だ。
其の時に気が付いた事が有った。
否(いな)、逆だ。
『気が付か無い事』が有った。
廊下でたった二人きり。
2人きりに成った時間は実に短い時間ではあったのだが、廊下に二人きりの状態で、確実に、擦れ違った。
擦れ違った筈(はず)なのだ。
が、然(しか)し私は戦場ヶ原先輩と擦れ違ったと言う事実を『目視』でしか確認出来無かった。
余り意識し無いだろうが、他人が近寄って来る時は音がする故(から)、目で見る前に予(あらかじ)め
相手の存在を認識出来るのだ。
が、然し私は、目で見て初めて人物が其処に居ると言う事を理解した。
言い換えるので有れば、『足音がし無かった』。
?
はて、どうして、戦場ヶ原先輩は、抜け足差し足忍び足で廊下を歩行して居るのだろうかと、
意識して戦場ヶ原先輩の歩くフォームを見た。
あぁ美しい体の線だ。
実に素晴らしい…。
では無い。
其処(そこ)では無くて、戦場ヶ原先輩はステルスに成って居る不思議を解き明かす為に私は精一杯の横目を使っているのだ!
?
普通だ。
普通に歩いて居る。
大体、普通に歩いて居るか、忍び足で歩いて居るか何(なん)て
シルエットを見ただけで直(す)ぐに判別が付(つ)く。
『普通に歩いて居て、音がし無い……?』
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