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映画『紙の月』

イメージ 1
 
【2014年/日本/126min.】
1994年。梅澤梨花が、わかば銀行で外回りの営業の仕事を始め、早4年。
思い遣りのある人柄と丁寧な対応で、客からの評判は良く、成績も上々。
最近パートから契約社員になり、収入も増えた。
商社勤務の夫・正文との間に子供は居ないが、生活に何の不自由も無い。
しかし、近頃、正文のさり気ない言葉に傷つき、虚無感を抱くように。
ちょうどそんな頃、顧客・平林孝三の、まだ大学生の孫・光太と出会い
あれよあれよと言う間に一線を越えてしまう。
光太との逢瀬を重ねる内、彼に借金があると知った梨花は
光太の祖父から預かっていた金で返済させようと思い付き…。
 
 
角田光代の同名小説を、吉田大八監督が映画化。
この小説は、映画化に先駆け、ドラマ化もされており、今年2014年1月から2月にかけ、NHKで放送。
全5話のそのドラマは、かなり面白かった。
その後、映画版が制作されていることを知り、
比較のためにも、私にしては珍しく、原作小説を読んで、映画鑑賞に備える。
 
 
 
物語は、契約社員として、銀行で外回りの営業をする主婦・梅澤梨花が
大学生の光太と交際するようになってから、顧客の金についつい手を付け、
それがやがて巨額横領事件にまでエスカレートしていく様子を描く犯罪サスペンス
 
原作小説を読み、分かった事は、ドラマ版が原作に結構忠実だということ。
主人公・梨花の横領事件を軸に、他にも、節約に必死になる主婦や、買い物依存症の編集者を登場させ、
形こそ違えど、金に縛られ、振り回される人々の悲哀を描いている。
 
尺がドラマ版の約半分しかない映画版に、全てを詰め込むのは、当然困難。
そこで、節約主婦や買い物依存症編集者のエピソードは、バッサリ割愛。
主人公・梨花が、大学生・光太と出会ってから、関係を持つまでも、あっと言う間。
他も随分簡略化されている。
なので、悪く言うと、梨花の心境の変化がやや唐突にも感じるが、良く言えば、展開がスピーディ。
この調子で最後まで進むのだろうと想像しながら観ていたら
なんと中盤で、銀行側が梨花の横領を発覚してしまうではないか!これは映画版独自の展開。
その後の後半戦も、原作には無い銀行内での業務や人間模様を重点的に描き
映画版ならではの解釈で、“自由とは何か”を表現。
 
 
 
 
映画版のキャストを、ドラマ版と簡単に比較。
イメージ 2
 
宮沢りえ:梅澤梨花役〜銀行で契約社員として働く主婦
(ドラマ版=原田知世)
田辺誠一:梅澤正文役〜梨花の夫
(ドラマ版=光石研)
池松壮亮:平林光太役〜梨花と不倫する大学生
(ドラマ版=満島真之介)
 
ドラマ版では、かつての清純派アイドル原田知世が、不倫や横領に走る主婦を演じるという意外性が
どんどん変化していく主人公・梨花に重なり、適役であった。
宮沢りえには元々“何かをしでかしそう”な雰囲気がある。
そういう所が、真っ直ぐで極端な行動に走る梨花の大胆な一面に重なる。
それでいて、特に序盤は、スタアのオーラをすっかり消し、
ちょっとショボイくらいに控え目で真面目な主婦に成り切っているのだから
宮沢りえはやはり凄い女優さんなのかも知れない。
 
梨花の夫・正文のシーンは、ドラマ版に比べ、ずっと少ない。
登場シーンの多いドラマ版の方が、正文がネチネチ言う機会も多いから、より嫌味ったらしい男に見えてくる。
映画版では存在感がやや薄い上、田辺誠一の素のイイ人オーラが滲み出ていて
私なら、許せてしまう範囲の夫像かも。
正文が上海出向を控え、「你要喝什么?(あなたは何を飲みたいですか?)」
「我要喝啤酒。(私はビールを飲みたいです。)」と自宅の居間で中国語の練習をしているシーンは
声調があまりにも間違っていたので、気になった。
以前、微博で、中国映画が好き、出たい、と呟いていた田辺誠一だけれど、この中国語はマズイ。
本作品が中華圏で公開されたら、彼のこのシーンは、あちらの観衆に突っ込みを入れられるに違いない。
 
不倫相手・光太は、顔が整い過ぎた満島真之介より、
池松壮亮の方が、どこにでも居そうな平凡な大学生に見え、より現実味が有るかも。
 
 
 
イメージ 3
 
銀行内でのシーンが多い映画版では、原作には存在しない行員たちが登場。
扮するは、わかば銀行ベテラン後方事務員・隅より子に小林聡美
窓口係・相川恵子に大島優子、次長・井上祐司に近藤芳正
 
小林聡美は、『かもめ食堂』(2006年)で演じたサチエがあまりにも当たり役だったせいか
その後の出演映画にしても、PascoのCMにしても、サチエを髣髴させる女性役ばかりが続いていた印象。
吉田大八監督も「そろそろサチエは封印してもいいんじゃない…?!」と思ったのだろうか。
本作品では、近年珍しく、“ほのぼのしていない”厳格なお局様を演じる小林聡美を見ることができる。
そんな彼女が扮する隅より子と宮沢りえ扮する梨花の対立シーンは、本作品の見所のひとつ。
隅より子の性格を表す「私、徹夜したことがないの。翌日にひびくから。」という言葉に共感した私は
彼女に近い人間なのかも知れない。
 
近藤芳正扮する井上次長は、頭部にばかり目が釘付け。
ズラ次長…!!周りは皆、ズラだと気付いているのに、自分に気遣い、気付いていないフリをしてくれている、
…という事が分っておらず、毎日ズラ着用で出勤するこういう上司、居そう!
 
 
 
 
途中で梨花の横領がバレ、しかも彼女がそれを否定しなかったので、驚いた。
原作から離れた展開で、先が見えなくなり、ハラハラ。
原作ファンがどう思うかは分からないけれど、私は、これはこれでアリ、かと。
少々気になってしまったのは、学生時代の梨花が、父親の財布からお金を抜き取り、寄付する回想シーン。
“他人様のお金を盗んででも、弱者に施しをしたがるのは、彼女の元々の性格”と観衆に分からせる
非常に安直なシーンに感じてしまった。
原作での梨花も、確かに裕福な親のお金で多額の寄付をし、良い事をした気にはなっているけれど
そのお金はあくまでも親が梨花に与えた物であって、親からこっそり盗んだお金ではない。
微妙な差かも知れないが、私にとっては引っ掛かってしまう表現であった。
あと、最後、タイの市場で、梨花が学生時代に寄付を送った子供(…と思しきタイ人青年)が登場するのも
上手く出来すぎで、ややアザトく感じてしまった。
けれど、彼からもらった青林檎みたいな蓮霧みたいな果物にかじり付く梨花の表情を見ていたら
何とも説明し難い感情がぐわぁーっと湧き上がってきた。
 
それにしても、なんとか証書だの、取り引き明細書だの、書損だのって、私にはチンプンカンプン。
ちゃんと銀行のシステムやお金の管理に精通していないと、横領は難しい。
どんなに貢ぎたくなるような男前と出会っても、
数字に弱く、お金に無頓着な私には、横領はハードルが高過ぎる!という事がよく分かりましたワ。
 
横領ではないが、ここ数日世間を騒がせている、7人の夫毒殺疑惑のおばさん筧千佐子容疑者は
5億以上もの保険金を手にしながら、金融取引の損失で1千万円ほどの借金があると言われている。
一連の報道を観ながら、この『紙の月』を重ねた。
男に貢ぐために金を捻出する女にしても、男から絞り出した金を運用する女にしても
最初のちょっとした成功でタガが外れると、スゴイ事になってしまいますねー。
 
横領した犯罪者を褒めてはいないけれど、かと言って、自分の殻を破った梨花を全否定もせず。
下手に同情や嫌悪感を誘わず、最後には、むしろ清々しい後味さえ残す。
現実世界でもしばしば起き、その度に世間を騒がせる横領事件を題材にし
一見普通の人が犯罪に手を染めていく過程を覗けるだけでも、興味深い作品であった。

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ひさびさにスリリングで官能的なリズム感ある日本映画を。あたしもテレビ版は面白く観て〜光石旦那 ネチネテとでしたねぇ〜今 原作を読んでいますが これまた面白い!映画は りえ・聡美・優子 三人さんに拍手、近藤次長さんも!

2014/11/23(日) 午後 4:46 たんたん

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たんたんさん:
ドラマ版も映画版もそれぞれに良さがありますね。
出演者を比較しながら観るのも、楽しかったです。

2014/11/24(月) 午後 9:41 mango

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