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【2014年/フランス/106min.】
1957年、フランス領アルジェリア出身のイヴ・サンローランは
故クリスチャン・ディオールから後継者に指名され、21歳の若さでブランドを任される。
初めて手掛けたディオールのショーは大成功、
デザイナーとしてのキャリアを華々しくスタートさせたイヴであったが
生まれ故郷アルジェリアで独立戦争が激化し、フランス軍に徴兵、
ストレスから精神を病み、軍の病院に入れられてしまう。
その後、除隊するも、ディオール社は不当にも彼との契約を解除。
そこで、1962年、恋人ピエール・ベルジェと共に、自身のブランド“イヴ・サンローラン”を設立。
初めてのショーは賛否両論。その後もブランドは停滞気味。
そんなある日、イヴは、モンドリアンの絵画からインスピレーションを得て、斬新なドレスを発表。
この新作は世界中で話題となり、イヴは瞬く間にスターデザイナーの座に上り詰めていくが…。
 
 
ジャリル・レスペール監督作品。俳優出身で、本作品が長編監督3本目らしい。
監督のことは知らなかったが、2014年2月に開催されたベルリン国際映画祭で、本作品の存在を知り、
以後ずっと観たいと思っていた。
 
 
 
本作品は、フランスが生んだ世界的ファッションデザイナー、
イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent 1936-2008)の伝記映画
重点的に描いているのは、21歳でクリスチャン・ディオールの主任デザイナーとなる1957年からの約20年。
 
私が物心ついた頃すでにモード界の大御所だったイヴ・サンローラン。
…とは言うものの、1936年生まれといったら、野際陽子や楳図かずおと同じ年で、存命だったとしても78歳。
“歴史上の人物”と呼ぶには、まだまだ若い。
2002年、引退を表明した会見の模様も、それより前のバリバリ現役時代の様子も、よく覚えている。
2008年に亡くなった時は、葬儀の映像が日本のニュース番組でも流されたし、
翌年には、美術品コレクターだった氏が所有していた中国の銅像がオークションに出品され騒動になる等、
死後も何かと話題にのぼる。ちなみに、その中国の銅像というのは…
 
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成龍(ジャッキー・チェン)映画『ライジング・ドラゴン』のテーマにもなっている圓明園十二生肖獸首銅像。
イヴ・サンローランは、全12体の内、鼠と兎の2体を所有。
2009年のあのゴタゴタの後、この2体は再びオークションに出品され
イヴ・サンローランの他グッチやバレンシアガ等も傘下におくフランスのコングロマリット大手、
ケリング(PPR)社のCEOフランソワ・アンリ・ピノーが3億7千350万ユーロで落札し、
2013年6月、中仏友好の証しとして、中国政府に無償で“返還”している。
無償とは言っても、これで中国でのビジネスが円滑になるなら、安い3億7千350万ユーロなのであろう。
大きな商売をやるには、大きな投資が必要なのですね…。
いや、そんな事より、この一連のニュースで
私は、十二生肖の内2体がイヴ・サンローランの所有だった事を知ったわけで
世界的デザイナーというのは、国宝級のお宝をプライベートでコレクションできるほどの大富豪なのだと
つくづく驚かされたのであった。
 
 
余談が多くなったので、軌道修正。
この映画には、公私共にイヴ・サンローランを支えたパートナー、
ピエール・ベルジェ(Pierre Bergé 1930-)という、もうひとり重要な人物が登場する。
イヴ・サンローランが同性愛者だったことは誰もが知るところで
ピエール・ベルジェもしばしばメディアに出ており、 仕事の立場上、“裏方”ではあっても、
“日蔭の存在”という感じではない。
 
詰まる所、本作品で知るギョッとするような新事実は、ほとんど無い。
成功者のセックス、ドラッグ、同性愛も、60〜70年代を描く作品では珍しくないし。
それでも、その60〜70年代は、パリのモード界に勢いがあるから、流行の移り変わりや当時の風俗、
また業界を牽引していた人々の日常を覗けるのは、結構楽しい。
 
本作品は、ピエール・ベルジェ公認で、イヴ・サンローラン財団が全面協力しているというのも重要。
そのため、財団が所蔵する当時の貴重なホンモノの服が多数使われている。
 
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一世を風靡したモンドリアンドレスやスモーキングも勿論出てくる。
今見ても古さを感じさせないこれらのデザインが当時巻き起こしたセンセーションは
私の想像を遥かに超えるものだったに違いない。
 
さらに撮影は、イヴ・サンローランが実際に暮らしたアパルトマンや仕事をしたアトリエ、
“Jardin Majorelle(マジョレル庭園 )”と呼ばれるモロッコの別荘でも行われている。
 
 
 
 
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主人公イヴ・サンローランに扮するのはピエール・ニネ。私は初めて見る顔。 
1989年パリ生まれ、国立劇団コメディ・フランセーズに在籍する俳優さんなのだと。 
今回、新宿武蔵野館では、上映前に、ピエール・ニネによるヒット御礼のメッセージ映像(↓)が流された。 
 
 
喋っている言語は英語で、今どきのカッコイイ(でもおフランス的で雰囲気がある)俳優という印象。
 
実在の人物を扱う場合、扮する俳優が本人のイメージを壊さないことは重要。
そもそも実像が掴みづらい大昔の人物なら、観る側の許容範囲も広がるけれど
つい数年前まで生きていたイヴ・サンローランは、残されている映像も多く、実像が知られ過ぎている。
このような厳しい状況下で、ピエール・ニネのプレッシャーは大変なものだったのではないかと想像するが
なんの、なんの、ほとんどの観衆が納得するしかない程のソックリさんっぷり。
元々の顔立ちからして似ているのだろうが、度が強そうな黒縁眼鏡の奥で見開いた瞳、
首を曲げた前かがみの姿勢、煙草を持つ指先などなど、一挙手一投足がイヴ・サンローランの生き写し!
 
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特に、いつもスキ無くビシッとスーツで決めている姿や
白衣を着てアトリエで作業する姿は、私の記憶の中にあるイヴ・サンローランそのものであった。
 
20代前半で、役をここまで研究し尽くし、成り切れる俳優が
日本には一体何人居るだろうか…、と考えてしまった。 
日本のイケメン枠だと、佐藤健、永山絢斗、岡田将生などが1989年生まれらしい。頑張れぇ〜。
カッコイイだけでなく、実力も兼ね備えたピエール・ニネ、将来有望ですわ。
 
 
 
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公私共々イヴ・サンローランを支えたパートナー、ピエール・ベルジェに扮するのはギョーム・ガリエンヌ
こちらはソックリではないけれど、“ファッション業界に身を置く人”というより
実業家や銀行家のようなお堅い雰囲気が、ピエール・ベルジェ本人に重なる。
 
ピエール・ベルジェは、イヴ・サンローランと出逢い、すぐに恋に落ち、
「君には才能がある。他は全て僕が引き受けよう」と宣言。
その言葉通り、会社の経営は勿論のこと、繊細なイヴ・サンローランを精神的にケアし、尻拭いもし、
気が利かないイヴ・サンローランの代わりに、彼の両親にさり気なくフィアットを贈っておく周到さ。
まるで出来た女房か、無償の愛を子に注ぐ母。
そこまで尽くしているのに、ヒステリックに罵られたり、外に愛人を作られちゃうのだから
天才を支えるのって大変…。
仮にホモの男性に生まれ変わっても、ピエール・ベルジェ的な御奉仕人生は、私には務まりそうにないわ…。
(あっ、でも、50年後に莫大な遺産を遺してくれるって知っていたら、頑張れちゃうかしらー。
 
 
 
ちなみに、愛人というのは、元々カール・ラガーフェルドの恋人だったジャック・ド・バシェル(1951-1989)。
そこにイヴ・サンローランが加わり、カール・ラガーフェルドと愛人を共有することになる。
現在でも第一線で活躍するカール・ラガーフェルドが、実名でこのような過去を描く映画を許可するとは
なんとも心が広い。途中色々有っても、カール・ラガーフェルドはジャック・ド・バシェルとの恋人関係を
彼が死ぬまで続けたので、自分が“彼の最後のオトコ”という余裕が有るのだろうか。
 
逆に、カトリーヌ・ドヌーヴは、映画の中に一度も名前さえ出てこなくて、なんだか不思議。
 
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カトリーヌ・ドヌーヴは、映画『昼顔』(1967年)で衣装を担当してもらって以降、
イヴ・サンローランと生涯親友であり続けた女優。
オードリー・ヘップバーンといえばジバンシー、カトリーヌ・ドヌーヴといえばイヴ・サンローランであり、
イヴ・サンローランにとっても彼女は創造の源であり、気を許せる友であったはず。
なのに映画ではバッサリ割愛…?別に深い意味は無く、物語をコンパクトにまとめたいという監督の意向で
カトリーヌ・ドヌーヴに関するエピソードは思い切って端折ったのかも知れない。
それとも、カトリーヌ・ドヌーヴ側に、自分を登場させて欲しくない事情が有ったのだろうか。うーん、謎…。
 
 
 
 
一本の映画としての評価は平均点。
ピエール・ニネの“成り切りイヴ・サンローラン”は見もので、衣装や美術も目に楽しいけれど、
ストーリーに驚きや感動はほとんど無かった。
でも、現在小学生くらいの子たちが、20年後、30年後に本作品を観たら
「イヴ・サンローランってブランド名だと思っていたら、実在のすごいデザイナーだったのか…!」とか
「若い頃、コクトーやアンディ・ウォーホルとも交流していたの?!スゴイ時代だわぁ〜!」と
“歴史上の偉人”や輝かしい時代にワクワクするのかも知れない。
とにかく、フランスでなければ作れない、フランスならではの作品という点は、評価したい。
洋装の歴史が浅く、ここまでのレベルのデザイナーを輩出していない日本では
NHK朝ドラの『カーネーション』が精一杯かと…。
さすがはファッション大国、世界が食い付くこの手の“持ちネタ”が豊富だと、感心する。
 
イヴ・サンローランを主人公にした映画はもう一本、 『Saint Laurent』という作品が
2014年第64回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門に出品されている。
こちらでイヴ・サンローランに扮しているのはギャスパー・ウリエル。
一時期ココ・シャネルの映画が立て続けに何本か作られたけれど、今はイヴ・サンローランなわけね。
ギャスパー・ウリエルの『Saint Laurent』も、その内日本に上陸しそうな気がする。

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本編は未見なのですが、最新作の映画(イヴ・サンローラン)を観ました。1967年のシーンの会話の中に多分フランソワ・トリュフォー監督作品(暗くなるまでこの恋)の為の衣裳の打ち合わせ話が出て来ましたー。此方はイヴ・サンローランが作品のアイデアが出ないスランプ期など精神の奥に迫った怪作!ルキノ・ヴィスコンテイ監督の(地獄に堕ちた勇者ども)や(ルードビッヒ)(イノセント)なども連想させるのは、ヘルムート・バーガーがカメオ出演している事にも有るのかも知れない…。 削除

2016/5/12(木) 午前 9:20 [ PineWood ] 返信する

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PineWoodさん:
ギャスパー・ウリエル版の方は、公開中に都合がつかず、観逃し、残念ながら未見のままです。
ギャスパー・ウリエルの演技にはとても興味がありますが、
それ以上の“怖いもの見たさ”はやはりヘルムート・バーガーです。
ヴィスコンティ作品でのイメージがあまりにも鮮烈なので、
見たいような見たくないような…。
こちらのピエール・ニネ版の方は、有名人の伝記映画なので、それなりに面白いですが
一映画作品としては平凡にも感じます。

2016/5/14(土) 午後 7:11 mango 返信する

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