★AB Discrepancy

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Angel Beats! Discrepancy 1-5

初音に首を絞められながら――と言う表現は間違ってもいないが、正解でもないような気がするので訂正しておこう。
 初音を背負いながら、あの後5分ほど歩いた。
 そして。

「わーーーーーー!!遊園地だーーーーー!!」

 初音の声を髪に浴びながら、奏とともに俺は遊園地へとたどり着いた。
 よく初音はそんな声が出せるな……疲れてるっての嘘だな?
 後でお仕置きしておくとしよう。
 
 遊園地の入り口にたどり着く。
「皆早いな……今何人集まったんだ?」
「5人ね」
 奏が人数を答えた。
 え、何、魚群探知機でも仕込まれてるのか?
 ひとまず初音を下ろそう。
「初音、もう下ろすぞ?」
「うん!」
 しゃがんでおりやすいようにしてやる。
 と、その時、何か話しかけてきた奴が1名。
「貴様遅いぞ……まさかこの企画を提案したゆりっぺを侮辱するつもりじゃあないだろうな」
 ちょっとこの良く分からない事を口走っているのは野田。
 何があったのかは知らないが、あのゆりの事が好きなようだ。
「何言ってんだ、まだ10分前だぞ」
「ちなみに俺は5時にここについていた」
「アホだ」
「アホだな」
「お、日向も来てたのか」
 この見た目からお調子者だと分かるコイツは日向だ。
 人は外見で判断してはいけないと言うが、日向だけは例外のような気がする。
 玉に良いところあるんだけどな、たまに。
「あったりめぇよ」
「相変わらずだな……」
「相変わらずのアホっぷりですね、先輩!」
「ユイじゃないか」
 このちっこいのはユイ。
 学校のバンドでボーカルをしているが、もう一人いるボーカルの方が上手いのか、ライブでこいつが1人で歌っているのを見た事が無い。
「なんだとぉ!キサマもう一回言ってみろ!!」
「キャーセンパイガオンナノコヲイジメルー」
「棒読みをやめろ!!」
 因みに今日のメンバーの中でこいつ一人だけが後輩。確か。
 後妙に日向と仲が良い。
「「仲良しじゃねぇ(です)よ!!」」
「今ハモったじゃないか」
「何で結弦の心を読んでいるかも不思議ね……」
 奏が突っ込む。
 まあそれはお咎めなしって事だろう。
 多分勘。
「私とハモらないで下さいよ気持ち悪い!」
「何が気持ち悪いだ!!大体ハモってきたのはお前だろ!?」
 取りあえず仲良し二人は無視だ、無視。
「あれ?そういえば後二人はどこへ行ったんだ?」
 さっき奏は5人と言っていたはずなのに野田・日向・ユイの三人しかいない。
「ああ……後二人はあそこにいるわ」
「え?」
 奏に指された方を向く。
 するとそこには取ってつけた感がまるでない森林があり、その入り口のような場所の木に椎名が立っていた。
 箒をもって。
 その木の左の木の下には竹山が相変わらずの仏頂面でパソコン画面を睨んでいた。
「…………アホばっかだ」

Angel Beats! Discrepancy 1-4

暫く、大体10分は歩き続けて、交差点を超えた所で、奏と初音がほぼ同時にしゃがみ込んだ。
「どうした?」
 理由は分かりきってるけど、万が一違った時の為に、一応奏に聞いておく。
 因みに俺は「疲れた」だと思ってる。
 と言うかそのくらいしか思いつかない。
「……疲れちゃったわ」
 ……やっぱり。
 そりゃあ、坂道もそれなりにあったし、男の俺でも少し汗掻いてるから、無理もないだろう。
 単純計算だと後10分で着くが……。
「奏、休憩してくか?」
 近くにあった喫茶店を指して聞く。
 ……財布の中には1万円くらいあったはず……。
 しかし奏は、
「大丈夫、歩きましょう」
 と言って、立ち上がった。
 そして疲れたと言わんばかりの顔を、笑顔にして言った。
「皆待ってるでしょ?」
 ……不覚にもちょっと見蕩れてしまった。
 前からそうだ、奏は、自分が辛くても笑顔でいつも居た。
 ちょっと心配だけど、ここは奏の意思を尊重しよう。
 あ、でも初音は――
「…………」
 ――明らかに「だっこして」と目で訴えている。
 ったく……。
「んじゃあ、そこの自販機で飲み物買ってくるから、ちょっと待ってろ。直ぐ戻る」
 初音をだっこしたまま10分、この真昼間に歩いたら俺もヤバイ。
 水分を補給しなきゃならんだろうと思ったからだ。
 因みに歩いて10秒もかからない所にある。
「うん、分かった」
 奏に見送られて、わずか10秒足らずの歩行を開始する俺だった。

「さてと、一体何を買おうかな、っと」
 10秒もかからず自動販売機についた。
 今の時期、あまり暖かい飲み物は売ってないみたいだけど、一番下の段の右半分には「あったか〜い」と言う表記はしてあった。
 誰が買うかは分からないが。
 取りあえず全体を見渡してみよう。
 お茶や清涼飲料水、コーラやブドウ味の炭酸ジュースと言ったポピュラーな品ぞろえがしてあった。
 ―― 一番上の段は。
 3段あるうちの真ん中の段、つまり2段目だ。
 左から見て行くと、カフェオレが2種類、オレンジジュース、その他すべて塩水。
 ……塩水?
「……塩水なんて誰が買うんだ?」
 しかも明らかに缶サイズなのに150円。
 高い、高すぎる。
 一番下の段は右半分がさっき言ったとおり「あったか〜い」缶コーヒーなどなど。
 左半分は普通の飲み物。
 いたって普通。
 それ故に、2段目の塩水が異様に目立つ。
 誰が何の目的でどの客層をターゲットにしておいたんだろう……。
「……まあ良いや……普通にスポーツドリンク買おう」
 勿論3本。
 自分が飲む分を減らされちゃ困るからな。

 買う物買って元の場所に戻る。
 それにしても3本って地味に持ちづらいな……。
 落してしまいそうだ。
 ……お、奏がこっちに背中を向けてしゃがんでいる。
 初音の相手をしているようだ。
 今の隙に――
「だーれだ」 
 ぴとっ。
「ひゃんっ!?」
 スポーツドリンクのペットボトルを右の頬につけてやったら予想通り声上げて飛び上がった。
 初挑戦でも上手く行くもんだなこういうの。
 奏は頬を押さえながら振り返る。
 そして俺の姿を捉えて、
「結弦ぅ……」
 頬を膨らませて俺を睨んで来た。
 ……どうやら怒らせてしまったようだ。
「わりぃわりぃ。はいよ、2人の分も買ってきた」
「えっ!?ホント!?」
 初音が大声で喰いついてきた。
 オイ、疲れたんじゃないのか。
 二人にスポーツドリンクを手渡し、
「さて、そろそろ出発するぞ」
 と言った。
「あ、あと初音、俺の背中に乗れ」
 しゃがんで乗りやすいようにしてやる。
 どうせだっこしなかったら何か後で言われそうだからな。
「うん!」
 顔を綻ばせて喜んだ初音が凄い勢いで乗ってきた。
 ……流石は我が妹……!
 遠慮と言う言葉を知らないぜ……。
「よぉし、出発だ―!」
 初音を乗せたまま立ち上がって言った。
「「おーー!」」
 それに反応してくる奏と初音。
 ……初音、首しまってる。

Angel Beats! Discrepancy 1-3

「ネット使って調べるから、ちょっと貸してくれ」
 奏に携帯を借りて、どの駅で降りれば遊園地に一番近いかを調べる。
 ちなみに遊園地と言っても某ネズミが居る所じゃなく普通の遊園地だ。
 学校が休みなおかげで普通の遊園地でも客はいっぱいらしい。
 でも予約とっといたから大丈夫だろう。
 えーと、・・・。
 行く遊園地の名前と、最寄駅を入力して検索する。
 あったあった。
 なるほど、その駅か。
「奏、センキュー」
「分かったの?」
「ああ。おかげさまでな」
 と、そこに。

『間もなく電車が参ります。白線の内側に――』

 ちょうど電車が来た。
「タイミング良かったね」
「うん!」
 奏と初音が何か話している。
 それにしてもタイミング良いなこの電車。
 かなり空いている。
 やっぱりほとんど車で行ってるのか?
 ・・・と思ったら結構乗ってきた。
 最初の方に並んでて後ろ見なかったから気付かなかったのか・・・。
「あ」
 奏が何か声を挙げた。
 ・・・どうやらお年寄りに席を譲っているみたいだ。
「良くできるな。俺だったら声さえ掛けられないかもしれない」
「そう?結弦ならバンバン声かけそうだけど」
「バンバンって何だよ」
「ふふっ」
 少し会話を交わして、ふと二人同時に後ろ、つまり窓を見た。
 ・・・少し前通ったところが住宅街だったことが信じられないくらいにきれいな海だった。
「・・・綺麗ね・・・・・・」
「・・・ああ・・・・・・」
 ・・・前にこんな海なんてあったっけ・・・?
 少し疑問に思わないでもないが、あまり深く考えないことにした。
 
「そろそろね」
 奏が言った。
 確かに後少しだった。
 少し減速を始めている。 
「初音、そろそろ降りるぞ」
 初音に声をかけ、手を持って立たせる。
 因みにあの後俺も席を譲った。
 良いことをするとすがすがしい。
「ふわぁ・・・」
 あれ、初音が眠たそうにしている。
 ・・・おんぶでもしてやるか。
「おんぶしてやるから、少し寝てろ」
「・・・う・・・ん」
 もう下手したらすぐ寝てしまいそうなほどだ。
 
『――駅です。忘れ物の無いように――』
 
 ついた。
 奏と目を合わせて、電車を降りる。
「ふぅー・・・んっ・・・」
 奏が背伸びをしている。
 ずっと立ってたから疲れたんだろう。
「ここからは歩きだから少し疲れるぞ?休むか?」
「ん・・・大丈夫」
「そっか。じゃあ行くぞ」
 目的地までは1km近く。
 歩いて20分も掛からないだろう。
 俺たちは、遊園地へ向かって歩き始めた。

Angel Beats! Discrepancy 1-2

駅。
 この家から歩いて直ぐにある駅は、なかなかに大きくて、しかも駅構内にショッピングセンターがあり、自然にも恵まれていて、かなり人気のある駅だ。
 良く家族で旅行に行く時に使った覚えがある。
「奏」
 俺が呼ぶと、奏はこっちを向いた。
「何?結弦」
「奏ってあの駅使ったことあるのか?」
 何となく聞いてみた。
 俺の質問に奏は少し考えて、
「1回もない、と思う」
 と答えた。
 あれ?1回小学生の時に二人で使わなかったっけな。
 俺の思い違いだろうか。
 さっきも言ったとおり、直ぐ近くにある駅なので、もうそろそろ着く。
 住宅街からだんだん都会になりつつあるせいか、バスの本数が増えたり、少し大きいマンションが建ち始めたりしている。
 それでも自然が損なわれていないのは褒めるべきだろう。
 まあ、その自然も核には歯が立たないんだろうけど。
「・・・・・・」
「お兄ちゃん、どうしたの?」
 少し考えていたら初音が話しかけてきた。
「いや、何でもないさ。それより、見えてきたぞ」
 目の前に巨大な建物が現れた。
 鉄筋コンクリート建てなのに、どこか無機質さを感じさせないのは、植物が周りにあるからだろう、と俺は勝手に思ってる。
 踏切の音が一定のリズムで聞こえてきた。
「大きい・・・」
 奏が呟いていた。
 おそらく無意識のうちに出たんだろう。
「駅の中に入るぞー」

 駅の中は意外ときれいだ。
 俺が子供の時に『10周年感謝祭』とかショッピングセンターがやっていたのが信じられないくらいに。
 切符を買ってホームに並ぶ。
「そういえば結弦って」
 ホームに並んでいると、奏が話しかけてきた。
「何だ?」
「どこの駅で降りるか知ってる?」
 ・・・・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・あ」
 ・・・・・・調べてない。
「その顔は『俺調べてなかった』って言う顔ね」
「う」
 図星だった。
 そうだ・・・調べておかなければいけなかったんだ。
「・・・どうするの?」
「・・・携帯って持ってるか?」
 ちなみに俺は持っていない。
「持ってるけど・・・携帯なんか何に使うの?」
「・・・はぁ?」
 予想外の質問だった。
 俺は戸惑う。
「・・・・・・一応聞くが奏、携帯の機能の代表的なものを挙げてみろ」
 ちなみに設定上では今は2030年だ。
 ・・・って俺はいったい何を言っているんだ。
「・・・・・・電話」
「他は?」
「メール」
「んで?」
「もうないわ」
「・・・・・・奏、お前の携帯見せてみろ」
 俺は奏が差し出した携帯を見た。
 ・・・最新機種だ。
「・・・お前はどれだけ機械に疎いんだ・・・・・・」
 古い奴でも余裕でネット使えるのに・・・。

Angel Beats! Discrepancy 1-1

『先日発表された計画について、内閣総理大臣が記者会見を行うようです。中継の岩村さん?』

『――はい、こちら現場です。未だ姿が見えませんが、一体どうしたのでしょう――来ました!内閣総理大臣です!』

 
 テレビの音が鳴り響いている。
 4日前発表された計画で、マスコミは大慌てだ。
 どうやら非核三原則をガン無視して核兵器を作り、お隣さんを警戒させるようだ。
 折角100年前に決められたってのに、政府は何を考えているんだろうか。
 まあ、こっちが持ってればお隣さんも、警戒して撃っては来ないだろうけど。
 しかし、一体何で学校まで休みになるんだろう。
 そりゃ嬉しいさ。
 嬉しいのはあるけど・・・。
 幾らなんでも学校は普通に授業してても良いんじゃないか?

 因みに、俺の名前は音無結弦。
 今日は幼馴染の立華奏と遊園地に行き、そこで他の友人十数名と合流し、帰ってきたら俺の家でお泊まり会をする算段だ。
 俺の家は広いし、両親も仕事で二人とも抜けてるから、二日三日なら大丈夫だ。


 ピンポーン

 …来た。
 幼馴染にはありがちなことで、奏は俺の家の隣に住んでいる。
 そしてなんと部屋が窓で向かい合っていて、窓を開ければすぐ会えるというお墨付きだ。
 どうやら俺の両親と奏の両親が仲が良好らしく、ほぼ同時期に子供が生まれ、しかも異性同士という事で、この二人も仲良くできるように、という理由でそうなったらしい。
 「おい初音、準備出来たか?」
 妹である初音も、今日は一緒に行く。
 小さい頃は病気ばかりしてたのに、今じゃすっかり元気だ。
 「うん!」
 「よし、じゃあ出発しよう」
 初音は自分の水筒と遊園地のフリーパスを持った。
 さて、俺も荷物を持って奏を迎えに行きますか。

 「あっ、結弦、おはよう」
 扉を開けると、奏が立っていた。
 当たり前か。
 呼びに来てるんだから。
 「おう、おはよう」
 挨拶を返し、後ろを向いて扉の鍵を閉める。
 「お姉ちゃんおはよー」
 「初音ちゃん偉いねー、おはよう」
 初音は何回か奏に会ったことがある。
 そして結構仲が良い。
 一人っ子の奏としては妹のような存在なんだろう。
 ・・・俺の妹なんだけど。
 「よし、行くか」
 鍵を閉めて奏の方を振り向く。
 すると、どこか違和感を感じた。
 「奏、髪切ったのか?」
 素直に疑問をぶつけてみる。
 「うん、切ったよ。・・・どう?」
 「ああ、良く似合ってるよ」
 「ありがと」
 短い会話を交わして、俺たちは駅へ歩き始めた。

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