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深秋看菊 玄齋 (下平聲八庚韻)
檐 下 秋 深 香 暗 生 檐下 秋深うして 香 暗に生じ
籬 邊 競 麗 菊 千 茎 籬辺 麗を競うて菊千茎
好 尋 陶 令 傾 吟 盞 好し陶令を尋ねて吟盞を傾け
究 問 忘 憂 遺 世 情 忘憂遺世の情を究問せん
現代語訳:
軒下では秋が深まったころにどこからか香りが漂ってきて、
垣根のそばでは、たくさんの菊が美しさを競っていた。
よし、陶淵明のもとを訪ねて詩の趣のある酒杯を傾けながら、
あの「飲酒」の詩に言う、憂いを忘れ、世間を忘れる気持ち
というものを問いただしてみようじゃないか。
語注:
※檐下(えんか): 軒下(のきした)のことです。
※籬辺(りへん): 垣根のそばのことです。
※千茎(せんけい): 千本の茎(くき)という表現で、
たくさん生えていることを表しています。
※好(よし): 「よし」という軽い肯定の言葉です。
※「傾」は八庚の字で韻と同じ字を韻と違う場所で使う
「冒韻」になっていますが、転句は韻を踏まない句なので許されています。
※陶令(とうれい): 陶淵明(とうえんめい)のことです。
一時期に彭沢(ほうたく)の県令(県知事)に
なったことからそう呼ばれています。
※陶淵明(とうえんめい): 陶潜(とうせん)(325〜427)の字(あざな)です。
東晋の自然詩人です。潯陽(江西省九江)の人です。五柳先生と自称し、
世に靖節先生と呼ばれました。彭沢(ほうたく)の県令になりましたが、
八十余日で辞職し、「帰去来辞(ききょらいのじ)」を作りました。
酒と菊を愛し、田園生活の実感を詩に描きました。
後世の文学に与えた影響の大きい人です。
※吟盞(ぎんさん): 詩の趣のある酒杯のことです。
※究問(きゅうもん): 問い詰めて徹底的に調べ上げることです。
※忘憂遺世情(ぼうゆういせいのじょう): 憂いを忘れて、世間を忘れる、
そんな気持ちのことです。下記の解説を参照して下さい。
解説:
漢詩の会の十月の課題です。
秋も深くなった頃に、菊を眺めながら酒を飲む、そんな情景を詠みました。
結句は陶淵明の「飲酒」其の七の一節よりの引用です。
以下にその部分を示します。
汎 此 忘 憂 物 此の忘憂の物に汎(うか)べて
遠 我 遺 世 情 我が世を遺(わす)るるの情を遠くす
(訳)菊の花びらをこの憂いを忘れる物(お酒)に浮かべて、
私の世間を遠く離れた気持ちがさらに深まるようだ。
中国の旧暦九月九日の重陽節には、邪気を払い長寿を願って、
菊の花を飾ったり、菊の花びらを浮かべた酒を酌み交わして
祝ったりしている場面がありますね。
この陶淵明の「飲酒」はそういう場面を詠んでいる詩です。
お酒を飲んで世間を忘れる気持ちの、楽しいような寂しいような感情を、
理解できるようになりたいなと思います。
しみじみとするような昔の秋の詩を読んで勉強しています。
菊の風景写真は以下のサイトのフリー素材を利用いたしました。
フォトライブラリー
http://www.photolibrary.jp/
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静かな秋の日に思索にふけっているということでしょうか。
陶淵明に問いただしてみようというのがすごいですね。
2009/10/10(土) 午後 0:18
風情を感じるとても素敵な漢詩ですね^^ぽち
2009/10/10(土) 午後 0:19
(〃^∇^)ノΩ傑作
投下
2009/10/10(土) 午後 0:20
ウィルさん、コメントありがとうございます。
静かな秋の日に心静かに詩を考えながら、ちびりちびりとお酒を飲む、
そんな場面を考えていました(お酒は控えめにしています)。
陶淵明に問いただすというところに、お酒を飲んで気持ちが大きくなった、
そんな情景になればいいなと考えていました。
2009/10/10(土) 午後 0:26
まいさん、コメント + 傑作投下、ありがとうございます。
秋の気分が出るような漢詩を作っていければいいなと思います。
いつもありがとうございます。これからもがんばります。
2009/10/10(土) 午後 0:29
こんにちは〜♪
おっ、秋を詠まれていますね^^^
お題は「菊」ですか、漢詩ならではですね^^^
確かにお酒を呑んで世間を忘れたいし、
世間が苛立たしいから呑むのかも知れませんね^^^
わたしは「萩」を詠んでみました。
トラバいたします。。。。。。。。
今日も素敵な日を。。。。
ぽち。
2009/10/10(土) 午後 0:48
吉祥天さん、コメント + 傑作ポチ + TB ありがとうございます。
毎年の詩題で菊が出ていますね。重陽節に関係するからかなと思います。
世間を忘れ、憂さを晴らすためにお酒を飲むこともあるなと思います。
吉祥天さんの萩の短歌は妖艶な美しさですね。
経験を積み重ねて美しくなったのでしょうね。
僕もいろいろなことを積み重ねていきたいです。
これからもがんばります。
2009/10/10(土) 午後 2:15
「香暗生」がすごくいい! ポチ! (漢字の順番はこれで正しいのですね?) 「遺」に「忘れる」の意味があることは初めて知りました。「残す」という意味だけかと思っていました。
2009/10/10(土) 午後 3:27
akiko さん、コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
漢詩の例では「暗香生(暗香生ず)」が多いですが、
今の中国の人の漢詩の中に、「香暗生」が使われている例が
ありましたので、今回使ってみました。効果的であれば嬉しいです。
辞書を引きますと、「遺」は「取り残していってしまう」
という意味から、「忘れる」という意味もありますね。
あと、「残す」の他にも「送る」の意味もありました。
こういう部分はきっちり覚えていきたいなと思います。
これからもがんばって作っていきます。
2009/10/10(土) 午後 4:28
菊の香が先か酒が先か、私は下戸なのですが菊を見ながらなら、ひと口はいけるかもしれない。
…忘憂遺世はなかなか成りません、おそらく酒の力でも。古くから酒と憂いの歌に多いのはそのせいか?ポチ。
2009/10/12(月) 午後 6:29
どこからか香ってきたのは、金木犀のようですね。
お酒を秋に飲む・・これは夕暮れでしょうか。
なんとなく光景が見えますね。傑作です。
日本酒は、どんな容器に入れていたのかなあ・・と。
2009/10/12(月) 午後 10:33
ひろちんさん、コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
花を眺めるのと、お酒を飲むのと、宴会の中ではお酒が主になりそうですね。
僕もちびりちびりとお酒を長い時間掛けて飲んでいきますね。
なかなか忘憂遺世の境地は味わえませんね。
そうなりたいという願望が昔の詩にあるのかなとも思いました。
2009/10/13(火) 午前 10:39
Ruri さん、コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
金木犀も秋の花ですね。細長い花びらが特徴的ですね。
夕暮れのお祭りでお酒を飲んでいる光景を想像していました。
奈良時代以降は、陶器の酒盃が作られていたとありました。
陶器の酒杯で濁り酒を飲む場面ではないかなと思いました。
これからもがんばります。
2009/10/13(火) 午前 10:51
玄さま。先日は、お世話になりました。
なるほど、これも 良い詩ですね。忘憂遺世の情、ボクもしみじみ、そういう情感に浸ってみたいです。
自分で作ろうとすると、なかなか、難しいものですね。いろいろと参考にさせていただきます。御教示いただければ幸いです。
2009/10/13(火) 午後 9:04
ピンパパさん、コメントありがとうございます。
最近は故事を使う詩を作っていますが、ゆくゆくは故事を使わずに
自分の言葉で作っていきたいなと思っています。
僕も忘憂遺世の境地には届いていませんが、
そういう気持ちを味わってみたいなとずっと思っています。
漢詩は作ってみると、昔の漢詩を鑑賞するのも楽しくなってきました。
僕は始めてまだ三年ほどですが、じっくり学んでいこうと思っています。
僕にも出来ることがあれば、協力していきます。
これからもよろしくお願いいたします。
2009/10/14(水) 午前 0:55