玄齋詩歌日誌

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源氏物語・帚木

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雨夜の品定めの続きです。左馬頭(さまのかみ)の恋の打ち明け話が始まります。

Yahoo! ブログは 5,000 文字の制限がありますので、
今日は記事を二つに分けて更新します。


ここからが本文です。


「以前に、私がまだとても地位の低い頃に、愛しいと思う人がおりました。
 世間で噂されているように、容貌などはとても整っているとは言えない女性
 でしたので、若い時分の浮気心を持っている頃には、この人を本妻にして
 最後まで連れ添おうという風に考えを定めることはありませんでした。

 身を寄せる妻の一人とは思っていましたが、物足りない気持ちになっていて、
 いろいろな女性に心移りをしておりましたら、それに対してとても嫉妬を
 しておりました。私はそのことが好きになれずに、こんな風ではなしに、
 もっと穏やかでいてくれればよいのにと思いながら、
 ひどく厳しく疑われることを煩わしく思っておりました。

 一方で私のような取るに足らない者を見捨てることもせずに、
 なぜこのようにまで思ってくれるのだろうと、気の毒に思う時もありましたので、
 自然に私の心が正しくなっていきました。


 この女は、元来は自分の考えがそこまで及ばなかったことに対しても、
 何とかこの人のためにならなければと思って、無理にでも努力をしており、
 さらに苦手な方面へも、人から残念に思われないようにと思って
 努力を重ねながら、とても誠実に私の影に回ってお世話をしてくれて、
 ほんの少しでも私の気持ちに背くことのないようにと
 考えるまでになっていました。

 元々気の強い人でしたが、私には従順でもの柔らかく振る舞う女になって、
 自身の醜い容貌を、この人には嫌に思われないようにと思って、
 必死になって化粧や身づくろいに努力をし、あまり親しくない来客があった折には、
 自分の醜い容貌を見せては、夫の不名誉になると思って、
 遠慮して客に近づかないようにして、身だしなみに気をつけておりましたので、
 わたしは次第に外見には見慣れてきまして、性格もそう悪いものでは
 ありませんでしたが、ただこの嫉妬癖という一点だけは、
 彼女にもなくすことが出来ませんでした。


 当時の私はこう思っていました。

 『こんな風にひたすら一途に私に従って、私の意に沿おうとしている人
  であるわけだから、どうにかこの人が懲りるほどの行いをして、
  脅して、この女がこの嫉妬の方面でももう少し改善して、
  性格の悪さもおさめようと思うようになって、別れるということは
  本当につらいことだと思って別れようというほどの気持ちにさせたのならば、
  これほどに私に従う気持ちがあるのならば、きっと懲りるに違いない』

 と。そのように思いまして、わざわざ薄情でつれない態度を見せて、
 いつものように女が腹を立てて嫉妬をしてきますと、私は、

 『これほどにあなたが勝ち気で強情では、どんなに夫婦の縁が深くても、
  もう二度と会いたくない。私との仲ももうこれまでと思うのであれば、
  このような道理に合わない邪推でも何でもすればいい。
  この先もずっと添い遂げようと思うのであれば、

  たとえつらいことがあったとしても、心の中でじっと我慢をして、
  そのようなことはありふれたことだと思うようにして、
  このような嫉妬の気持ちさえなくすことが出来れば、
  私はあなたをどんなに愛しいものに思うことだろう。

  そうすれば私も人並みに出世して、多少は官吏として一人前になった頃には、
  あなたは横に並ぶ人のいない正夫人になるだろう』

 などというように、上手に教えさとすことが出来たと思いまして、
 得意になって言い立てておりますと、女は少し微笑んで、

 『私はあなたが万事にみすぼらしい姿でいることも見のがしていて、
  やがて官吏として一人前に扱われることを待っていることは、
  とてものどかな気持ちで待つことが出来ますし、
  出世が遅いということも格別苦しく思うことはありません。

  あなたの薄情な気持ちを我慢して、あなたのお考えが変わる時も
  いつか来るだろうと、年月を過ごして当てにならない期待をしているときが、
  とても苦しいと思っているのです。ですから今はお互いに夫婦の縁を
  切るしかない時になったのです』

 と、くやしそうに言いますと、私も腹が立ってきまして、
 憎らしそうなことを激しく言い立てました。

 すると女も堪えることが出来ない性分なので、
 私の指を一本引き寄せて噛みついてきました。
 そこで私も女のこの行為にかこつけて大げさな様子で痛がりまして、

 『このような傷までつけられてしまっては、ますます宮仕えをすることが
  出来なくなった。そもそも低い位にいる役人がこのように辱められたと
  すれば、何によって一人前の人間に出世することが出来るだろうか。
  離縁どころかこの世を離れて出家するしかない身になってしまった』

 などと言って脅して、

 『それではさらばだ。今日限りで会うこともない』

 と言って、噛まれた指を痛そうに曲げながら、その家を退出してきたのです。


 『手を折りてあひ見しことを数ふればこれひとつやは君が憂きふし  左馬頭

  訳: あなたとの結婚生活を指折り数えてみると、あなたのつらく悲しい点は、
   この指を噛んだただ一点だけでしょうか(そうではないでしょう?)。


   (解説)この一首は伊勢物語第十六段に出てくる一首の引用です。

    手を折りてあひ見しことを数ふれば十といひつつ四は経にけり

    訳: あなたとの生活を指折り数えていますと、
     十を数えてさらに四つ繰り返しています。

    どちらも離縁の歌です。伊勢物語では尼になった彼女への歌なので、
    出家をほのめかす一首でもありますね。


  私を怨むことなど、まさかできないでしょう』


 などと私が言いますと、そこまでしますとやはり女は泣きながら、


 『憂きふしを心一つに数へきてこや君が手を別るべきをり  左馬頭の妻』

  訳: あなたの薄情な浮気心を、私の一つの心の中に納めていましたが、
   今回のこのことはあなたのもとを離れなければならない機会だとでも
   いうのでしょうか。


 などとお互いに言い争っておりましたが、本当に相手の心が変わることになると
 思うことが出来ないまま、数日たつまで手紙も人を遣わして持って行かせる
 こともせずに、いろいろな所にふらふらと出歩いておりました。



ここまでが本文です。

浮気に対する嫉妬の気持ちさえ抑えることが出来たら、
などと身勝手な願望を言っていますね。

夫が新しい妻や愛人を持つことに対する妻の嫉妬や悲しい気持ちというのは、
たとえ夫が光源氏であってもなくすことが出来ないということが、
源氏物語の全巻を通じて語られています。

源氏でもなくすことが出来ないのであれば、
まして普通の人々であったら・・・、と思いました。


次は左馬頭とその妻とのその後の結末です。


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