旧 東京倶樂部★CLUB TOKYO:平成館

こちらは実質閉鎖しております→新住所:http://mangotokyo.livedoor.blog/

全体表示

[ リスト ]

イメージ 1

2019年1月16日、東京国立博物館・平成館で始まった特別展<顔真卿〜王義之を超えた名筆>を、
終了間際で滑り込み鑑賞。



イメージ 2

本展は、政治家にして、数々の名筆を残した唐代屈指の書家・顏真卿(709-785)を中心に、
奥深い“書”の世界を紹介する中国美術展。

開始以来、好評を博し、連日混雑していると言われる展覧会だけれど、
私自身が書に暗いため、行列に並んでまで観るべきか?と躊躇。
そうしたら、友人Mも興味があるというので、二人だったら、並ぶのも苦にならないと思い、
会期の最終週の平日、一昨日に重い腰を上げ、上野へ。

★ 入館

イメージ 3

現地に到着したのは、朝8時45分頃。
まだ閉鎖している正門の外には、列が2列。
一つは、チケットを購入する人の列、もう一つは、すでにチケットを持っている人が入館を待つ列。
我々は事前にチケットを用意しておいたので、後者に。

9時20分を過ぎた頃、門が開き、我々の列は敷地内へ移動。
この時、やはり居ました、「えっ、この列、チケットを購入するための列じゃなかったの?!」と焦る人が。
私より早く現地に到着し、列に並んでいたのに、
開館間際になって、ようやくその列が間違っていると気付き、
チケット購入者用の列に改めて並び直す羽目となったのは、気の毒であった。
列に関するきちんとした説明表記が無いので、確かに分かりにくい。

我々は、問題なく、そのまま平成館の前まで行き、
開館時間の9時半に、無事入館。

★ 祭姪文稿

本展の目玉と言われているのが、顔真卿50歳の時の書<祭姪文稿(さいてつぶんこう)
入館したところで、次には“<祭姪文稿>待ち”という新たなハードルが有るのだ。
本当は順を追って作品を鑑賞し、その流れで祭姪文稿>に辿り着くのがベストなのだろうけれど、
ちょっとでも混雑を避けるため、我々は、まず祭姪文稿>を優先し、
その後他を見て回るという策をとることにした。

祭姪文稿>が展示されているのは、第1会場の出口近く。
第1会場内の他の展示品には目もくれず、一気に出口附近へ向かう。
我々と同じように、“まずは祭姪文稿>”と考える人が多いみたいだが、
それでも、ほとんど待たされることなく、作品鑑賞に至った。
但し、作品の前で立ち止まることは禁止されているので、待ち時間が少なくても、鑑賞時間も少ない。



イメージ 4

この<祭姪文稿>は、安史の乱で非業の死を遂げた甥っ子・顏季明を追悼する弔文の原稿で、
王羲之の<蘭亭集序>、蘇東坡の<寒食帖>と共に、“天下三大行書字帖”の一つに挙げられる名書。
所蔵している台北國立故宮博物院でも、普段なかなか展示されることはなく、
ましてや海外へ貸し出されることなど、ほとんど無いお宝。
(なんでも、祭姪文稿>は、一回の展示が42日を越えてはいけないとか、
一度展示したら、その後3年休ませないといけない等といった、厳しい故宮ルールがあるらしい。)

ショウケースの中にドーンと広げられた祭姪文稿>は、かなり長い巻き物だけれど、
実のところ、本体は70〜80センチ程度。
後方には、色々な人々からの跋(ばつ)が添えられている。
それら本文以外の部分を解説したパネルは、全てを鑑賞し終わった後に目にした。
どれが誰の跋で、どんな風に評しているのかといった情報は、先に読んでおきたかったわぁ〜。残念。
跋もそれぞれに達筆で、書体に個々の差がはっきり出ている。


で、祭姪文稿>とは、
詰まるところ、“世界一珍重されている下書き原稿”の一つ、という解釈で良いだろうか。
正直言って、上手いのだか下手なのだか、私には分からないけれど、
当時、それを書いていた顔真卿の感情がムキ出しになっているかのような、
心情を訴える力を感じる書ではあった。

★ その他

この特別展では、祭姪文稿>以外の作品も勿論展示。
ぐるりと見て回ることで、書の変遷が分かるようになっており、
書マニアの人なら、恐らく感涙モノであろうお宝が他にも色々。

そのような作品の内の一つで、
祭姪文稿>のように隔離展示はされていないけれど、祭姪文稿>並みに混んでいたのが、
唐代の僧にして書家、懷素(725-785)による<自敘帖>

あと、中国の歴史ドラマの中で親しんでいる武則天(624-705)や、
武則天モノに大抵登場する褚遂良(596-658)の書は、実物を見ることで、
「武則天も褚遂良も架空のキャラじゃなくて、本当にこの世で生存していたのねぇ」と、
遠い歴史上の人物が一気に身近に感じられる。
唯一展示されている武則天の書は升仙太子碑>
その中に、武則天が考案した則天文字として有名な“圀”の字も書かれていたので、ちょっと感動。

本展の主人公・顔真卿は、祭姪文稿>以外の作品も数多く展示されており、
特に72歳の時の書、<自書告身帖>は、
字の良し悪しではなく、その物自体の存在が、記憶に残っている。
その<自書告身帖>は、どういう物かというと、顔真卿に、太子の教育係に転任するよう命じる詔告公文。
自分に下された辞令を、自分で書いちゃうんですね。

★ 紀泰山銘

イメージ 5

この展覧会は、基本的に撮影禁止。
会場内で唯一撮影が許可されいるのが、こちら<紀泰山銘>
大きい!まるでスタジオ撮影する時に設置する背景布のよう(…いや、それ以上の大きさ)。

イメージ 6

山東省泰安市の泰山の崖に刻まれている碑刻の拓本で、
記したのは、楊貴妃を寵愛したことでも有名な唐の玄宗(685-762)。
(↓)こちらが、拓本の元となった碑刻。

イメージ 7

常識的にイメージする石碑とは、サイズが違う。
だいたい、こんな巨大な拓本は、どうやって取るのでしょう…??

★ 五馬圖卷

イメージ 8

今回の特別展では、書がチンプンカンプンな私でも分かり易い作品も展示されているのです。
それが、北宋の著名な画家・李公麟(1049-1106)による<五馬圖卷>

<五馬圖卷>は、清朝宮廷が2百年以上に渡り所蔵していたが、
王朝崩壊後、『ラストエンペラー』(1987年)で知られる愛新覺羅溥儀が、
弟の溥傑に下賜したという名目で、紫禁城外へ持ち出され、
溥儀が滞在していた天津の日本租界で、日本人に売却され、日本へ流出。
1928年11月24日〜12月20日、東京府美術館で開催された
唐宋元明の名画を集めた大規模展覧会で、一度公開された記録が残っているものの、
その後、日本国内で所有者が移り変わり、遂には、さきの大戦で焼失。
…のハズが、実は誰かさんが所有しており、つい最近の2017年、東京国立博物館に寄贈。
(寄贈した人物については、情報が公開されていない。)

ここには、端折って記したけれど、
この絵が、今回東博で公開されるまでに辿った流転の日々には、
映画『レッド・バイオリン』(1998年)並みの怒涛のドラマが詰まっているわけ。
そのような背景を想像するだけで、ロマンがあって、ワクワク。

では、肝心な<五馬圖卷>は、どのような作品なのだろうか。
描かれているのは、西域諸国から北宋朝廷に献上された5頭の駿馬。
馬の手綱を引いている人物は、服装などから、
前の3人は西域の人で、後ろの2人は漢人であることが分かる。
最後の一頭を除き、それぞれの馬には、“風頭驄”、“錦膊驄”、“好頭赤“、““照夜白”という名前の他、
産地や、年齢、大きさなどが記されている。
つまりは、“献上品目録”的な絵だったのですねー。

技術面では、毛筆による墨の線を主体にした“白描(はくびょう)”という画法で描かれており、
部分的に淡彩も施されている。
極細ペンなど無い時代に、筆だけでよくこのように緻密に描けたものだ。
非常に繊細でありながら、馬の重量感や躍動感も表現。

でも、なぜ絵画が、書の展覧会で展示されているの?という素朴な疑問もあるであろう。
<五馬圖卷>には、宋の四大家の一人に挙げられる黃庭堅(1045-1105)の跋文が添えられているのだ。
名書家とのコラボ作品的位置づけで展示されている訳です。





イメージ 9

一通り見て、会場をあとにしたのは、昼12時半頃。
見学に要した時間は、約3時間。
我々が外に出ると、平成館の前には長い列ができていた。
祭姪文稿>順番待ちの列で、待ち時間は70分とのこと。



今回の会期日数を数えてみたら、39日間。
確かに、祭姪文稿>に関する故宮ルールの42日は越えていない。
その故宮ルールに従うなら、祭姪文稿>は向こう3年はお目に掛れないことになる。
書にまったく詳しくない私にとっては、所詮“豚に真珠”なのだろうけれど、
それでも、このような貴重な機会に巡り合えて良かった。
良い真珠を見て、豚の目も多少は肥えたかも知れません。
勿論、書に対する造詣が深い人にとっては、今回の展覧会は、お宝の山に違いない。

噂に聞いていた通り、会場は、華人率非常に高し。
展示されている書を凝視しながら、ブツブツ呟いている人も結構いる。
そう、あの方たちは、書かれている内容を読めるんですよねぇ。

私自身は、中国の映画やドラマを観ながら知らず知らず内に蓄積されていった中国史の知識が、
まったく無知な書を鑑賞する際にも、作品の背景などを想像するのに、多少は役立っている気がしたし、
古の人々がしたためた書を通し、歴史のロマンさえ感じた。


この特別展は、会期終了まであと僅か。
駆け込みで行く人は、せめてチケットを事前に用意しておくべし。




◆◇◆ 顔真卿〜王義之を超えた名筆◆◇◆
会場:東京国立博物館 平成館

会期:2019年1月16日(水曜)〜2月24日(日曜)

9時半〜17時 (月曜休館)

閉じる コメント(2)

顔アイコン

mangoさん、お久しぶりです。ご無沙汰しておりました。でもいつも楽しく拝読しております。
さて、標記特別展の詳しいレポート、ありがとうございます。おかげさまで、足を運べずにいた私も、追体験することができました。中でも「五馬図巻」のお話には、とっても興味をひかれました―☆
mangoさんのおっしゃるとおり、この絵(書)が辿ってきた流転の日々に詰まっている怒涛のドラマに、ほんとにわくわくします(〃ω〃)♪
勢い余ってサーチしてみたところ、「五馬図巻」の日本流入までを追った論文がありました。この執筆者などをモデルに、誰か映画化してくれないかな〜、などと夢想しております。

ドラマの方は、タイトルに納得できない…と毎回思いながら、『麗王別妃』を視聴中です。麗王って、誰じゃー。

2019/2/24(日) 午後 3:31 [ jun ]

顔アイコン

junさん:
お久し振りです!
書にはまったく暗いので、<顔真卿展>に関しては、とてもご参考にはならないかと…。
ただ、どの作品にも歴史があるので、それぞれの書家や作品の背景を考えると、
ドラマティックで、ワクワクさせられますね。
仰る通り、<五馬圖卷>の流転の日々は、充分映画に成り得ますよねー。

“麗王不在で『麗王別姫』”は、あからさまに“名作『覇王別姫』あやかり邦題”で
みっともないですよね…。
このドラマは、邦題云々以前に、脚本や映像の陳腐さが気になり、私は早々に脱落でした。
あっ、でも時代は丁度<祭姪文稿>に重なるので、何かしらのお勉強にはなりますね。

2019/2/24(日) 午後 4:59 mango


.


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事