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平成21年4月28日(火)今朝:厚労省「新型インフルエンザ」発生を宣言。 豚インフルエンザが世界各地で拡大している事態を受け、世界保健機関(WHO)は27日夕、2度目の緊急委員会を開き、警戒レベルを現在のフェーズ3から4に引き上げることを決めた。スペインと英国で同日、欧州初の感染例が確認されるなど、感染がメキシコ、米国、カナダ以外にも急速に拡大する様相を呈していることから、感染拡大を防ぐために早急な対策が必要と判断した模様だ。 ただ、WHOのケイジ・フクダ事務局長補は「各国に対して国境の閉鎖や渡航の制限は勧告しない」と述べた。従来のフェーズ3は「動物から人への感染」「人から人への感染は限定的」だったが、「人から人への感染が増加」を示すフェーズ4に引き上げられたことで、フェーズ6(世界大流行=パンデミック)に至る流れを食い止めるための措置が各国で検討されることになる。人の移動や経済活動には大きな影響が出そうだ。 ◇ 厚労省「新型インフルエンザ」発生を宣言 WHOが豚インフルエンザの「警戒レベル」を「フェーズ4」に引き上げたことを受け、厚労省は28日、感染症法で定める「新型インフルエンザ」が発生したと宣言した。 舛添厚労相は28日午前7時過ぎに会見を行い、「継続的に人から人への感染が見られる状態になったとして『フェーズ4』宣言が正式に出されました。こうした事態を受けて、厚労省としてはメキシコ、アメリカ、カナダにおいて、新型インフルエンザ等、感染症が発生したことをここに宣言します」と述べた。 厚労省は、さらに検疫の強化を行う方針で、国民に対しても冷静な対応と、マスクや手洗い、うがいなどの予防策の徹底を呼びかけている。 ※ WHOは「新型インフルエンザの感染者・感染地域の封じ込めはしない」としている。日本国内には、まだ感染の疑いのある例は見つかっていないが、厚労省はウイルスの国内侵入を是が非でも阻止すべく、水際対策を強化する方針だ。鳥インフルエンザよりも毒性が弱いということは、より広範囲に汚染される可能性を秘めるものだ。 4月28日は、中里介山忌です。 ◇ 中里介山(1885年〜1944年、本名:中里弥之助) 「大菩薩峠 甲源一刀流の巻」 中里介山 (冒頭部分要約) この小説「大菩薩峠」全篇の主意とする処は、人間界の諸相を曲尽して、大乗遊戯の境に参入するカルマ曼陀羅の面影を大凡下の筆にうつし見んとするにあり。この着想前古に無きものなれば、その画面絶後の輪郭を要すること是非無かるべきなり。読者、一染の好憎に執し給うこと勿れ。至嘱。 著者謹言 大菩薩峠は江戸を西に距(さ)る三十里、甲州裏街道が甲斐国東山梨郡萩原村に入って、その最も高く最も険しきところ、上下八里にまたがる難所がそれです。 標高六千四百尺、昔、貴き聖が、この嶺の頂に立って、東に落つる水も清かれ、西に落つる水も清かれと祈って、菩薩の像を埋めて置いた、それから東に落つる水は多摩川となり、西に流るるは笛吹川となり、いずれも流れの末永く人を湿おし田を実らすと申し伝えられてあります。 「お爺さん――」 よく澄んだ子供の声がします。見れば一人は年寄で半町ほど先に、それと後れて十二三ぐらいの女の子――今「お爺さん」と呼んだのは、この女の子の声でありました。 右の二人づれの巡礼の姿を認めると、何と思うてか武士は、つと妙見堂のうしろに身をかくします。木の上では従前の猿が眼を円くする。 「やれやれ頂上へ着いたわい、おお、ここにお堂がござる」 年寄の方の巡礼は社の前へ進んで笠の紐を解いて跪(かしこ)まると、「お爺さん、ここが頂上かい」 面立の愛らしい、元気もなかなかよい子でありました。 「これからは下り一方で、日の暮までに河内泊りは楽なものだ、それから三日目の今頃は、三年ぶりでお江戸の土が踏める――さあお弁当をたべましょう」 老爺は行李を開いて竹の皮包を取り出すと、女の子は、「お爺さん、その瓢箪をお貸しなさい、さっきこの下で水音がしましたから、それを汲んでまいりましょう」「おおそうだ、途中で飲んでしまったげな。お爺さんが汲んで来ましょう、お前はここで休んでおいで」 腰なる瓢箪を抜き取ると、「いいのよ、お爺さん、あたしが汲んで来るから」 女の子は、老人の手から瓢を取って、ついこの下の沢に流るる清水を汲もうとて山路をかけ下ります。 老人は空しくそのあとを見送って、ぼんやりしていると、不意に背後から人の足音が起ります。 「老爺(おやじ)」それはさいぜんの武士でありました。 「はい」 老爺は、あわただしく居ずまいを直して挨拶をしようとする時、かの武士は前後を見廻して、「ここへ出ろ」 編笠も取らず、用事をも言わず、小手招きするので、巡礼の老爺は怖る怖る、「はい、何ぞ御用でござりまするか」 小腰をかがめて進み寄ると、「あっちへ向け」 この声もろともに、パッと血煙が立つと見れば、なんという無残なことでしょう、あっという間もなく、胴体全く二つになって青草の上にのめってしまいました。 「お爺さん、水を汲んで来てよ」 瓢箪を捧げた少女は、いそいそとかけて来たが、老人の姿の見えぬのを少しばかり不思議がって、「お爺さんはどこへ行ったろう」 お堂の裏の方へでも行ったのかしらと、来て見ると、「あれ――」 瓢(ふくべ)を投げ出して縋りついたのは老人の亡骸でした。「お爺さん、誰に殺されたの――」 亡骸をかき抱いて泣きくずれます。 ※ 市川雷蔵も良かったが、仲代達矢の机竜之助は鬼気迫る妖剣ぶりだった。そして、何よりも三船敏郎演ずる島田虎之助の豪剣が凄まじかった。岡本喜八監督で1966年の作品。 沢井道場音無しの勝負というのは、ここの若先生、すなわち机竜之助が一流の剣術ぶりを、そのころ剣客仲間の呼慣わしで、竹刀にあれ木剣にあれ、一足一刀の青眼に構えたまま、我が刀に相手の刀をちっとも触らせず、二寸三寸と離れて、敵の出る頭、出る頭を、或いは打ち、或いは突く、自流他流と敵の強弱に拘らず、机竜之助が相手に向う筆法はいつでもこれで、一試合のうち一度も竹刀の音を立てさせないで終ることもあります。机竜之助の音無しの太刀先に向っては、いずれの剣客も手古摺らぬはない、竜之助はこれによって負けたことは一度もないのであります。 竜之助の前には、宇津木の妹という、島田に振袖を着て、緋縮緬の間着(あいぎ)、鶸色繻子(ひわいろじゅす)の帯、引締まった着こなしで、年は十八九の、やや才気ばしった美人が、しおらしげに坐っています。「お浜どのとやら、御用の筋は?」 竜之助の問いかけたのを待って、「今日、兄を差置き折入ってお願いに上りましたは」 歳にはませた口上ぶりで、「ほかでもござりませぬ、五日の日の御岳山の大試合のことにつきまして……」 竜之助もいま帰って、その組状を見たばかりのところでした。そうして机の上に置かれた長い奉書の紙に眼を落すと、女は言葉を継いで、「その儀につきまして、兄はことごとく心を痛め、食ものどへは通らず、夜も眠られぬ有様でござりまする故、妹として見るに忍びませぬ」「大事の試合なれば、そのお心づかいも御尤もに存じ申す、我等とても油断なく」 素気(すげ)なき答え方。女は少し焦(せ)き込んで、「いえいえ、兄は到底あなた様の敵ではござりませぬ、同じ逸見の道場で腕を磨いたとは申せ、竜之助殿と我等とは段違いと、つねづね兄も申しておりまする。人もあろうに、そのあなた様に晴れのお相手とは何たること、兄の身が不憫でなりませぬ」 「剣を取って向う時は、親もなく子もなく、弟子も師匠もない、入魂(じっこん)の友達とても、試合とあれば不倶戴天の敵と心得て立合う、それがこの竜之助の武道の覚悟でござる」 竜之助はこういう一刻なことを平気で言ってのける、これは今日に限ったことではない、常々この覚悟で稽古もし試合もしているのですから、竜之助にとっては、あたりまえの言葉をあたりまえに言い出したに過ぎないが、女は戦慄(みぶるい)するほどに怖れたので、「それはあまりお強い、人情知らずと申すもの……」 涙をたたえた怨みの眼に、じっとお浜は竜之助の面を見やります。 竜之助の細くて底に白い光のある眼にぶつかった時に、蒼白かった竜之助の顔にパッと一抹の血が通うと見えましたが、それも束の間で、もとの通り蒼白い色に戻ると、膝を少し進めて、「これお浜どの、人情知らずとは近ごろ意外の御一言、物に譬うれば我等が武術の道は女の操と同じこと、たとえ親兄弟のためなりとて操を破るは女の道でござるまい。いかなる人の頼みを受くるとも、勝負を譲るは武術の道に欠けたること」「それとても親兄弟の生命にかかわる時は……」「その時には女の操を破ってよいか」 宇津木文之丞と机竜之助は左右にわかれて両膝を八文字に、太刀下三尺ずつの間合をとって、木刀を前に、礼を交わして、お互いの眼と眼が合う。山上の空気がにわかに重くなって大地を圧すかと思われる。たがいの合図で同時に二人が立ち上る。竜之助は例の一流、青眼音無しの構えです。その面は白く沈み切っているから、心の中の動静は更にわからず、呼吸の具合は平常の通りで、木刀の先が浮いて見えます。 そのうちに少しずつ文之丞の呼吸が荒くなります。竜之助の色が蒼白さを増します。両の小鬢のあたりは汗がボトボトと落ちます。今こそ分けの合図をと思う矢先に、今まで静かであった文之丞の木刀の先が鶺鴒の尾のように動き出してきました。業をするつもりであろうと、一心斎は咽喉まで出た分けの合図を控えて、竜之助の眼の色を見ると、このとき怖るべき険しさに変っておりました。文之丞はと見ると、これも人を殺し兼ねまじき険しさに変っているので、一心斎は急いで列席の逸見利恭(へんみとしやす)の方を見返ります。 逸見利恭は鉄扇を砕くるばかりに握って、これも眼中に穏かならぬ色を湛えて、この勝負を見張っていたが、「分けよう」という一心斎が眼の中の相談を、なぜか軽く左右に首を振って肯いません。一心斎は気が気でない、彼が老巧な眼識を以て見れば、これは尋常の立合を通り越して、もはや果し合いの域に達しております。社殿の前の大杉が二つに裂けて両人の間に落つるか、行司役が身を以て分け入るかしなければ、この濛々と立ち騰った殺気というものを消せるわけのものではない。今や毫厘の猶予も為し難いと見たから、「分け!」 これは一心斎の独断で、彼はこの勝負の危険を救うべく鉄扇を両刀の間に突き出したのでしょう、それが遅かったか、かれが早かったか、「突き!」 文之丞から出た諸手突きは実に大胆にして猛烈を極めたものでした。五百余人の剣士が一斉にヒヤヒヤとした時、意外にも文之丞の身はクルクルと廻って、投げられたように甲源一刀流の席に飛び込んで逸見利恭の蔭に突伏してしまいました。 机竜之助は木刀を提げたまま広場の真中に突立っています。 |

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