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映画『氷の下』

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【2017年/中国/126min.】
ロシア国境に接する中国北東部の街。
警察へのタレコミで生きる王海波を、知り合いの若い女・盼盼が、恋人を伴い訪ねて来る。
散々呑んで、酔い潰れたその恋人のポケットに一丁の銃を見付け、それをそっと奪い取る王海波。
ところが、この若い男女は、ちょっとした隙に、その銃を再び奪った上、王海波の車まで盗み、
さらには、大胆な強盗殺人事件まで起こし、逃走。
事件の容疑者にされた王海波は、止むを得ず、海外に身を隠すことを決意。
船に乗り、対岸のハバロフスクに逃げ込むが…。


第18回東京フィルメックス、コンペティション部門に出品された
蔡尚君(ツァイ・シャンジュン)監督最新作を鑑賞。

蔡尚君と言えば、2011年に発表した監督作品第2弾の『人山人海』が、
かつて脚本を手掛けた『スパイシー・ラブスープ』(1997年)や『こころの湯』(1999年)といった
人情ドラマとは似ても似つかぬ作風で、第69回ヴェネツィア国際映画祭でいきなり銀獅子賞を獲得。
『氷の下』は、そんな蔡尚君監督が、6年ぶりに発表した待望の新作。
フィルメックスの上映では、蔡尚君監督のQ&Aも付くというから、すぐにチケットを押さえた。



本作品は、自分に殺人事件の嫌疑がかけられていると察し、ロシアへ逃亡し、
そこで知り合った冰冰という女の元に身を寄せるが、
事情があって、再び中国に戻って来る王海波という社会の底辺で生きる男を描くフィルム・ノワール

主人公の王海波は、警察に情報提供することを生活の糧にする、いわゆる“情報屋”。
若い男女二人組が、彼の車を使って、強盗殺人事件を起こし、姿をくらましたため、
自分が事件の容疑者にされ、仕方なくロシアへ逃亡することとなる。
100%の白なら、なにも他人が犯した罪で逃亡する必要など無いわけだが、
情報屋という裏稼業をする彼は、ひとたび面倒が起きると、身を隠さざるを得ないのであろう。

『氷の下』というタイトルは、日の当たる場所で堂々と生きて行けず、
厚い氷に閉ざされた暗く寒い水面下で、もがきながら生きて行くしかない
こういう下層の男の閉塞感を表しているのかなぁと想像した。


もう一つ、“氷”から直結するイメージは、冷たさや寒さである。
そのイメージ通り、物語は、見ているだけで、キーンと冷えてくる中国とロシアの国境地帯で展開する。

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具体的な場所は、ロシア側はハバロフスク、中国側は、黒龍江省牡丹市の綏芬河(Suífēnhė すいふんが)。
船で川を渡れば、十数分で往来できる距離らしい。
Q&Aでの蔡尚君監督のお話によると、この国境地帯は、一時期金儲けできる場所だったため、
中国人、ロシア人は勿論、韓国などからも多くの人が集まり、犯罪の温床になっていたという。

で、極寒の地で展開するこの映画、最後の最後に舞台は、取って付けたように、突如南国へ移動。
撮影が行われたのは、リゾート地として知られる海南の三亞。
氷点下30度で震えながら撮影したロシアから一転、三亞の気温は30度。
そう、本作品は、“気温差、驚異の60度映画”なのです!




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出演は、情報屋の王海波に黃渤(ホアン・ボー)
王海波がロシアで出会う女・冰冰に宋佳(ソン・ジア)
王海波の仲間・大力に小沈陽(シャオシェンヤン)、王海波と繋がる警官・劉大に劉樺(リウ・ホア)など。

本作品の大きな売りの一つは、メジャーな人気を誇る、あの黃渤が主演という点であろう。
コミカルな演技に定評がある黃渤は、最近、役の幅を広げ、コメディ作品以外にも出演。
私も、『最愛の子』(2014年)や、『記憶の中の殺人者』(2017年)などで、シリアスな黃渤は体験済み。

なので、すでに免疫が有るから、本作品の黃渤に別段驚かされる事は無いと思っていたのだが、
いやぁ〜、これまでとは違う黃渤体験であった…!
『最愛の子』も『記憶の中の殺人者』も、確かに観衆の笑いを取るような役ではないのだけれど、
かと言って、理解不能な役でもなく、色々な事情は有っても、それなりに社会に適合している生活者なのだ。
一方、この『氷の下』の王海波は、心の闇が深過ぎる(苦笑)。
共感しづらい非常にダークな面を持つ男で、さらに、かなりセクシーなシーンもある。

黃渤は、この作品で遂に本当に“新境地開拓”という印象。
第54回金馬獎で、最佳男主角(最優秀主演男優賞)にノミネートは、納得。

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“金馬”だけに、馬のポーズでおどけてみせる黃渤。勝負服は、ゼニアのビスポークです。
最終的に賞は逃したものの、『老いた野獣〜老獸』で受賞の涂們(トゥー・メン)と良い勝負だったのでは。



この映画には、主演の黃渤以外にも、
小沈陽のように、コメディを得意とする俳優が結構キャスティングされている。
警察の劉隊長に扮する劉樺は、コメディアンではないが、
彼を有名にした作品は、寧浩(ニン・ハオ)監督の大ヒットブラックコメディ、
『クレイジー・ストーン 翡翠狂騒曲』(2006年)である。

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その『クレイジー・ストーン』で3人組窃盗団のリーダー道哥を演じているのが劉樺で、
その子分・酥蕕魃蕕犬討い襪里蓮△海痢愽垢硫次戮亮膠蘆僕ァ黃渤。
この『氷の下』での二人の関係は、警察と、彼に情報をタレ込む情報屋。
仕事上で繋がる二人ではあるが、それ以上の信頼関係も見えてくる。


登場人物の大半が男性のこの重く暗い犯罪劇で、恋愛パートを担当しているのが、宋佳扮する冰冰。
“恋愛パート”と言っても、甘い恋物語ではなく、冰冰がこれまたかなりミステリアスな女性。
冰冰は、中国で面倒に巻き込まれた恋人・老宋と共に、ハバロフスクに逃亡したものの、
その老宋が3年前に一人で失踪したため、彼の帰りを信じ、待ち続けるが、
一向に音沙汰が無く、疲れ果て、諦めかけた頃に出現した強引な男が王海波だった、…というわけ。

なのにさー、新たな恋が始まりそうなそのタイミングで、戻って来てしまうのです、老宋が。
冰冰はいとも簡単に老宋とヨリを戻し、老宋からは「私の留守中、冰冰の面倒を見てくれ有り難う」と感謝され、
王海波が寅さん的にフラれ、めでたし、めでたしかと言うとそうではなく、もう一度ギョッとする想定外が発生。
ちなみに、その老宋は、『レッドクリフ』(2008年)の劉備でお馴染みの尤勇(ヨウ・ヨン)が演じている。



裏方さんについても少し触れておくと、
撮影は、賈樟柯(ジャ・ジャンクー)監督作品や許鞍華(アン・ホイ)監督作品でお馴染み、
香港の余力為(ユー・リクウァイ)が担当。

あと、エンディングで、私の見間違いでなければ、
衣装担当は、もしかして勞倫斯許(ローレンス・シュー)とクレジットされていました…?

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勞倫斯許は、范冰冰がカンヌで着て話題になった“東方祥雲”や(→参照)、
海南航空の新ユニフォームでも有名なデザイナー。
最近では、映画『桃花絶佳〜ワンス・アポン・ア・タイム』(2017年)の衣装なども手掛けている。
つまりは、華洋折衷のゴージャスな装いが得意なデザイナーなので、
労働者ばかり登場する『氷の下』の衣装なんかやるワケ無いでしょー!とも思うのだけれど、
蔡尚君監督の前作『人山人海』の衣装も、実は確か勞倫斯許が手掛けていたはずなので、
私の見間違いとは言い切れない。要確認。




台詞が少なく、映像も暗いので、爆睡してしまう人も多いだろうが、
私は、物語がどのように転がって行くのか、まったく読めず、先が気になって、気になって、
知らず知らずの内に映画の世界に引き込まれて行った。
だが、終盤、老宋が突然自害し、それを冰冰がなぜか「私が殺した」と供述した辺りで、「…?」。
さらに王海波が、冰冰の嘘の供述を肯定し、「…??」。
追い打ちをかけるように、ラスト、南国で王海波が虎に化け、「…???!」。
先が読めないのは良いのだけれど、着地点があそこまで不明瞭だと、モヤモヤが残る。

沢山出てくる人名も、私を混乱させた一因。
一生懸命名前を覚えながら映画を鑑賞し続けたが、本当に重要なのは、結局のところ、数人であった。
今回は、無駄に混乱してしまったので、もう一度観れば、かなり理解が深まる気がする。


東京フィルメックスで、『氷の下』上映後に行われた蔡尚君監督によるQ&Aについては、こちらから。

『氷の下』主演俳優・黃渤がノミネートされた第54回金馬獎授賞式については、こちらから。

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