今日の出来事ロジー

7月19日は、 河合隼雄 の命日です。

折りにふれ思う

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津波てんでんこ

 ◇ 『津波てんでんこ』(近代日本の津波史) 山下文男:著

    新日本出版社 (2008/01)  

 近代日本で第二の大災害と言われる三陸を襲った明治29年(1896年)の大津波。約2万2000人(死者・行方不明者21,959人)の尊い命が波に消えた。綾里白浜では、最大波高38.2mを記録し、1269人(住民の56.4%)が亡くなった。そしてこの津波の特徴は、「ヌルヌル地震」とか「スロー地震」と呼ばれ、震度2.3という小さな地震発生後、30分から1時間後に津波が襲来した。全くの不意打ちであったという。

 その悲劇から37年後の昭和8年(1933年)、再び津波が三陸海岸を襲った。M8.1 の地震により綾里では最大、28.7mの津波が発生し、岩手県内では死者約2600人、流失、倒壊家屋約6000戸という大惨事になった。しかもそれは、二年前からの昭和東北大凶作(1930〜34年)という状況下で起ったのだった。三陸はその後も、1960年(昭和35年)のチリ沖地震(M8.5)の22時間後に津波に襲われている。この数度の災害を経験した綾里では、昭和津波の翌年、集落全体で高所移転を決断する。その後、防潮堤も建設された。 また、教訓を後世に残そうと津波伝承碑や津波避難の看板を住民自ら建設した。今後、最も発生確率の高いといわれる宮城県沖地震による津波も懸念されている … 。


 ◇ 津波の語り部・津波研究家 山下文男さん(82)

 「津波の時は、海の底から波が巻き上がってくるんだよ。津波の後、いつも海底の砂にくっついているカレイが打ち上げられているのを見ると分かるでしょ。台風の時の波とは違うんだよ。大きな岩も打ち上げられたんだよ。それだけ怖いもんなんだよ」と子供達に語るのは、津波研究家、山下文男さん(82)だ。

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 津波が発生した場合、波高が高くなりやすい急峻なリアス式海岸である三陸海岸には、明治の津波以降、「津波てんでんこ」という言い伝えがある。津波の時は、事前に認め合った上で「てんでんバラバラ」に逃げて一族共倒れを防ごうという意味なのだ。 明治の津波の際に夫婦、親子で、それぞれが互いを助け合おうとして、多くの人びとが共倒れになっていったのだ。「津波てんでんこ」は、極限状況での誠に悲しい苦渋の決断なのだ。

 山下さんは小学校三年生の時、郷里の綾里で昭和津波に遭い親戚、友達を多く失った。山下さんの父親は一目散に自分ひとりで逃げ、山下少年も負けずに自力で逃げのびて助かった。日頃から「津波の時は、てんでんこやっ!」と言い続けてきた父親も、また祖父から「てんでんこ」を聞いて育ったと言う。 「父親は『てんでんこ』の権化のような人だった」と、山下さんは笑う。

 「たとえ親子でも自分の命は自分で守る。それが防災の基本だ」と語る。だが、「てんでんこ」ではあるが、地域防災などで高齢者や障害者などの災害弱者(災害時要援護者)の避難も合わせて考えなければいけない事も強調する。そして津波体験者が高齢化する中、風化への危惧から次世代の「語り部」ボランティアの必要性も説く。チリ津波の時は余裕があったので、バイクを押していた人やランドセルを背負って避難した小学生がいたと言う。

 だが、山下さんは「津波はそんなもんじゃない、恐ろしいもんなんだ。とにかく一分一秒でも早く逃げる事だ」と力説し、津波のタイプがそれぞれ違う事も伝えなくてはと語る。山下さんは自分の体験したあの日から73年後の今も郷里の学校や公民館で子供達に「津波」を語り続けている。

  山下文男(やました ふみお)

 1924年、岩手県三陸海岸生まれ。大船渡市綾里地区在住。明治の三陸津波で一族8人が溺死。自らも少年時代に津波を体験。1986年以降、「歴史地震研究会」会員として著作と津波防災活動に従事。 著作は、『哀史三陸大津波』(青磁社)、『戦時報道管制下・隠された大地震津波』(新日本出版会)、『津波ものがたり』、『星はうつり雲は流れても−東南海大地震秘話』(童心社)、『津波−TUNAMI』(あゆみ出版)、『君子未然に防ぐ−地震予知の先駆者・今村明恒の生涯』(東北大学出版会)、『昭和東北大凶作−娘身売りと欠食児童』(無明舎)、1991年『津波ものがたり』で「日本科学読物賞」、「北の児童賞」受賞。2000年「日本自然災害学会賞」功績賞受賞。2003年「平成15年度防災功労者表彰(内閣府、防災思想の普及)、2006年「『岩手日報』社文化賞」を受賞。




 ◇ 悲しいけれど、人間の歴史は同じ過ちの際限ない繰り返し …

  「防波堤があろうがなかろうが、自分の命は自分で守る意識が大切だ」

 明治三陸大津波から百年の追悼式典が、1996年に岩手県田老町で執行されました。山下文男氏も参列された。 折りしも4ヶ月前(2月17日)に、ニューギニア沖地震(M8.2)が発生したばかりの時期だった。当然のことながら、太平洋沿岸に津波警報が発令された。ところがである。 三陸沿岸の住民の96%が避難勧告を知りながら、「我が家だけは安全だと思った」という理由から避難せず、実際に避難した人はわずかに19%のみだった。多くの人々が日本最高級の高さ10mの防波堤があるからと、安心しきっていた。 式典で山下文男氏は、声を大にして叫んだのであります。

  「防波堤があろうがなかろうが、自分の命は自分で守る意識が大切だ」

 ※ 私たちが、決して口にしてはならない言葉があります。
 「二度と同じ過ちを繰り返しません」
 曰く、愚者は体験に学び、賢者は歴史に学ぶ。


 『巌手広報』(明治29年7月1日)災地出張日誌(6月27日、宮古町に於て)

 田老は甚しと人は皆云へり。災害の翌日などに見たる人は一面是れ河原の如く此処は町村にてありしかと疑う許りなり。而して泥沙の中より隻手抜んであるあり。両脚のみ現はるゝあり。頭半分出たるもあり。丸で人間の沙漬を見たる如しと。嗚呼今年は吾県下に於て実に幾多の地獄を作り倣されたり。 家財破壊材は概ね海上に流亡し、陸上に存するもの僅に五分の一斗り。田老小湊等に於て生命を全ふせるもの最僅なる死屍発見の少なき亦怪しむに足らず。実に悲惨の極、県下又其比を見ざるべしと信ず。 広田村にては海中の死屍を捜索するが為め、魚網を卸して曳きしに、網に罹りて来りし者五十余人。余りに重くして曳き上ぐる能はず漸やく半分づつ分ちて陸に上げたりと。


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 ◇ 「日本一の防潮堤」無残 想定外の大津波、住民は茫然(3月20日)

 「日本一の防潮堤」「万里の長城」 … 。 住民たちは、そう呼んで信頼を寄せていた。岩手県宮古市田老地区にあった全国最大規模の津波防潮堤。だが、東日本大震災の未曽有の大津波にはなすすべもなく、多数の死者と行方不明者が出た。「今後、どうやって津波を防いだらいいのか」。住民たちは茫然としている。 「津波は堤防の倍くらい高かった」。防潮堤の近くに住んでいた漁師・小林義一さん(76)は顔をこわばらせて振り返った。11日の地震直後、いったん堤防に避難した。だが、山のような津波が海の向こうから押し寄せてくるのが見えたため、急いで丘に駆け上り、難を逃れた。自宅は押し流されて跡形もない。

 小林さんは「防潮堤は安心の拠りどころだった。『防潮堤があるから』と逃げ遅れた人も多かったのではないか。堤をもっと高くしないと、これでは暮らしていけない」。 約4400人が暮らす田老地区は「津波太郎」との異名がある。1896年(明治29年)の明治三陸津波で1859人が、1933(昭和8)年の昭和三陸津波で911人が命を奪われた。

 防潮堤は、昭和三陸津波襲来の翌1934年に整備が始まった。地元の漁師らによると、当時の田老村は、高所移転か防潮堤建設を検討。結局、海に近い所に住みたいとの村民の要望や代替地の不足から防潮堤建設を決断し、当初は村単独で整備を始めた。工事は中断を挟みながら段階的に進み、半世紀近く後の1978年に完成。総工事費は1980年の貨幣価値に換算して約50億円に上る。

 こうして出来上がった防潮堤は、海寄りと内寄りの二重の構造。高さは約10メートル、上辺の幅約3メートル、総延長約2.4キロと、まるで城壁のようだ。岩手県によると、二重に張り巡らされた防潮堤は世界にも類はない。総延長も全国最大規模という。1960年のチリ地震津波では、三陸海岸の他の地域で犠牲者が出たが、田老地区では死者は出なかった。日本一の防潮堤として、海外からも研究者が視察に訪れるほどだった。

 しかし、今回の津波は二つの防潮堤をやすやすと乗り越えた。海寄りの防潮堤は約500メートルにわたって倒壊し、所々にコンクリートの残骸が転がっていた。隣近所の多数の知人が行方不明になったという男性(45)は「津波の前では、頼みの防潮堤がおもちゃのように見えた。こんな津波を経験して、このまま田老で暮らせるのかどうか分からない」と泣きながら話した。

 今後の津波対策をどうするのか。漁師の川戸治男さん(69)は「漁師なら海の近くに住みたいと考えるだろうが、やはり高台の方に移住すべきではないか」と話す。 宮古市は津波防災都市を宣言している。地域振興課長の鳥居利夫さん(59)は「防潮堤は、これまで経験した大津波を想定して整備された。だが、今回は想定外だった。今後、どう津波対策を立てるのか。今のところ思いつかない」と肩を落とす。

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