旧 東京倶樂部★CLUB TOKYO:平成館

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【2011年/中国・香港/119min.】
“桃姐”こと鍾春桃は、13歳で梁家に入り、以後60年間4世代に仕え続けるメイド。
梁家の多くは海外に移住し、今は映画プロデューサーとして働くこの家の息子Rogerとふたり暮らし。
ある晩帰宅したRogerは、脳卒中で倒れている桃姐を発見。
幸い命に別状は無かったものの、桃姐はこれを機に仕事を辞め老人ホームに入るとRogerに告げる。
桃姐の決意を受け入れたRogerは
この日から、多忙な仕事の合間を縫い、彼女のために奔走することになる…。
 
 
日本の配給会社に買われたと知った時から公開を心待ちにしていた許鞍華(アン・ホイ)監督最新作。
許鞍華監督作品が日本で一般劇場公開されるのは、もしかして『女人、四十。』(1995年)以来…?!
『デスパレート 愛されてた記憶』(2003年)は、DVD化こそされたが、劇場公開は無かったような…。
近年の作品は、映画祭では上映されているけれど、私はことごとく観逃しているので
恐らくこれは私にとって『おばさんのポストモダン生活』(2006年)以来のスクリーンで観る許鞍華監督作品。
 
この新作は、本作品のプロデューサーでもある李恩霖(ロジャー・リー)の実体験に基づく。
李恩霖は、この実話を<桃姐與我>という一冊の本にもまとめている。
 
では、どんなお話か。
主人公は、李恩霖を思わせる独身の中年映画プロデューサーRogerと、メイドの“桃姐”こと鍾春桃。
桃姐は13歳から60年も住み込みで梁家に仕えているが
梁家の人間はほとんど海外へ移住してしまったため、今はRogerの身の回りの世話だけをしている。
ふたりの間にはこれといった会話も無く、似たような日々が単調に流れていたが
ある日桃姐が突然脳卒中で倒れ、事態は一変。
桃姐が掛け替えのない人だったことに気付き、彼女のために奔走するRogerと
そんなRogerに迷惑を掛けまいとする桃姐。 本作品は、普遍的な問題“老い”を取り上げ
送る側と送られる側の最後の時間を細やかに綴った人間ドラマになっている。
 
住み込みのメイドを雇う家庭が日本より格段多い香港でも
同じ家で60年間何世代もに仕え続けるメイドは、今や珍しいものと思われる。
桃姐は、Rogerが生まれた時すでに梁家に居て
Rogerの親兄弟がこの家を出てからも、彼と暮らしているのだから
Rogerにとっては、他の誰よりも長く一緒に過ごしている人。もはや良くも悪くも空気のような存在の“身内”。
食事を用意してもらっても、いちいち「有り難う」なんて言わないし
会話を交わさなくても、気まずい空気など流れない。
ところが、そんな桃姐が倒れたことで、初めて彼女が掛け替えのない人だったと気付く。
“孝行したい時分に親は無し”にならなかったのが、不幸中の幸い。
Rogerは出来る限り自分の時間とお金を割き、桃姐に尽くすようになる。
それは意識したものではなく、勝手に湧き上がる感情に突き動かされた自然な行いにも見える。
 
一方、桃姐にとっても、生まれた時から世話をしているRogerは、実の息子同様の存在。
でもやはり“雇い主の息子”という遠慮が有るのであろう。
桃姐の一見素っ気ない言動のひとつひとつには
Rogerに負担を掛けたくない、面倒を掛けたくない、という控え目な思いが見て取れる。
そんな勤め先のお坊ちゃまRogerから“契媽/乾媽(義理の母)”と紹介された時の桃姐の喜びは
言葉では表せないものだったであろう。
 
 
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出演は、映画プロデューサー“Roger”こと梁羅傑に劉華(アンディ・ラウ)
メイドの“桃姐”こと鍾春桃に葉嫻(ディニー・イップ)
 
劉華は、本作品の企画に賛同し、共同プロデューサーを買って出て、無償で出演したという。
同世代の香港明星・梁朝偉(トニー・レオン)と比べ
劉華は中年以降もド派手なエンタメ作品への出演が多く、存在自体も“永遠のアイドル”的でより華やか。
そんな事から、地味男贔屓の私は、ついつい梁朝偉に傾くわけだ。
しかし、本作品を観て、劉華を見直してしまった。
そこそこに“イイとこの息子”でありながら、電気工と間違われてしまう冴えないRogerを演じる
いつになく質素な劉華が、いい味を出している。
また、劉華本人にしても、一方でエンタメ超大作でガンガン稼ぎつつ
もう一方で、この手の非商業作品を支え、香港映画界に貢献しているなんて、真のスタアだわ。尊敬。
 
 
 
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歌手で女優の葉嫻は、11年ぶりの映画出演にも関わらず
この桃姐役で、2011年第68回ヴェネツィア国際映画祭主演女優賞を見事受賞。
1947年生まれの葉嫻は、あともう300年は現役でイケそうなギンギンにパワーみなぎるおねぇ様で
本作品の桃姐とはまるで別人。実年齢より約10歳上のメイドさんを、スッピンで演じているのだろうか。 
それとも老けメイク?すごい枯れっぷり。
私、どんなにお金を積まれても、スッピンで人前に出るのなんてイヤ。 来世でも女優にはなれないワ。
もちろん葉嫻は老け顔を晒した勇気だけで讃えられているのではない。
さすがはヴェネツィア主演女優賞と納得させられる演技。
決して愛想は良くないけれど、奥床しい桃姐のちょっとした言動に、いちいち胸を締め付けられる。
 
 
 
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脇で注目の出演者は
Rogerに自分が経営する老人ホームを斡旋する草蜢役の黄秋生(アンソニー・ウォン)
その老人ホームに入居している堅叔役の秦沛(チョン・プイ)
そしてそこの主任・蔡姑娘役の大陸女優・秦海璐(チン・ハイルー)など。
 
黄秋生と秦沛が胡散臭い。いや、おかしな黄秋生は結構見ているので
普段善人や立派な紳士を演じる機会が多い秦沛の方が、これまでとのギャップが大きい。
秦沛扮する堅叔は、いつも人に300HK$をせびっては女遊びに行ってしまう色ボケじじぃ。
しょーもない老人だが、憎めないのは、秦沛の持ち味か。
 
 
 
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他にも、有名人がほんのチョイ役で多数特別出演。
歯科医役で杜汶澤(チャップマン・トー)が出演している他、許鞍華監督の“裏方仲間(?)”が本人役で。
それは例えば、本作品の製作総指揮で、博納影業集團総裁の于冬(ドン・ユードン)だったり
徐克(ツイ・ハーク)監督だったり、洪金寶(サモ・ハン・キンポー)だったり
劉偉強(アンドリュー・ラウ)監督だったり、大陸の寧浩(ニン・ハオ)監督だったり…。
徐克と洪金寶が並ぶと、どこかの“組”の幹部会っぽく、香港映画を地で行く迫力。
 
さらに細部に目をやると、于冬の北京オフィスに飾られているフォトフレームの中に
小いさぁーく写る王家衛(ウォン・カーウァイ)監督を発見。 (于冬とは『一代宗師』繋がり?)
 
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私の見間違いじゃないわよねぇ? …って事で、王家衛監督も、間接的に地味ぃーに出演していたと認定。
他に華やかなところでは、楊穎(Angelababy)などもやはり本人役で出ているはずなのだが
私、見逃したみたい。出ているとしたら、プレミア試写のシーンの可能性が高い。
 
 
 
高齢化がますます進んでいるせいか、“老い”をテーマにした作品は作り続けられている。
その多くは、年齢に捕らわれずチャレンジし続けたり、日々を活き活きと楽しむ老人を描く人生応援モノだったり
介護の苦労や大切な人との別れを描くお涙頂戴モノだったり。
本作品には、「あなたに勇気と元気を与えます!」といった頑張っちゃった感も無ければ
無駄に涙腺を刺激するようなドラマティックな演出も無い。
Rogerと桃姐の最後の時間を淡々と、でも細やかに追っているだけ。
なのに、その自然で抑えた表現から、 それぞれの人物の思いがリアルに汲み取れて、胸を打つ。
お涙頂戴系に慣れてしまっている人には、アッサリし過ぎかも知れないが
私自身は、映画でこんなに感動したのは久し振り。
もし私がまだ18歳だったら、同じ感動は得られなかったかも知れないけれど、この年になって観るとジーン…。
決して陽気な話ではないのに、気分が塞ぐわけでもなく、不思議な余韻に包まれる。
賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督作品でお馴染みのカメラマン余力為(ユー・リクウァイ)による映像も美しい。
屋外より屋内のシーンが多いように感じたが、それでもなぜか感じる香港のニオイ。
また、お世辞にも素晴らしいとは言い難い香港の老人ホームの環境には、考えさせられる。
 
日本に入って来る中華作品はそれなりに有るけれど、昨今その大半が歴史超大作やアクション巨編。
私が観たいと思うような作品の公開は減っているように感じる。
『桃さんのしあわせ』のような優れた小品がもっと公開されることを願う。
これ、もう一度映画館のスクリーンで観直したい。 時間的に無理かしら…。

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こんばんは。
現在東京にいるので、さっそく見てきました。
地味なアンディラウ、いいですよねぇ、あんなに作業服(ぽい服)が似合うなんて新しい発見でした。

思い出の写真などを眺めて、説明する桃さん。。いい表情ですよね。
「老い」というテーマに、血の繋がっていない家族を結び付けた、とても心に響く作品でした。
見てよかったです。

2012/10/29(月) 午前 7:03 [ iitsuma ]

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iitsumaさん:
東京へようこそ♪滞在楽しまれているでしょうか。
今日はカラッと晴天に恵まれて、ラッキーでしたね。

劉華ファンの方々は
いつまでもキラキラ若々しい劉華でいて欲しいのかも知れませんが
私はむしろ、本作品の質素で、年相応に枯れた感じの劉華の方が
よほど味が有って、魅力的に感じました。
作品自体も、静かにジワッとくる秀作ですよね。

2012/10/29(月) 午後 8:56 mango


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