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量的緩和とは、このコーナーでも6月から何度か取り上げ、もう解除まで秒読みの段階だと言っていましたが、ようやく、きのう解除されるということになりました。5年ほど前から日本銀行がとっていた金融政策で、全世界でも過去にないデフレ封じ策として、注目されていた有名な政策でした。お金が市場に回らない状況を、何とかお金が市場に回るようにする為に、銀行を通じて大量のお金を無理やり流通させようとしてきたわけですが、やっと銀行が市場に十分お金を流すことができるようになったわけです。川に例えると、ダムに水が溢れんばかりあった(つまり、通常の6倍もの水を蓄えていた)のを、もとの水位まで戻すことにしたわけです。ダムの下流の川に水が流れていなかったのが、流れ始めたので、放流する量をそろそろ調整しても下流の水がかれる恐れがなくなったと判断しての政策転換ということなんですね。じゃあ、日銀はどんな目的で、お金を市場向けに用意したり、金利を調整したりするのでしょうか?
日本で言う日本銀行‐中央銀行は、他の国でも同じですが、通貨価値の安定と健全な経済成長が究極の目的であり存在意義です。すなわち、インフレ・物価高を抑えて安定した経済発展をめざすことが、国としては、大切なわけで、川下の川の流れや水位を見ながらダムの水の貯水量や、放流する水量を調整しているわけです。ただ、経済が大きくなっていくと川幅や川沿いに住む家族数や水を使う量が変わってきますし、現在の経済はバーチャルな部分が大きいので、資金の実需の実態(実際に必要な量)が、測りにくく、調整は非常に難しくなっています。水量調整を上手にしないと、ダムの水は枯れてしまったり、オーバーフローしてあふれてしまったりするので、水源をになう日銀の采配の影響は、全国民に及んでしまうわけです。
以前に紙幣の意味についてお話をしましたが、覚えていらっしゃる人も多いと思います。紙幣はただの小さい一枚の紙切れですが、この紙切れは、「日本銀行総裁が一万円分の借金をしました」ということを示す借用証書だということでしたよね。日本銀行総裁は「一万円という価値を国民から借りていて、請求があれば国民にすぐに返します」という義務を負っている。言ってみれば一万円紙幣とは「日本銀行による一万円相当の借用証書」だということでしたよね。そこで考えなければならないことが、一般的にはお金を借りるためには、その人に本当に信用力があるかどうかが非常に重要ですよね。もし私がほとんどお金のない貧乏人で信用が無ければ、「100万円貸して下さい。」と言っても、誰も貸してくれないでしょう。つまり、発券銀行はお金持ちで、しっかりしている、大丈夫だという信用がなければならないのです。日本銀行に信用があるから、日本銀行の借用証書に過ぎない「一万円紙幣」というものを、皆は受け取ってくれる。本来は借用証書なのに、「お金」だとして受け取ってくれるわけです。
ここでさらに重要なことは、自分だけでなく他の人もそのお金の価値を信用していると言うことです。他の人も受け取ってくれるだろうと思うから、みんなが受け取ってくれ流通するわけですね。「この借用証書には一万円の価値がある」という幻想が無意識のうちにあって、その上に、「他の人も同じ幻想をもっている」「だから受け取ってくれるだろう」という信用の基で、「お金」というものは流通しているわけです。
そういう意味では、お金は、非常に脆いものでもあるんですね。万が一、「この紙幣はただの紙切れで価値なんかないんだ。」なんて思われるようになったら、翌日からいきなり誰も受け取ってくれなくなるかもしれないですよね。そういう危険とも背中合わせなんです。実際、過去には経済危機のアルゼンチンや体制が崩壊した時のソビエト連邦(今のロシア)などでは自国通貨の信用がなくなってしまい、自国民ですら、通貨をアメリカドルにどんどん替えて行った訳です。
お金というのは、信用があって初めて価値があるものなのです。そして、この信用というのは、国の信用であり、国力であり、経済力なのです。日本が魅力的なものを生産し、日本のものを海外の人が買いたいと思ったり、日本へ旅行したいと思う人がいないと、円が必要だと思われなくなってしまいます。
すなわち、魅力的なものを作る力や経済力が、落ちたり魅力的な国でなくなったりしてしまえば、円の価値が下がってしまうわけですね。日本人以外の海外の人たちも円を持ちたい、と思えば、円の信用力がより上がるという事になるわけです。通貨価値の安定の要素としては、日本企業の力・経済力や政治の力などの他にもやいろいろなものがありますが、中央銀行、通貨当局である日銀の政策能力も大切なものだといえます。きのうの日銀の「量的金融緩和政策の解除」は、日本経済が強くなっていると日銀が判断した結果だといえるわけですが、究極の目的は、「円という通貨の安定」と「物価の安定」であるわけです。
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