判例等

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平成20年(ワ)第18566号
東京地裁 平成22年4月23日
 
均等論第五要件の意識的除外と補正との関係について、以下のように判示。
(下線は筆者が付した。)


「しかしながら,Aは,平成11年10月22日付け手続補正書(乙3)に
より,当初明細書のコンベア高さ調節を構成要件として含まない請求項(1
〜5)とコンベア高さ調節を構成要件として含む請求項(6)とが記載され
ていた特許請求の範囲をコンベア高さ調節を構成要件として含むものに限定
したことが,前記第2,2(10)に認定した出願経過から外形的に明らかであ
るところ,そうである以上,補正に際しての出願人の主観的意図にかかわら
ず,特許権者が後にこれと反する主張をすることは,禁反言の法理に照らし
許されないというべきである。」
 
「しかしながら,均等の上記第5要件にいう特許請求の範囲からの除外は,
拒絶理由を回避するための行動でなければならない必要はない。すなわち,
たとえ自発的に行った補正であったとしても,外形的に特許請求の範囲を限
定した以上,特許権者が後にこれと反する主張をすることは,やはり禁反言
の法理に照らして許されない
ものであるからである。


均等論の適用が厳格になるのは賛成。 法的安定性の観点から。
国際的な潮流にもおおよそ合致している。
 
住友教郎
 
 

後知恵排除の判決

「パテント」誌2010年8月号の37−44頁に、高瀬先生が論文を寄稿されている。
先生は、後知恵排除を言明した2つの審取判決について、詳細に説明しておられる。
先生、いつも有り難うございます。
 
 ・切替弁事件(知財高裁平成21年4月27日判決、平成20年(行ケ)10121号)
 ・キシリトール調合物事件(知財高裁平成21年3月25日判決、平成20年(行ケ)10261号)
 
特許性判断が緩くされている昨今の傾向においては、このような判決も当然に出てくる。
「後知恵」は、進歩性を左右する根っこの部分だから。
 
進歩性を認容させるための主張の多くは、後知恵を排除するという側面をも持っている。
課題の相違しかり、阻害要因しかり。
 
特に、後知恵的な要素が目立つ拒絶理由通知に対しては、上記判例を記載して反論してみるのもよいと思う。
 
 
 

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平成21年度第2四半期の判決 「特技懇」誌
 
特技懇256号で、小椋正幸主席審判長が、審決取消事件についてコメントしておられます。(111〜134頁)
 平成21年度第2四半期では、進歩性の判断誤りの他、記載要件判断誤りや、新規事項判断誤りが目立った、としています。
 
 平成20年(行ケ)第10484号(無鉛はんだ合金)は、記載要件判断誤りの判決として重要です。
 数値限定発明について、単に数値範囲と実施例データとをのみを比較して、記載不備及び臨界的意義の欠如を指摘してくる審査官が多数存在します。大合議判決(平成17年(行ケ)第10042号)以降、この傾向は強くなっています。この平成20年(行ケ)第10484号が判示するように、実施例データの裏付けが不要な数値限定発明も当然に存在することを、審査官は今一度肝に銘じて欲しいですね。
 なお、このような審査官への対策として、請求項1での数値限定は出来るだけ避けることも、実務上は重要。
 
 
 平成20年(行ケ)第10420号(マンガン化合物の製造方法)は、新規事項判断誤りの判決です。
 平成18年(行ケ)第10563号に沿った判決であり、「新たな技術的事項の導入」の有無で判断しています。この判決の如く、開示された内容を実質的に見極めて新規事項を判断するやり方が、審査でも定着してほしいところです。国際的な調和の観点からも、新規事項の柔軟且つ適切な判断は重要です。
 ただし、現実の実務では、新規事項で勝負をかけることは、なかなか出来ません。この判決のレベルのような補正をするのは、よほどの事情がある場合、でしょうね。
 

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簡素化発明の特許性が認められた事案
 
平成21年(行ケ)第10361号 審決取消請求事件
平成22年5月27日判決言渡
 
 進歩性無しとの審決が取り消された事案。
 判決文の2頁にあるように、本件請求項は極めてシンプルな構成である。疑似油汚れの構成(カーボンブラックを含む等)を除けば、素人目には、引例を見るまでもなく、進歩性がありそうもないと思える内容。
 実際には、引例に、カーボンブラックを含む疑似油汚れについて記載があるとのことなので、なおさら、進歩性が無さそう。
 しかし、判決は、審決を覆して、進歩性有りと判断した。
 
 判決は、次のように述べている。
 「本願発明は,決して複雑なものではなく,むしろ平易な構成からなる。したがって,耐油汚れに対する安価な評価方法を得ようという目的(解決課題)を設定した場合,その解決手段として本願発明の構成を採用することは,一見すると容易であると考える余地が生じる。本願発明のような平易な構成からなる発明では,判断をする者によって,評価が分かれる可能性が高いといえる。このような論点について結論を導く場合には,主観や直感に基づいた判断を回避し,予測可能性を高めることが,特に,要請される。その手法としては,従来実施されているような手法,すなわち,当該発明と出願前公知の文献に記載された発明等とを対比し,公知発明と相違する本願発明の構成が,当該発明の課題解決及び解決方法の技術的観点から,どのような意義を有するかを分析検討し,他の出願前公知文献に記載された技術を補うことによって,相違する本願発明の構成を得て,本願発明に到達することができるための論理プロセスを的確に行うことが要請されるのであって,そのような判断過程に基づいた説明が尽くせない限り,特許法29条2項の要件を充足したとの結論を導くことは許されない。」
 「しかし,審決は,本願発明と,解決課題及び解決手段の技術的な意味を異にする引用刊行物A記載の発明に,同様の前提に立った引用刊行物C記載の事項を組み合わせると本願発明の相違点に係る構成に到達することが,何故可能であるかについての説明をすることなく,この点を肯定したが,同判断は,結局のところ,主観的な観点から結論を導いたものと評価せざるを得ない。」
 
 少なくとも、引例のみから判断すると、裁判所の判断は妥当であると思う。問題は、引例に明示されない当業者の技術水準をいかに参酌するかである。発明の「シンプルさ」や課題の普遍性(測定手順の簡略化)についても、この当業者の技術水準の認定を通して考慮されうる。裁判所を説得するためには、かかる当業者の技術水準についても、しっかりした証拠が必要なのだろう。裁判所と特許庁との間の温度差が感じられる。
 
 いずれにしても、
 ・一見すると容易であるような発明にこそ、主観や直感に基づいた判断を回避し、本願発明に到ることの論理プロセスを的確に行うことが重要である
とする裁判所の姿勢は、大いに評価できる。

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「除くクレーム」に関する大合議判決(平成18年(行ケ)10563号)を受け、特許庁は、新規事項に関する審査基準を改訂しました。
 
今回の改訂に関し、特許庁は、「新規事項の判断に関する審査実務に変更はない」 とコメントしています。
 
新たな判決等がでない限り、新規事項の判断が変わることはなさそうです。ただし、「新たな技術的事項を導入」という概念は、新規事項の基準を変える(新規事項の範囲を広げる)可能性を秘めていると思われます。
 

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