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『ガラスの地球を救え』手塚治虫(光文社) 手塚治虫は1989年2月9日に他界しました。 この本は、未完のまま手塚氏が急逝したため、テレビ、雑誌などの発言なども加えて編集されたものです。 亡くなってから2ヶ月後の1989年4月に光文社からハードカヴァーで発行されました。 その文庫版です(1996年初版発行/光文社知恵の森文庫)。 ★目次 ・「ガラスの地球を救え」刊行によせて ・自然がぼくにマンガを描かせた ・地球は死にかかっている ・科学の進歩は何のためか ・アトムの哀しみ ・子供の未来を奪うな ・“いじめられっ子”のぼくをマンガが救った ・先生がマンガに熱中させた ・ぼくは戦争を忘れない ・語り部になりたい ・夢と冒険に生きる子に ・親は子に自分史を語れ ・時間の無駄遣いが想像力を育む ・やじ馬根性は健全なパワー ・ブラック・ジャックのジレンマ ・脳だけはつくれない ・情報の洪水に流されるな ・何が必要な情報か ・アトムも破れない壁 ・異文化との衝突 ・オリジナリティは遊びの中から ・路地裏こそ味がある ・蝶の匂いがわかるか ・人間の欲望 ・“悪”の魅力 ・負のエネルギー ・マンガは本来反逆的なもの ・ぼくは真剣なメッセージを送りつづける ・「火の鳥」が語る生命の不思議さ ・IFの発想 ・宇宙からの眼差しを持て ≪感想≫ これだけたくさんの目次ですが、簡潔で読みやすく、わかりやすい文章です。読んでいて全然苦になりませんでした。しかも内容が面白いからどんどんページが進んで行く。こんなに面白いエッセイは初めてです。 この本には、手塚治虫の本音がいっぱい書かれています。 ――幼いころから生命の大切さ、生物をいたわる心を持つための教育が徹底すれば、子供をめぐる現在のような悲惨な事態は解消していくだろうと信じます。 そのためには“豊かな自然”が残されていなければならない。 (中略)昆虫をちぎったり、カエルに息を吹き込んで破裂させたり…でもそれは、同じ生命あるものとして生きていく予行練習のようなものでしょう。そこでさまざまな生き物たちの死と生に出会って、生きることの喜びの裏側にある悲しみも、知らず知らず体の奥の方で理解していくのです。 昔、自分の家のすぐそばにある原っぱで、繰り広げられる小さな地獄の数々は、それでもタフに生き抜くことの喜びを教えてくれました。――本文より―― これにはひどく共感を覚えました。 私も田舎でトンボやセミなどの昆虫を殺して育ってきたからです。というか、田舎の小学生はだいたいみんな経験していることだと思います。 私は7年間東京で暮らしましたが、あんなに自然のない街で育った子供はどんな大人になるのだろう、と興味を持ちました。東京を出たことがないという若者と実際に話してみると、感性や想像力に欠けているのは明白です。都民の方々には申し訳ないのですが、何も感じなくても生きて行けてしまうのが都会なのだ、と私は結論を出しました。真剣に感動するものがないから、興味が持てず、とりあえず大学に行くけど将来何をしていいかわからない、という人はきっと感性が薄いのです。だって、世界にはこれだけ感動できるものがあるのに、他人事ではつまらないのは当たり前。決して本気に考えようとはしないのです。彼らは自分さえ守られていればそれで満足なのです。そのくせ不満も多くやたらと腹を立てます。本物の自然を体感してきてないから、感じる能力が乏しいし、淡白で好奇心も異様なほどありません。これが少数派であると良いのですが、私は感性の素晴らしい東京都民に会ったことがないからわかりません。東京の中心部はもはや人間の生きる環境ではありません。私はそう思って東京を離れました。 想像力の重要性。みずみずしい感性を育てる環境の大切さ。それは手塚氏に限らず多くの人が語っています。 手塚氏はずっと未来を予測していて、大切な子供たち(=未来人)に期待している、と語っていました。それは今の人類には期待できないということかもしれません。少なくとも、いま地球上にある問題はすぐに解決できるものではないのは確かです。 「われわれの論理はどうしても人間中心になります」という言葉を残した、ガモフという物理学者の宇宙論で「人間性原理」という考え方があるそうです。我々の住む地球をはじめ宇宙を、すべて人間中心に考えるという論法です。この論理によってこそ、自然破壊や資源の食いつぶしを来たしているといって間違いない、と手塚氏は言っています。 地球を死の惑星にはしたくない。 手塚治虫のその想いを叶えるために、いま私たちに出来ることはなんなのでしょう。 ちょっと前に、テレビでアトムの企画をやっていました。
これがアトムの初登場シーンらしいです。 |

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都会は人の欲望とストレス社会の象徴なのかもしれませんね。アトムの正装を初めてみたような。。ミチコさんは、幅広く本を読まれていますね。
2009/10/21(水) 午後 0:20
長文を読んで下さってありがとうございます。
ちょっと言いすぎだったな、と思ったけど、でも私の本心です(苦笑)
アトムの初登場シーンはサーカスの子供という設定らしいです(^^)
2009/10/21(水) 午後 0:35 [ ミチコ ]
手塚治虫さんは、作品から受ける印象と違っていて、かなり性格に問題があったそうですね。
特に他者に対する競争心が強く、自分の後継人を育てることができなかったのは、有名な話です。
虫プロのスタッフだった寺沢武一さんが、少年ジャンプで連載を開始したときに、手塚治虫さんが、あんなに頑張っていたのに、今までデビューさせなくてすみませんでしたとの内容のコメントを出したのが、とても印象に残っています。
石森章太郎さんのある作品を激しく批評して、その作品の連載を終了させたりと、色々な問題行動もありましたが、それだけ漫画という表現方法に真剣に取り組まれていた方でもあるのでしょうね。
私がいちばん大好きな手塚治虫さんの作品は、「未来人カオス」なんですよね。
スペースオペラの最高傑作だと思っているのですが、これも未完のままになったのが残念です。
2009/10/27(火) 午前 10:48
ゆーしさんコメントありがとうございます。
手塚治虫さんの人間性は調べたことがなかったので、初めて知りました。性格に問題のある人だったのですね。ゆーしさんのコメントを見て、自我の強い人だったのかなぁと思いました。
芸術家や作家には偏屈な人が多いようですし、きっと彼なりの情熱と信念があったのでしょうね。
私は学校の図書館にあった「ブラック・ジャック」くらいしかちゃんと読んだことがないので、手塚治虫さんの作品はもっと読みたいと思っています。
「未来人カオス」興味あります。
今度探してみます(^^)
2009/10/27(火) 午後 9:10 [ ミチコ ]