旧 東京倶樂部★CLUB TOKYO:平成館

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嚴當による支配で朝廷は腐敗し、国が混乱する明朝嘉靖年間。
嚴當の高官・明に追い詰められた総督・程肅の一行。
長男は捕らえられ、目の前で舌を切断。
程肅は観念し、明に、中軍都督の兵符を差し出し、その隙に、次男の聞道を逃す。

聞道を追って来たのは、明の配下、高劍雄。
かつて聞道と義兄弟の契りを交わした高劍雄は、追跡をしくじったと偽り、聞道を逃走させる。
そんな聞道を救出したのは、病弱な彼を子供の頃から治療している少林寺の僧・敗火。
敗火は聞道を少林寺に匿うが、「朝廷を敵に回すのは危険」と、方丈の正念は消極的。

間も無くして、聞道が匿われているとの噂を聞き付けた明が、配下を引き連れ、少林寺に。
「程聞道を除き、32人いた程氏一族は、全て私の手で殺めた。
二十数年来の敵は討たねば。禍根は断っておかねばならぬ」そう言う明であったが、
敗火はどうにか聞道を隠し通し、明も疑いながらも寺を去る。

一方、高劍雄、程聞道にとってのもう一人の義兄弟・楊秀は、
聞道の許婚・蓁蓁が暮らす榮順王府に駆け込み、
「程氏一族の汚名をすすぎ、犠牲を無駄にしないでくれ」という程肅の遺言を伝える。
程肅は、蓁蓁の父である榮順王・李明玉と共に、
嚴當に対抗し明王朝を復興させるという誓いを立てたがために、嚴當から敵視され遂には滅ぼされたのだ。
この災いの火の粉が、榮順王府にも降りかかるのは、もはや時間の問題となり…。



2018年9月半ば、衛星劇場で始まった大陸ドラマ『少林問道〜少林问道』が、
約5ヶ月後の2019年2月半ば、全42話の放送を終了。

『琅琊榜<弐>』の終了と共に、契約解除するつもりでいた。
なのに、なのに、後番組に『少林問道』を持って来られてしまった…。
この『少林問道』は、具体的な理由があって、興味をもったドラマではない。
現地での評価が高かったため、どんな物か試しに観てみたかった。ただそれだけ。
いざ観始めたら、内容は難解。
週一回、2話進行の放送なら、追うのも楽かと思いきや、
きちんと理解するには、各話2回、つまり実質週4話鑑賞せねばならず、…それでもなかなか咀嚼し切れず、
この度、遅ればせながら、ようやくゴールイン。
でもね、結果、評価に違わぬ、良質なドラマであった。
私の中華ドラマ視聴史上、最も観応えのある重厚ドラマだったかも。

ここのところずっと体調不良なため、スルーしようかとも思ったが、
何かしらの記録を残しておきたいドラマなので、以下、簡単に綴っておく。

★ 概要

傅東育(フー・ドンユー)監督が手掛け、現地では2016年に放送されたドラマ。


日本人にはあまり馴染みの無い傅東育監督。
恐らく、日本で唯一そこそこ知られている監督作品は…

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日本のコミックをドラマ化した2008年度作品『テニスの王子様〜網球王子』。
出演アイドルたちも人気者になった話題のドラマではあるが、
あのイメージと『少林問道』が結び付かず、
本当に良作なのか『少林問道』?!と、私の中では、疑問が深まるばかり…。

実際には、もっとシリアスなドラマも数多く手掛けているけれど、
現代劇が中心で(一番古い時代で民國期みたい)、本格的な時代劇は『少林問道』がお初。
時代劇の撮影で有名な横店で仕事をしたのも、これが初めてだったのだと。
横店では、『宮廷の諍い女〜後宮甄嬛傳』の鄭曉龍(ジョン・シャオロン)監督にバッタリ出くわし、
「君、横店は初めてなんでしょ。私も『宮廷の諍い女』の時が初めての横店だった。
良い事だよ。時代劇を撮ったことの無い人は、ここで新たな飛躍があるかも知れないから」
とお声掛け頂いたという。
ですよねぇ、何にでも“初めて”はあるし、それを通過しないと次が無い。
事実、傅東育監督は『少林問道』で一つ上のステージに行った印象。
少なくとも私にとっての傅東育監督は、もはやお気楽偶像劇『テニスの王子様』の監督という以上に、
骨太作品を撮れる本格派のイメージに。


ちなみに、ドラマ制作中、タイトルは、『少林大藥局』→『少林』→『少林少林』→『少林涅槃』と二転三転し、
最終的に『少林問道』に決定。
少林武術に関する作品は、すでにかなり作られているため、
視点を変えた少林薬局の物語にしようという最初の構想で、まず考えたお題が『少林大藥局』。
シンプルで覚え易い『少林』や『少林少林』は、知的財産権の問題で、使用不可能な事が判明。
『少林涅槃』は、僧が火葬されるシーンの撮影中、傅東育監督が思い付き、
火の中で生まれ変わる、また、昇華する感じが良いと感じたものの、“死”を連想させるため却下。
最終的には、主人公の名“聞道(Wéndào)”と同音の“問道(Wèndào)”を合わせ、『少林問道』に決定。
“聞道”は聞くこと、“問道”は能動的に尋ねること、
すなわち両者は受動と能動という対照的で、かつ背中合わせの切り離せない関係。
傅東育監督は、この『少林問道』というタイトルを、
“絶えることない道義の追求”と“禅”という作品のテーマをも表現した良いタイトルと自負しているようだ。
我々日本人にとっても、『少林問道(しょうりん・もんどう)』は、
インパクトのある響きで、神秘性も感じられる良いお題。
しかも、日本語だと、“禅問答”の“問答”も同じ発音になるので、余計に内容に合ったタイトルに思える。

★ 物語

明朝嘉靖年間、義兄弟の契りを結んだ程聞道、高劍雄、楊秀と、
彼らの幼馴染みで、聞道の許婚でもある郡主・李蓁蓁の4人が、
腐敗した政治の波に抗い切れず、それぞれに立場を変え、袂を分かつも、
紆余曲折を経て、再び心を通じ合わせるまでを描く人間ドラマ


簡単に言ってしまうと、“義兄弟モノ”である。
映画でもドラマでも、その手の作品は過去に数多く作られているが、
中でも、“3人の義兄弟と一人の女”という共通点から、
満清四大懸案の一つ、“兩江總督・馬新貽暗殺事件”をベースにした陳可辛(ピーター・チャン)監督作品、
 『ウォーロード〜男たちの誓い』(2007年)を引き合いに出す人が結構いるみたい。
でも、2時間に収めなければならない映画と違い、たっぷり尺のあるドラマ『少林問道』は、物語がより複雑。
話を、程聞道、高劍雄、楊秀という3人の義兄弟に留めず、
さらにその上の世代の別の3人の義兄弟にも絡ませる重層構造。

ドラマは、主人公・程聞道の父、程肅が、悪徳高官・明に粛清されて、動き出す。
なので、父の仇・明を成敗する復讐劇や、
その明の配下となった義兄・高劍雄との対立が、ドラマの軸になるのかと思いきや、
その予想を根底から覆す、“そもそも程聞道は程肅の実子ではない”という事実が明るみになり、ビックリ。
実は、その昔、聞道を産んだのは、梅艷樓の女主人・梅姑で(!)、
この梅姑は、なんと、聞道の治療を担当している少林寺の僧侶・敗火の妹(!)。
勿論、梅姑は、マリア様のように処女懐胎だったわけではないので、聞道には当然父親が存在し、
その父が、な、な、なんと、宿敵・明だと判明するから、またビックリ。

“上の世代の別の3人の義兄弟”とは、この明を含む義兄弟のことである。
残りの二人は、聞道の養父・程肅と、高劍雄の父・高壽昔。
明は元々悪人だったわけではなく、実のところ彼を裏切ったのは、聞道が善人と疑わない養父・程肅の方。
この上の世代の義兄弟の関係崩壊が、次世代の義兄弟にも影響。

反目したまま散った上の世代の義兄弟と違い、下の世代の義兄弟には、関係修復の機会が訪れる。
彼らを結束させるのは、倭寇(日本の海賊)という共通の敵。
倭寇が登場する部分も、我々日本人には興味深い。
“岡田”なる人物が、倭寇のボスで、たまに日本語を口にしたり、刺青彫ったり、
その配下に、漢人でありながら、日本風に頭を月代&髷にした江龍なんて男が居たり。
当初、この江龍は、日本に寝返った裏切り者の漢人と思われたが、
実は、程肅から命じられ、倭寇の組織に入り込み、内部を偵察し、反撃の機会を窺っている“潜伏漢人”。
“明代倭寇版『インファナル・アフェア』の梁朝偉(トニー・レオン)”だったのです…!
「20年も潜伏している間には、幾度となく自分が漢人であることすら分からなくなることがあった」
と切なく語る江龍を見て、
『インファナル・アフェア』で三年之後又三年,三年之後又三年…」と呟く梁朝偉を重ねたのは、
私だけじゃないわよね?!

ちなみに…

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(↑)こちらが、董彥麟(ドン・イェンリン)扮する明代倭寇版『インファナル・アフェア』状態に陥る江龍。



…と、このように、ただの“義兄弟モノ”では収まらない重層構造、
はたまた『インファナル・アフェア』的展開まで出て来て、静かにハッとさせられるドラマ、それが『少林問道』。

★ 時代背景

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『少林問道』は、史実を描いた歴史ドラマではないけれど、
時代背景は明確で、明朝嘉靖年間(1521-1567)、
すなわち、明朝第12代皇帝・世宗朱厚熜(1507-1567)が天下を治めていた頃を描いている。
日本だと、その頃は室町時代後期(戦国時代)で、
室町幕府第12代将軍・足利義晴(1511-1550/在職1521-1546)、
第13代将軍・足利義輝(1536-1565/在職1546-1565)の時代に当たる。


では、この世宗は、どのような皇帝だったのか?
世宗は、先帝・武宗朱厚照の従弟。先帝に嗣子が無かったため、皇位を継承。
直系ではなく、傍系でありながら皇帝に即位した事情もあり、
立場の正当性を通すため、自分の意に沿わない臣下を次々と排除した上、
道教にのめり込み、朝政を疎かにしたと言い伝えられる“スピリチュアル皇帝”。

自身は引き籠り、道教に夢中になっていたため、
実質、政治を専断したのが、青詞(道教の祭文)に精通していたことで、世宗からの信頼が厚く、
内閣大学士に任命された嚴嵩(1480-1567)とその息子・嚴世蕃(1513-1565)。
この嚴父子の専横は、同じく青詞に巧みなことで、世宗の信を得、内閣大学士となった叙階(1503-1583)が、
弾劾に動くまで続く。

ドラマ『少林問道』で描かれているのは、まさにこの嚴嵩&嚴世蕃父子による天下で、腐敗し切った明朝。
日本ではあまり知られていない嚴父子だが、中国では奸臣として有名らしく、
例えば、北京の孔廟では、嚴嵩にちなんだ“触奸柏”なる柏の古樹が、一つの見所となっている。

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その昔、嚴嵩が、この柏の横を通った時、
風で枝が揺れ、嚴嵩の烏帽子を吹き飛ばしたというエピソードに由来し、
この柏の木は、その者が忠奸かどうかを見分けられると言い伝えられているそう。
(→北京孔廟の詳細は、こちらを参照)


もう一つ、明朝嘉靖年間では、奸臣による内部腐敗のみならず、外敵も頭の痛い問題。
中国沿岸部での倭寇の大規模な活動は、その頃に激化し、“嘉靖の大倭寇”と称される。
一般的に、倭寇=日本の海賊と解釈されるが、
当時、倭寇の構成員の中には、密貿易を行う中国人も多く紛れていたと言われ、
『少林問道』の中でも、そのような描写あり。



このような明朝嘉靖年間を描いたドラマは、他に日本にあまり入って来ていないように見受けるが、
それでも、皆無ではありません。
まったく作風は違うけれど、『四人の義賊 一枝梅(イージーメイ)〜怪俠一枝梅』の時代背景が実は同じ。
あちらでも、朝廷で権勢を振るい、国を傾けるキーパーソンとして、実在の嚴嵩&嚴世蕃父子が登場するが、
何を血迷ったのか、日本語字幕で“イェン・ソン”&“イェン・シーファン”などという表記にしてしまっている為、
日本人視聴者の9割は、それらが実在した有名な奸臣だとは気付かぬことでしょう。
だから、名前を無理矢理片仮名表記にするのはやめろと言っているのヨ…。

★ 少林寺十八銅人

ドラマ『少林問道』を観るにあたり、もう一つ、頭の片隅に置いておいた方が良いかも知れないキーワード、
それは“少林寺十八銅人(しょうりんじ・じゅうはち・どうじん)

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ズバリ、『少林寺十八銅人〜少林寺への道』(1976年)、
『少林寺十八銅人(原題:少林十八小銅人/銅馬鐵燕傳奇)』(1995年)なんて映画も有るくらいだから、
その名を耳にしたことがある人も居るであろう。

まず先に言ってしまうと、十八銅人は、中国の武俠小説などに登場する架空のキャラクター。
少林寺の僧侶の中でも、取り分け武術に秀でたエリート武僧ユニット!
メンバーは、ユニット名からも察しがつくように、18名。
18という人数は、釈迦の弟子で、仏教において最高の悟りを得た18名の高僧を指す
“十八羅漢”に由来するという説アリ。

また、隋朝末期、敵に追い詰められた李世民(598-649)が、
少林寺の十八棍僧(もしくは“十三棍僧”)に助けられたため、
唐の皇帝に即位した後、感謝の意を込め、18体の銅像を寄贈したことが、
実際の“十八銅人”の謂れであるとも。


そんな武術の達人集団である十八銅人は、一般的に、少林寺の守衛的存在と見做される。
任務は、外敵の侵入を阻止するのは勿論の事、
他にも、まだ未熟な弟子が、勝手に下山し、打ち負かされ、少林寺の名声を汚さぬよう、
寺の門前で、彼らの許可なき下山を食い止めたり、
武芸に資質のある弟弟子たち鍛えるコーチのような役割も。


現在、十八銅人は、英語で“Eighteen Copper Guardians”だの“Eighteen Bronze Men”などと直訳されたり、
映像作品の影響もあって…

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おかしな金ピカ集団でイメージされがち(苦笑)。
ちなみに、画像は、周星馳(チャウ・シンチー)の大ヒットコメディ映画『食神』(1996年)に登場する十八銅人。
コメディ映画にまで面白可笑しく取り上げられるほど、
十八銅人は、中華圏の人々にとっては身近な人気架空キャラなのかも知れませんね。

★ 嵩山少林寺

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ついでなので、ドラマ『少林問道』の重要な舞台である嵩山少林寺についても少々。
今更言うまでもなく、少林寺は、河南省登封市嵩山に実在。
創建は、北魏の太和19年(495年)という歴史ある禅宗寺で、少林武術の本拠地としても世界的に有名。

ドラマ『少林問道』の中では、少林寺が政治権力に巻き込まれそうになったり、
卓越した武術の腕をもつ少林寺の武僧が、朝廷から脅威と見做され封殺される様子なども描かれるが、
実際、長い歴史の中では、少林寺という聖域さえ、常に安泰だった訳ではなく、
古くは、建3年(574年)、北周の武帝(543-578)が、仏教と道教の禁止を発令した際、
少林寺は解体され、僧侶は還俗、
近いところだと、民國期、軍閥の混戦に巻き込まれ、主要建造物の多くを焼失している。

例えば、(↓)このような映画もあり。

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監督・陳木勝(ベニー・チャン)×主演・劉華(アンディ・ラウ)による『新少林寺 SHAOLIN』(2010年)は、
清朝崩壊後、台頭してきた軍閥の戦乱と、そこに巻き込まれる少林寺という歴史的背景を題材にした
フィクションの娯楽作品。
この映画では、今をときめく吳京(ウー・ジン)、元リアル少林武僧の釋延能(シー・イェンノン)、
そして余少群(ユー・シャオチュン)が、少林寺の“3義兄弟僧”として登場していますヨ。

★ キャスト その①:3人の義兄弟

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義兄弟は、僧(僧侶)・將(武将)・儒(儒士)と、それぞれに異なる立場に置かれる。
以下、3人を個々にチェック。

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周一圍(ジョウ・イーウェイ):程聞道/無想〜総督・程肅の次男

程聞道は、一族を皆殺しにした明に復讐するには武術の習得が必要という
聖職者が抱いてはならぬ邪な動機で少林寺に出家し、“無想”の法名を名乗るようになる元総督の御曹司。
このドラマは、“復讐”というただ一点に囚われ、向こう見ずに突っ走るだけだった青年が、
形ばかりの僧侶となり、やがて悟り、他者を赦し、自分自身も心の平静を得るまでを描く
聞道の成長記としても見ることができる。

土家(トゥチャ)族の俳優・周一圍が、日本で注目されたのは、恐らく『蒼穹の昴〜蒼穹之昴』であろう。

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今となっては贅沢なこんなスリーショットも。
田中裕子サマ、あなたが共演した若手、周一圍も張博(チャン・ボー)もすっかりビッグになりましたヨ。

『蒼穹の昴』以降も出演作は日本に入って来ているけれど、私にとっては“興味外”の俳優であった周一圍
その理由は、単純に、見た目が好みではないから。
周一圍って、目、鼻、口、全部コッテリ濃くて、“息抜きポイント”の無い顔立ちなのよねぇー。
今でも、私は全然“LOVE周一圍♪”ではないのだけれど、『少林問道』で、彼を見る目が変わった。
周一圍って、こんな演技派でしたっけ?!と感心しきり。
もっとも、周一圍は傅東育監督作品への出演が多いので、
監督は周一圍の実力を認め、信頼した上で、『少林問道』の主人公にも抜擢したのであろう。

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ドラマ前半の聞道は血気盛んで、ブッ飛んだ演技や凄まじい顔芸も披露。
その後、無想という僧となり、諦めの境地に至ったのか、はたまた悟ったのか、
徐々に落ち着いていく姿に滲み出る切なさよ…。周一圍の演技に引き込まれましたわ。
外見では、ザックリ、髮アリ/髮ナシ、2パターンの周一圍が楽しめる。
顔が濃いぃ周一圍は、剃髪した方がスッキリし、暑苦しさが中和されて良いかも。




郭京飛(グオ・ジンフェイ):高劍雄〜高壽昔の息子にして将軍 明の配下

高劍雄は、義兄弟の長兄。
父や一族を守るため、不本意にも明の配下となるが、
実のところ、義弟たちへの想いは変わっておらず、何とか彼らを救おうと試みるも、
その気持ちは伝わらず、裏切り者の外道扱いされるから、見ていて、もう切なくて、切なくて。
さらに遣る瀬無いのは、一途に愛す蓁蓁からも、尽くしまくった末、容赦なく切り捨てられるという仕打ち…。

扮する郭京飛は、本作品の前に…

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『琅琊榜<弐>で、摩訶不思議キャラ・濮陽纓を演じてるのを見て、圧倒されたばかり。
『少林問道』の劍雄は、“オジさん”と言うよりは“オバさん”ぽい上、妖怪味まであった(?)濮陽纓とは、
またガラリと異なる渋い役。
将軍らしい頑強な見た目と、内面の迷いや脆さ、優しさにギャップがあるから、余計にしおらしく感じる。



是安(シー・アン)楊秀〜生真面目な儒学者

楊秀は、義兄弟の真ん中。
腕力ではなく、頭を使って物事を処理する儒学者ゆえ、どこか弱々しく、
キョーレツな個性を発する聞道や劍雄の影となり、印象が薄い彼であったが、
ドラマも終盤になると、いきなり存在感を増す。
演じている是安自身が、3人の中で、一番の正統派美男ゆえ、
悪く言うと無個性に感じてしまうのだが(往々にして、どこか崩れている方が、それが個性や魅力になるもの)、
楊秀という役が、控えめな儒学生なので、是安の温厚な雰囲気は合っている。

★ キャスト その②:義兄弟たちから愛された女

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郭曉婷(グオ・シャオティン):李蓁蓁/十一娘〜官妓へ堕ちた郡王府の郡主

李蓁蓁は、榮順王・李明玉を父にもつ超お嬢様。
なのに、明に父を殺され、自分も官妓に身を落とし、やがては尼僧になるという波乱の人生を歩む。
聞道とは相思相愛の許婚だったけれど、実は他の義兄弟たち、劍雄と楊秀も“LOVE蓁蓁”というモテッぷり。
特に劍雄は、涙ぐましいまでに蓁蓁に御奉仕するが、そんな彼を足蹴にする蓁蓁に、私はコワッ!と唖然。

扮する郭曉婷は…

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そう、『宮廷女官 若曦(ジャクギ)〜歩步驚心』の蒙古のお嬢様・敏敏格格!
あの時は、⑬様に片想いし、撃沈。
(明代で高劍雄に酷い仕打ちをしたから、バチが当たって、その後、清代で⑬様にフラレたに違いない。)

まさか、あの愛くるしい系カワイ子ちゃん・敏敏格格(郭曉婷)が、ちゃんと演技のできる女優だったとはねぇ。
復讐に取り憑かれたり、劍雄を足蹴にする蓁蓁は、“愛されキャラ”とは呼べないが、
深窓のお嬢様から官妓に身を落とし、否が応にも薄汚い世の中を知り、
スレまくって、凄みを増していく蓁蓁の気迫と目力には、息を飲む。
日本だと、こういうアイドルっぽい見た目の若手女優に、演技力は期待してはいけないものなんだけれど、
さすがは中国、人材豊富。
(見た目も実力も当たり前のように兼ね備えていないと、淘汰されるから、
日本の芸能界とは比較にならないほど、大陸芸能界は厳しい戦場だとも言える。)

★ キャスト その③:その他(…実は聞道のお身内)

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張志堅(チャン・チージエン):明〜朝廷の悪徳高官 嚴當の部下

悪党中の悪党である嚴父子がほとんど姿を現さない本ドラマでは、
その配下である明が一番の悪役として描かれる。
が、前述の通り、明もまた、信じていた人たちから、小っぴどく裏切られ、傷付いた犠牲者。
聞道が、自分の血を分けた息子だと知る物語後半では、少しずつ人間味や父親らしい顔を見せるようになり、
結局のところ、彼もまた哀しい人で、憎みきれない人物であった。
ベテランの張志堅は、安定の演技。
良いドラマは、悪役にも魅力がある場合が多いですよねぇ〜。
余談になるが、私は、“張志堅”の名を目にする度に、“具志堅用高”を連想してしまうのヨ。
別に“志堅”以外共通点は無いのだけれど…。



馮嘉怡(フォン・ジアイー):敗火〜少林寺の僧侶

敗火は、昔から程家と交流があり、
寒毒に侵されている程家の次男・聞道の治療も幼少期からずっとしてきた少林寺の僧侶。
しかし、後に、“家族ぐるみでお付き合いしているお坊さん”以上の存在である事が判明。
なんと、敗火は、聞道を産んだ実母で、梅艷樓の女主人である梅姑の実兄、
つまり、聞道とは血縁で、母方の伯父さんだったのだ。
敗火も元は相当な名家の御曹司で、致し方ない事情で、僧侶になったと察するので、
実は聞道は、伯父さんと似た道を辿ってしまっていたみたい。歴史は繰り返す、なのです。
この敗火は、私のお気に入りキャラ。
聞道を冷静に見守る強くて大きな存在なのだが、かと言って、分かり易い善良、温厚な人物ではなく、
しばしば真意が見えにくい、掴み所の無い性格。
僧侶の割りには、肩の力が抜け、飄々とした雰囲気もあって、魅力的。

中の人・馮嘉怡の出演作で、私が『少林問道』の前に観たのは…

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洪金寶(サモ・ハン)監督&主演映画『おじいちゃんはデブゴン』(2015年)…(笑)!
この映画で馮嘉怡が演じているのは、黒龍江省の朝鮮族らしき“”という姓のヤーさん。
馮嘉怡は、髮アリより髮ナシの方が断然ステキ…!極道より坊主に萌える。



何賽飛(ホー・ツァイフェイ):沈梅兒/梅姑〜梅艷樓の女主人

梅姑は、官妓となった蓁蓁の職場・梅艷樓を仕切る女主人。
スレ切った、やり手ババァにしか見えない梅姑だが、実は彼女自身、蓁蓁同様、風俗堕ちした(?)元令嬢。
しかも、風俗営業をやっているのに、実兄は聖職者の敗火。
バツイチ子持ちで、元亭主は明、幼い内に生き別れた息子は聞道だというから、仰天。
梅姑は、自分と似たような道を辿った蓁蓁を鍛えるが、
偶然にも、その蓁蓁は、平和な世なら、息子の嫁になるはずの女性だったわけ。

演じている何賽飛は、中国伝統戯曲・越劇出身の女優で、
張藝謀(チャン・イーモウ)監督の『紅夢』(1991年)、陳凱歌(チェン・カイコー)監督の『花の影』(1996年)、
李安(アン・リー)監督の『ラスト、コーション』(2008年)といった巨匠による有名作品にも出ているから、
過去に目にしている日本人も多いはず。

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ほら、今となっては、もう決して再現し得ない故・張國榮(レスリー・チャン)とのこんなツーショットも。
(画像は、映画『花の影』より。右はオフショット。)

私は、その後、何賽飛を目にしない期間が有って、
近年ドラマの中で久し振りに彼女を見たら、面白いオバさんになっていた。
『謀り(たばかり)の後宮〜唐宮燕』韋皇后役など、かなりキョーレツ。
年を重ね、貫禄が出たら、“綺麗めな泉ピン子”って感じで、
ふてぶてしい女を演じさせたら、中国で5本の指に入る。(←mango独自調べ)
現地では、他作品の影響もあって、“姨太太專業戶(お妾さん専業女優)”とも称されているようだが、
『少林問道』の梅姑は、泥水を飲んで生きてきた女特有の図太さと気迫を発し、
私が期待する通りの何賽飛であった。
かと言って、ただのスレッ枯らしでもなく、母性が見え隠れしていたのも、良し。

★ テーマ曲

テーマ曲、オープニングは、インストゥルメンタル曲で、タイトル不明。
エンディングは、<四海爲家>という歌。
切なく、もの哀しい歌だが、途中、軽やかにアコースティックギターの音が入り、不思議な郷愁を醸す。
歌っているのは、歌手で女優の金麗婷(ジン・リーティン)。
ドラマ『花と将軍 Oh My General〜將軍在上』で、范仲淹の養女・紅薔を演じているあの女優さんですよ。
歌も上手い。
女性ヴォーカルという事もあり、蓁蓁の心情が重なり、ジーンと来る。
その<四海爲家>をここ貼りたかったのだけれど、
当ブログに掲載可能な形式の動画だと、映像クリアな公式MVが見当たらないので、取り敢えず断念。
その内、もし見付かったら、人知れず、貼っておきます。





今は、高尚な文芸小説を読破したかのような達成感。
タイトルに“少林”と付くため、派手なアクションシーン満載の武俠ドラマを想像する人もいるだろうが、
アクションは作品のアクセント程度で、
描かれているのは、抗えない運命とか、人が背負った業とか、
他者、そして自らを赦し、ようやく得られる心の平静とか、
哲学的で、精神世界にまで踏み入ったような人間ドラマ。
かと言って、ただイタズラに小難しい訳でもなく、特に前半は、笑えるシーンが有るし(“少林三傑”が好き)、
その後は、出生の秘密だの、『インファナル・アフェア』展開だの
エエーッ!と驚かされる話も散りばめられているので、適度に娯楽要素はあると言える。

以前、こちらにも記したように、
長らく溺愛している映画俳優・張震(チャン・チェン)が、人生で初めて出演するドラマに、
林玉芬(リン・ユーフェン)監督の『宸汐緣〜Love and Destiny』を選んだ事に、かなり失望している私。
そんなモヤモヤを抱えている時に観たのが、この『少林問道』で、
張震には、周一圍が演じているこの聞道のような役を演じて欲しかった!と、つくづく思ったのです。

別に、なんで『少林問道』は周一圍なんかをキャスティングしたんだ?!と憤慨しているのではない。
“勝手に張震マネージャー”の私が、「うちの張震にやらせたかった…」と嫉妬してしまうのも、
実際に聞道を演じている周一圍が非常に良いから。
また、周一圍に限らず、他の俳優の演技も秀逸。
日本で名の知れたアイドル俳優なんて出ていなくても、実力派の競演には、グイグイ引き込まれた。

まぁ、娯楽要素が有るとは言っても、
ライトな台湾偶像劇や、“ラヴ史劇”などと呼ばれるようなチャラい時代劇が好物の人には勧めない。
本当は、ヨーロッパやアジアの映画をディープに愛すシネフィルに観て欲しいのだけれど、
そういう人は、ドラマはなかなか観ないんですよねぇ。残念。

『少林問道』が終わってしまったので、今は、衛星劇場の契約をどうするか考え中。
ちなみに、ここのところ私が気にって観ていた(観ている)のは、
この『少林問道』と、wowowで放送の『三国志 司馬懿 軍師連盟〜大軍師司馬懿:軍師聯盟/虎嘯龍吟』の2本。
衛星劇場で放送中の『三国志 Secret of Three Kingdoms〜三國機密之潛龍在淵』は、
『軍師連盟』と比べると全然で、捨てても惜しくないと思っている。
なお、『少林問道』は、2019年3月3日から、毎週日曜朝に3話ずつ再放送。
衛星劇場をちょっとでも短期の契約にして『少林問道』を完走するには、良い機会かも。

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東京倶楽部さん、「少林問道」完走お疲れ様でした&有難うございました!はい、アジリパ史上でも最も骨太な時代劇でして、私この作品のファーストランを見届けたあとは魂の抜け殻となってしまっております。ただいま次に向けて充電中。でも東京倶楽部さんの解説記事を拝読して元気を頂きました(^^) いつものごとくツイッターで御紹介させて頂いて宜しいでしょうか?

2019/2/17(日) 午後 11:25 [ アジリパ ]

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アジリパさん:
現地での評判が良かったので、どんな感じなのか気になっていたのですが、
想像していた以上に深く、重厚なドラマでした。
これ、日本語字幕が無かったら、どれ程度理解できたのだろう?と考えると、
日本に入れ、日本語字幕を付けて見せて下さった事に、益々感謝です。
俳優陣の演技も非常に良く、印象に残っております。
twitterでのご紹介は、まったく問題なしです。毎度お知らせ有難うございます!

2019/2/18(月) 午前 11:20 mango

有難うございます〜〜m(_ _)m

2019/2/18(月) 午後 4:59 [ tak***** ]

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アジリパさん:
難解なドラマを、日本語字幕付きで鑑賞できる機会を頂き、
こちらこそありがとうございました!

2019/2/18(月) 午後 8:31 mango

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無謀にもネットで中文字幕で観はじめました。(BSのみ視聴可なので)すごいですね。
人間のすさまじい怨みや悲しみや… 今10回まで観たところです。


「瑯琊榜」供米本語字幕)も同時進行で観ているので、郭京飛の演技に目を見張っています。
周一圍も、「蒼穹の昴」の時はあまり興味無かったのですが、このドラマはいいですね。

でも、こんな書き込みをすると、mangoさんのお手を煩わせることになるのかな?

アナログなおばさんなので、新しいブログへたどり着けません。
公表??されるまで待ってます。(活門は登録しないと見れないのでしょうか?)

2019/3/18(月) 午後 5:39 [ 二胡ちゃん ]

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二胡ちゃんさん:
いえ、活力門は利用者の多いブログで、登録なしで普通にご覧になれますよ。

『少林問道』は、重厚なドラマですよねぇ〜。
出演俳優がまた実力派揃いで、物語にも演技にも見入りました。

2019/3/18(月) 午後 8:17 mango


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