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タクシーに乗ってからも強い揺れは続き
ぐわんぐわんと揺れる電線は今にも切れそうで
地面は隆起し、不気味にタクシーごと持ち上げた
お嬢を見ると
ずっとカゴの中から私の顔を見ていた
隙間から手をそっと入れて頭を撫でる
いつもはプイっと顔をそらすのに大人しく撫でられて
私の目を見てそらさなかった
実家へ到着し父の無事な姿を見て私はやっと少しホっとした
しかし父は明らかに様子が変だった
数分おきに襲ってくる地震に怯え、すぐ逃げられるようにと
開け放したままの玄関で一晩過ごすと言い出した
外は雪が降り出し、電気も止まった家は中も外も真っ暗で
暖房もなく体感温度は氷点下
そんな雪が吹き込む玄関先で、父は地震が来るたび
「逃げろ!」「地震だ!」と大声で叫んだ
父はパニックを起こしていた
最初は私も怖くて一緒に外へ飛び出していたけど
次第に落ち着いてくると、お嬢もカゴの外へ出たいと訴え出した
トイレとご飯の準備をし、開け放した玄関から吹き込む冷気に
耐えられるようにと毛布を何枚も出し、お嬢をくるみ眠らせた
そしてお嬢が幼少期に使っていた首輪やリードがあったのを
思い出し、万が一を考え準備した
「良かった・・・実家に色んな物おいてて」
お嬢は大人しく、こちらの言うことをきちんと聞いてくれた
問題は父だった
揺れるたび家を出たり入ったりする父の体には雪が降り積もり
なだめて部屋へ連れて来ても、ちょっとの揺れでまた飛び出す
真っ暗い部屋で、体も凍る寒さと、強い揺れが続く中、
パニック状態の老いた父と、老いた愛猫の世話
時計はまだ夕方6時前後をさしていた
「これを一晩中繰り返すのか・・・」
寒さと暗闇で心細くなった
私一人でこの二人を守れるだろうか?
ライフラインは全滅し、
携帯電話もどこへ電話しても、どこへメールしても
全く繋がらないまま充電だけは、どんどん減っていく
早く朝が来て欲しい!
せめて明るい日差しが欲しい!
そんな時、ずっと繋がらなかった父の携帯が鳴った
つづく
津波で流されてきたガレキの片付け中
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東日本大震災日記
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