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この新訳は5年以上前に研究社のウエブサイト『英語青年』に毎月連載されていたものですが今年9月にようやく単行本化されました
ずいぶん待たされたわけですが『ロビンソン・クルーソー』ですばらしい翻訳を手掛けた武田先生の翻訳は今回も期待を裏切らない安定したものでとても満足しました
『ペストの記憶』(研究社)は『ロビンソン〜』と同じ著者の英国作家ダニエル・デフォーが300年近く前に発表した記録文学です
本書は1665年にロンドンで発生し10万人もの死者を出したペストの被害を刻銘に記録した異色の文学といっていいでしょう
訳者あとがきにあるように1720年から1722年にかけてフランスでペストの流行があり作者はこれを契機に50年ほど前にロンドンを襲い多大な被害をもたらし
たペストについて書く着想を得たようです
デフォーは架空の語り手を用いる形でペスト被害の拡大とその収束を臨場感あふれる筆致で緻密に興味深いエピソードを積み重ねています
そしてペストの脅威が人間をどれほどの恐怖のどん底に落としこむか冷徹に描かれていてそれはおおむね成功していました
今後人類がペストのような深刻な疫病に遭遇するかどうかはさておき教育の一環としてできるだけ多くの人々が本書を読むことはたいへん有益だと考えられます
ところで本書の関連書にアルジェリアの疫病被害をテーマにした同タイトルの『ペスト』(仏作家アルベール・カミュ作)があります
いつかそのうち読みたいですね
★★★★
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