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憎(にく)い。
私は第一の感情として、此の感情を抱(いだ)いた。
抱いて仕舞った。
抱きたくも無い感情。
「憎い」。
此(こ)の感情を抱いて仕舞ったが最後、其の人物は、社会的活動は不能で有(あ)る。
私は、私が抱いた感情で有る処(ところ)の「憎い」と言う感情を打ち消す事を試(こころ)みた。
私は、悪を追い払おうとした。
私は交通事故で亡く成った私の母から貰った桐の箱に入って有(あ)った、願い事を叶えてくれる「猿の手」を使用(しよう)仕様(しよう)とした。
其の際に、自分の深層心理の感情「憎しみ」の存在に気が付き「猿の手」を捨てようと思った。
が、出来無かった。
其のアイテムは私にとって、便利なアイテムと言う対象のみでは無い。
もう一つ大事な意味を其のアイテムは有(ゆう)してる。
「筐」(かたみ)。
其の意味で私は「猿の手」を捨てる事が出来無かった。
今から思えば、其の時点で「猿の手」を捨てて仕舞(しま)えば、あの様な事件は起こら無かったのだ。
私は出来れば、「憎しみ」と言う感情を抱きたく無い。
其(そ)の感情を抱けば、自分が「悪い人間」に成って仕舞う故(ゆえ)、私は「憎しみ」を感じたく無い。
だが、私は其の感情を捨てられ無かった。
「憎しみ」の感情を蔑(ないがし)ろにする事に失敗した。
私は、阿良々木先輩に憎しみを感じた。
感じ続けた。
私は、顕在意識では、潜在意識とは別の感情を抱いて居たのだ。
「阿良々木先輩は、粋で、博学な人物だ。戦場ヶ原先輩に持って来いの有能な人物だ。戦場ヶ原先輩、良い人間を見つけたなぁ。」と、此(こ)んな感じだ。
一方、潜在意識では、
「阿良々木先輩は、良い人だ。だから、妬(ねた)ましい。悔しい。私が私立直江津高等学校に入学して、戦場ヶ原先輩に、中学校とは別の状況で優しくされたかった。だが然(しか)し戦場ヶ原先輩には拒絶されて仕舞った。どうしても、楽しく中学生のときの様に話したい。そう思って居(い)た。私が、大きな大きな自制心と愛情で自分を戦場ヶ原先輩から遠ざけていたのにも関わらず、彼奴(あいつ)は、簡単に、裏口入学の如(ごと)く戦場ヶ原先輩と楽しそうに話しやがって。悔しい。
羨ましい。
裏で疚(やま)しい。裏疾(やま)しい。」
私が戦場ヶ原先輩から拒絶された時の話を詳しく語ろうでは無いか。
其(そ)れ程(ほど)迄(まで)に、私が戦場ヶ原先輩と仲良く楽しく話をしたいと思って居て、其の為に戦場ヶ原先輩を助け様(よう)としていた、強く強く願って居たにも関わらず、私が戦場ヶ原先輩から身を引いた理由の一つである、あの日の、戦場ヶ原先輩の「防衛」を。
「防衛」する為に「攻撃」をしていた、戦場ヶ原先輩の様子を。
「攻撃は最高の防御」と良く聞く。
バスケットボールでも其れは言える事だ。
進み続ける事が、前進し続ける事が、相手からボールを取られ無い一つの方法なのだ。
私は戦場ヶ原先輩に、
三角定規の穴に私の小指を通され、
カッターを其の穴の真横に設置された。
其の腕を捻じ曲げられ、私の手の平は外側を向いた。
向かされた。
其(そ)の直角三角形の直角の部分が私の眼球のすぐ前に設置された。
カッターは穴を通って居る私の小指に当て付けられた侭(まま)だ。
其のカッターが戦場ヶ原先輩の方向に動けば、すぐ私の小指からは血が出始める。
「良いですか?貴方(あなた)、私の秘密に気が付いて居るのでしょうね。
だって、貴方、余計な事に気が付きそうな顔をして居る物。
まあ、私は貴方の事何(なん)て知ら無いのだけれども。
若(も)しも、私の秘密を誰かに教える様ならば、私は今すぐに貴方の小指を切り落とすわよ。
宛(さなが)ら、散髪屋さんで櫛(くし)を当て付けて、挟みで髪の毛を切るが如(ごと)く…ね。
まあ、切り落とすと言っても、私の様な体重の軽い、ひ弱な女の子が他人の小指を切り落とそうとした処(ところ)で、きっと骨の部分で突っ掛かって仕舞うだけでしょうけれどね。
其れでも、痛いか痛く無いかと言えば、痛いでしょうね。
若(も)しかすると、さっぱり切り落とされる方が痛く無いかも知れ無いわね。
人間は、余りにも痛いと、痛さを感じる事を辞めるそうだから。
きっと、私の様なか弱い女の子がカッターで他人を切り付けると、痛過ぎでも無く、痛く無い訳でも無い、
人間が感じ取れる値の痛さの中での最大の痛さを演出して仕舞うでしょうね。
中途半端な肉の部分で刃の進行が止まって…ね。」
私は身動き一つ取れ無い。
其れは、恐ろしいからでも有るが、
戦場ヶ原先輩が、私に触れて居るからでも有る。
嬉しくて動く気がし無い。
私の小指を通して居る、奥(おく)迄(まで)通し過ぎて、今三角定規を外したら、小指には痕(あと)が付いて有るに決まってる。
「言って置くけれど、其の三角定規の穴の内側には瞬間接着剤が塗って有(あ)る故(から)、私がカッターを手前に引いた拍子に貴方の小指から三角定規が抜けて仕舞って、あぁあ何て事には成ら無い故。」
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