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「ここにいちゃダメだ 部屋から出よう」
私の足元にぴったりくっついて離れない
お嬢を見て、逃げようと思った瞬間
「ドォンドォンドォン」という揺れの間隔が
「ド ド ド ド ド」
急に短く、強くなった
「死ぬ」
直感的に思った
咄嗟にお嬢を抱き、歩き出すものの
ほんの数歩が歩けない
真っ直ぐ歩くつもりがガクっと膝をつく
廊下に出ると
戸棚の扉は開き、頭上から土鍋やフライパンが降る
ラックは倒れ、足元には炊飯ジャーやトースターが転がり
電子レンジの上を歩いて逃げた
「どうしよう 1階まで下りようか?」
駐車場は何もなくて安全だけど4階から
お嬢を抱いたままでは転ぶ危険が大きい
ここで私が足をくじいたり、骨折したらどうなる?
お嬢は?
階段を下りることは諦め
ひたすら揺れが弱まるのを玄関先で待ちながら
頭の中は何を持って逃げるか?
それしか考えていなかった
カゴ(お嬢のキャリーバッグ)
お金
フード
ひたすらこの3つを呪文のように唱え
一瞬、揺れが弱まったのを見計らい部屋へ戻ったけれど
カゴはガレキの一番下に埋もれていた
強い揺れの中、お嬢を片手に抱いたまま
掘り出すのは無理・・・・どうしようか・・・・
すると、ぽっかり出来た空間が目に入った
いつもは物が置かれていたキュリオスケースの上
壁との隙間にきっちり挟まれ倒れる危険も
物が落ちてくる危険もない安全な空間は
丁度、お嬢分だけあった
お嬢をそこへ乗せようと私の体から引き離すと
鳴いて嫌がり、乗せた後も私の所へ戻ろうと
飛び降りる仕草を何度も見せた
「大丈夫!すぐ見つけるから!大丈夫!」
飛び散った本や鞄の下からカゴを引っ張り出し
階段の踊り場で、お嬢をカゴに入れた
「ここが今のところ一番、安全」
そう確認すると、また揺れる部屋へ戻り
お金と、お嬢のフードを探した
どちらも掘り返さないと見つけられない
コンタクトレンズや家の鍵など小さな物は
とてもじゃないけど探し出せない
鍵をかけずに部屋を離れるのは気がかりだったけど
一刻も早くここから離れたかった
その一心でお嬢を抱き、慎重に階下へ降りると
偶然にも一台のタクシーがやってきた
すぐさま飛び乗り、私は実家へ向かった
お嬢はずっと私の顔を見つめたまま無言だった
しかし助けを求めて向かった実家で
別な問題が待っていた
つづく
津波で流されてきた乗用車
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