|
早いもので今年ももう9月に入りました。
当工房では毎年9月頭ぐらいから、冬の秩父夜祭用の木札の注文が入り始めます。
先日引き出しの中を整理していたら、開店当初からの大量の木札注文用紙が出てきました。
これを見ると今までずいぶんたくさんの木札を作ってきた事が分かります。
御注文いただいた皆様、ありがとうございました
紙一枚=木札一枚というワケではないので、実際にはもっと多くの木札を作った事になります。
一度の注文で一番枚数多かったのは、昨年作った三文字入りの木札100枚でしょうか。
さすがに大変でしたねぇ
木札の文字を塗る00号の筆もかなりの数が溜まりました。
細かい塗りをする為に一番細い筆を使っているのですが、塗料や薄め液が特殊なものなので結構すぐに
筆先が曲がったり広がってしまったりして、木札用として使うには難しくなってしまいます。
筆としてまったく使えないワケではないので全部残してあるのですが、その数はついに100本を越えました。
う〜ん。 ついつい、金額計算してしまう…
ずっとこの筆を購入していた時習堂が無くなってしまったので、これからはネットでの購入になるでしょうね。
最近はこんな木札も受注して作りました。
色は塗らずに軽く立体的にしてありますが、逆側には色付きの文字が入っています。
彫る事自体は普段の木札と大した違いはありませんが、こういうものはお客さんの希望する図案を一から
描かないといけないので、文字を彫るのと違って事前の準備が大変です
文字の方が全体的にラクではありますが、こういうのもたまにはいいかな
夜祭用木札はすでに受付中です。
注文数によってはお祭りひと月前には締め切りますので、早めの御注文をよろしくお願い致します
|
木札
[ リスト | 詳細 ]
|
7月に入り梅雨が終わった途端、毎日厳しい暑さが続いていますね。
連日の記録的な猛暑に体調を崩す方も多いようで、無理せずしっかり水分を取る事が重要になっています。
みなさん、熱中症には気を付けましょうね
そしていよいよ秩父川瀬祭りが近づいてきました。
6月いっぱいで木札の受注も締め切りましたが、最初は例年に比べて注文数が少なめ。
今年は少しゆったりした感じかな〜と思っていましたが、後半になって立て続けに特大サイズ(13×8cm)の
木札の注文が入り一気に忙しくなってきました
特大サイズの木札は一枚に20文字近く入るので、制作時間も普通の木札の数倍かかります。
ちゃんと期日に間に合うよう、頑張りたいと思います
そうそう
昨年のブログで秩父笠鉾特別曳行の記事を掲載しましたね。
その時は少し露店も出ていたのですが、工房のすぐ横のお土産屋さん前にレーザー彫りの木札屋さんが
実はその数日前にウチでは困難な木札の依頼があって 『レーザー彫りに頼んだ方がよいのでは?』
なんて話をしたばかりだったので 『こりゃ丁度いいや』 とばかりに偵察へ
ほうほう、そのパソコンでデータを入力して… そっちに置いてある箱(60×60cmぐらい)に木の板をセット
して… スイッチオンで40〜50分で木札が完成
へぇ〜 などと話しを聞いていたら向こうも 『この人何者?』 みたいな雰囲気になったので
『あっ そこで彫刻してる者です』
『あぁ〜 さっき前を通って木札が見えたので後で寄りたいな〜って思っていたんですよ』
東京からわざわざレーザー彫りの機械を持って出張してきたとの事でした。
『もしかしたら知り合いが木札の依頼に訪れるかもしれないので、話を聞いてやってください』
とお願いしてその日は退散。
そして特別曳行の二日目。
工房を訪れたレーザー彫り業者さんから 『お近づきのしるしに』 とこんな物を頂きました。
工房の名前入り木札です。
いや〜 作りが細かいですねぇ ウチではこんなに細かい文字を彫る事は出来ません。
しかしこれで驚いてはいけません。
裏を見てみると…
なんと龍が彫ってありました
まぁよくよく見れば粗が目立つのですが、このサイズなら十分ではないでしょうか。 このレベルのものをパッと作って持ってきてしまうのだから驚きです。
ウチで似たようなものを作るとしたら、どれだけの制作期間と金額になるのやら…
機械と張合うつもりもありませんが、実際にレーザー彫り木札を手にすると色々と考えさせられてしまいます
ちなみに今はまだ機械で文字に色を塗る等は出来ないそうです。
う〜ん、そこだけは勝ったかな?
それにしてもこういった加工技術の進歩には目を見張るものがあります。
最近では3Dプリンターなんてものも出てきましたが、レーザー加工技術がこのまま進化していって大型木材
の加工も可能になれば、職人としての木彫刻師なんて必要なくなってしまいますねぇ。
今の段階でもパソコンソフトで図案を制作すれば、どんな図案でもある程度は再現出来ると聞きました。
箱にセットしてボタンを押すだけで大量に同じものを作れれば、価格を大幅に抑える事が出来ますからね。
特に同じような図案を多用する社寺彫刻は、全て機械加工に流れてしまうでしょう。
職人と機械、上手く住み分けが出来ればいいのでしょうが… 難しいですよね。
ウチで木札を作る場合、レーザー彫りに比べれば時間も掛かるし金額も高いです
木札は相変わらずの赤字仕事ですが、『値段が高い』 とお客さんに逃げられてしまう事もあります。
それでも手彫りがいいからと依頼してくださる方の為に、少しでも良いものになるようベストを尽くす…
今はそれを続けていくしかありませんね。
川瀬祭りは来週末ですが木札は早めに欲しいというお客さんが多いので、ここ3〜4日間は仕上げに向けて
気合いを入れて取り組んでいこうと思います。
お祭り当日に自分が制作した木札を目にする事を、私もとても楽しみにしています
|
|
前回記事で完成となった木札に好きな長さに切った江戸打ち紐を通す…。
商品の木札としてはこれで完成となります。
今回ご紹介した本町木札は一番サイズの小さいケヤキ板に二文字の彫刻。
ウチの木札の中ではもっとも安い 『2000円』 で制作しています。
う〜ん…
2000円って… どうなんすかねぇ
もともとは工房を開店した時、高額な商品ばかりではお客さんも来てはくれないだろうという考えから
木札制作を受け付けるようになりました。
幸い秩父地方は年間を通してお祭りの多い地域です。
木札をキッカケに彫刻に興味をもってもらえたらという思いから、値段も購入しやすい様に安く設定する事に。
参考にしたのはネット通販で多く見られたレーザー機械彫りの木札。
ほとんどの店舗が一枚2000円ぐらいでした。
正直言って2000円では大赤字
しかしたとえ赤字商品でも、地元での彫刻の普及に繋がる可能性があるなら… と考えたのです。
細かく説明をしますと
基本小サイズ二文字2000円からのスタート。 (一文字でも2000円)
一文字増える毎に800円がプラスされ、イラスト等は図柄によって値段を決めています。
文字の画数による値段の差は無く 『一』 も 『龍』 も同じ800円。
数字も平仮名もカタカナも同じです。
中サイズはプラス200円、大サイズはプラス300円。
例えば中サイズ三文字で木札を制作すると、2000+800+200=3000円 となります。
開店当初はそれほど注文も無く、仕事の合間にチョコチョコこなすって感じでしたが
今では地区外からのお客さんにも多くの注文をいただくまでになりました。
しかし、注文が多くなる事で困った問題が
木札の制作が増える事でドンドン赤字が膨らんでいき、工房の経営を圧迫するようになったのです
一日で制作できる木札は今回の本町木札レベルでだいたい平均3枚ほど。
木札の制作に時間をとられ、作っても作っても赤字が増えるだけ…。
仕舞いにはお客さんや同業者、看板・木札の制作に関わっている方々から 『こんなに安くて大丈夫?』 と
心配される始末です
私も今までに何度か値上げを検討した事がありましたが、五年間はそのままで頑張ってきました。
しかしついに新年度から、値段設定を見直す事に…。
値上げと言うよりは画数で値段を細かく設定するなど、今まで大雑把になっていた部分を見直すという感じ。
大雑把にしていたのは見積もりを早く計算する為でもあったのですが、やはりそれではダメですね。
値段設定はこれからですが、赤字解消! とまではいかないでしょう。
昨年は木札の制作自体、もうやめようかとも思っていたのですが
ウチの木札が欲しいというお客さんがいるのなら、作り続けなければいけません。
心苦しい事ではありますが、続ける為にも少しばかりの値上げをさせていただければと思います。
よろしくお願い致します
|
|
木札の制作工程の続きです。
今回は文字彫り以降、ヤスリがけと塗装作業を紹介いたします。
⑪ まずはヤスリから。
最初に400番の紙ヤスリを全体にかけて
いくのですが、注意点としては彫刻面に
あまりヤスリをかけないようにしましょう。
彫刻面をヤスリで削り過ぎると文字の淵
が丸まりシャープさが損なわれます。
それに真っ直ぐ刻みを入れキレイに
仕上がっているように見えても、深い位置
ではズレが生じている場合があります。
削りすぎると文字の淵の位置が崩れて、カタチが悪くなってきてしまうんですね。
修正作業に時間がかかってしまうので、軽くヤスリをかける程度に抑えます。
私の場合、まずは側面や小口部分にしっかりとヤスリがけ
その後、使い古したヤスリ面で彫刻面を磨いています。
⑫ 400番が終わったら今度は水研ぎです。
1000番、そして1500番の順に耐水性の
紙ヤスリを全体にかけていきます。
この時私は木札を水にしっかり濡らしてから
ヤスリをかけるのですが、これは本来の耐水
紙ヤスリの使い方ではありません。
なぜそうするのかはまた後で説明します。
二種類の耐水紙ヤスリがかけ終わったら
しっかりと流水で削り粉を洗い流します。
私は使い古しの歯ブラシの先などで洗い
ますが、この時にあまりチカラをいれて
ゴシゴシと擦らないコト。
細かい部分を破損してしまう可能性が
あります。
全体が洗い終わったらキッチンペーパー
などでしっかりと水気を取り、日の当らない
場所で乾燥させます。
時間に余裕があれば一日置いておいた方が
しっかり乾燥できて良いですね。
さて、先ほど後回しにした耐水紙ヤスリについてですが
ヤスリの説明書きを見てみると 『水を多く含んだ状態では使用しないで…』
みたいな事が書いてあったりします。
耐水紙ヤスリは軽くヤスリに水をつけ、粉が周りに飛び散らないようにというコトを考えられて作られた商品。
水を含んだ木を磨くためのモノではないのです。
ではなぜ私が木札に水を含ませて磨いているかと言いますと…
何となくそのほうが水に強くなるような気がするのです
人の肌は長く水につけるとふやけますね。
木も同じように水を含むと膨張したり、表面が荒れてバサバサと手触りが悪くなります。
横の写真は水研ぎ後の乾燥させた木札。
よく見ると文字の淵が所々膨れたり歪んだり
していますね。
水研ぎをしてあるので木札表面はキレイに
整っています。
乾燥後の文字の歪みはもう一度ノミで削って
淵をキレイに揃えていきます。
⑬ ヤスリ後の調節
一度ふやかしてからまた削ってカタチを
整える事で、完成後に万が一水に濡れて
しまった場合でも文字に影響が出にくく
なるのです。
ちなみに水研ぎせずに完成させた木札は
水に濡れると手触り悪く、文字も淵が歪み
見栄えも悪くなります。
木札は身に付ける場合が多いという事を
考えると、濡れてしまった時の事も配慮して
おかなければなりません。
今回の木札は文字がそれほど複雑では
ないのでそれほど時間はかかりませんが、
文字によってはかなり大変
水研ぎをする事で作業工程がかなり増えて
しまうのですが、その一手間を惜しまない
事が出来を左右するのではないでしょうか。
水研ぎ後の修正も終わり、キレイな仕上がり
になりました
⑭ いよいよ文字の塗装に入ります。
使用する塗料はうるし科植物を原料とした
もので、本来は手作りルアー用のもの。
塗装後の見た目が本うるしに近い事と、
ルアー用という事で耐水性に優れている
点がポイントです。
チューブ入りで絵具感覚で使用出来るのと
かぶれの心配が無いのがありがたい
使用する筆は一番細い00号。
一度塗装した木札をホコリが付かないように箱に入れて一日置き、翌日二度目の重ね塗りをします。
実際にはもう少し早く重ねて塗っても問題ありませんが、しっかり乾かないうちに塗り重ねてしまうと中が
いつまでたっても乾かず、シワが寄ったり凹んだりしてしまいます。
やはり余裕をもって一日置いておく位が丁度いいのではないでしょうか。
⑮ 再び水研ぎ
二回塗り重ねて乾燥後、三回目を塗る前に
再度水研ぎをして塗装面を整えます。
使用するのは2000番の耐水紙ヤスリ。
どうしても塗る作業の時にホコリが付いて
しまったり、筆の毛が抜けて貼り付いてしまっ
たりします。
そういうゴミを取り除き、乾燥させます。
⑯ 最後の調整
水研ぎ後、乾燥させたら木札のチェック
塗装が上手くいっていない部分の修正を
していきます。
木札のように細かい彫りに塗装をすると
文字の淵に塗料が染み込んで滲んだ様に
なってしまったり、はみ出してしまったり…
赤丸が修正すべき場所です。
今回もかなり修正点が見つかりました
画数の多い文字ほど塗装後の修正も
増えてしまいます。
塗料の粘度を調節したりと色々対策はする
のですが、なかなか上手くいかないですね。
またまたノミの出番です。
はみ出てしまった個所は塗料を薄く削り取り
淵もキレイに整えて色が染み込んだ場所を
削り取り仕上げます。
この時のポイントとしては、やりすぎて
せっかく塗り重ねた塗料を剥がしてしまわ
ない様に気を付けましょう。
⑰ 三度目の塗装
修正が終わったら最後の塗装です。
一度や二度ではイマイチだった塗装面の
ツヤも、三度目となると満足のいくものと
なってきます。
ここで滲みやはみ出しといった失敗をすると
またノミで修正 → 塗装となってしまうので
焦らずしっかりと集中して塗装をします。
箱の中で一日乾燥。
翌日全体をチェックして、問題がなければ木札の完成となります
今回の木札は一カ所気になる部分があった
ので、もう一度修正&一部塗装。
ようやく完成となりました。
なかなか良い出来になったと思います。
もともと木札は秩父に戻ってきてから制作
する様になったのですが、最初の頃と比べる
とずいぶんと上達しましたね〜
今でも一番最初に制作した木札は手元に
ありますが… 酷い出来です
小さくシンプルなものではありますが、
数をこなして技術を磨き続ければ洗練され
た素晴らしい作品となっていくのでしょう。
そういう意味では私の木札はまだまだですね。
次回は 『木札制作の今後』 について、お知らせしたいと思います
|
|
今回は木札のヤスリ&塗装のご紹介… のつもりでしたが
木札の彫り方について、私の文章だけでは上手く伝わっていないのではないかという思いがありました。
そこで少し分かりづらかった部分を選び出し、図と合わせながら説明いたします。
始めは木札の断面を図にしたものです。
① … 比較的文字の幅が広めの勘亭流の字体でも、小サイズの木札では文字によっては極端に幅の狭い
部分などで塗装が困難になってしまう場合があります。
塗装には一番細い00号の筆を使用していますが、それでも収まりきらずハミ出してしまう事も。
幅を広げ過ぎると文字のバランスが悪くなるので、極力ギリギリ塗装可能のラインを狙います。
② … 画数の多い文字などでは線が近すぎて残す面が狭く、欠けやすい状態になってしまう事があります。
『美』 のように横棒の多い文字は特に大変。木目の影響で横方向に残す方が強度が低いのです。
そういう時は基本的には真っ直ぐ下へ突くノミを、少し斜めに差し込み奥の幅を広げて強度を増します。
③ … カマボコ彫りという名前のからも分かるように、断面がカマボコ状になだらかな丸になるのが理想。
しかし文字の幅が狭い場合などは三角形のように先が尖ってしまう事があります。
この状態で塗装をすると角の部分から下に塗料が流れてしまい、上手く色がのらずそこだけ色が薄く
なってしまいます。
丸められれば一番ですが、難しいなら軽く角を取ってやるだけでも効果はあります。
続いては木目と彫り方の関係について。
普段あまり木に触れない方にはイマイチ理解しにくい事だと思いますが、木材を単純にひとつの塊だと考えて
いると彫刻は上手くいきません。
木目と彫刻の関係は、説明するのが難しいのですが…
あえて何かに例えるならば 『茹でる前のパスタの束』
木材も細かく見れば一本一本の繊維の集まりという事です。
パスタの束に縦方向からチカラを加えても形の変化は無いですが、横からチカラを加えれば曲がりますね。
これもあまり意識されていませんが、ノミの刃の先端だって細かく見ればかなり厚みのある三角形状です。
これを木に差し入れていくワケですから、木の繊維は横に押し広げられていく事に。
何を彫るかで違いますが木札に限って言えば、④のように横から圧力を受ける木目に沿った刻みは影響を
受けやすいという事になります。
そのため⑤のような刻みを入れようとした場合、Bのラインの刻みを先に入れてからAの刻みを入れてしまうと
刻みによって出来た隙間に押し込まれ、圧力に耐えかねた繊維がポキッと折れてしまう… というワケです。
逆にAを先に刻んだ場合。Bを刻む事でA側に圧力が加わりますが、元々木は木目に沿って割れるという性質
がある為に木目に逆らう方向への刻みには影響が少ない。
縦方向にもチカラは伝わりにくいので破損しづらいという事になります。
実際にはこんな単純なものではなく、サイズ・材質・木目・文字のデザインなどは千差万別。
その場その場の臨機応変な対応をしないといけません。
ここまで書いてきたのは仕事をしながら自分なりに感じてきた事で、他の方には納得できない部分もあるかも
しれませんが… まぁ、こういう考えもあるという事で
少々長くなり過ぎましたね。
次回は本当にヤスリ&塗装編のご紹介に入りたいと思います
|



