玄齋詩歌日誌

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夜航詩話

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日付を見ると、二年近く放り出していたことが分かります。
そこで、簡単に『夜航詩話』のことを説明いたします。
 
『夜航詩話(やこうしわ)』は、江戸時代の津藩の儒学者、
津阪孝綽(ちさかもとひろ)という方の書いた詩話(しわ)のことです。
 
「詩話(しわ)」とは、辞書には「詩、詩人、詩の作法や逸話などについて
述べた話。また、それらを記した随筆ふうの書物」と載っています。
 
この詩話に載っている作法や逸話を、漢詩を作る際の参考にするために
読んで訳していくことが、僕の課題の一つです。
 

では、続きを訳していきます。
 
 
 
●原文
 
 謝茂秦云、凡作詩、誦之行雲流水、聽之金聲玉振、觀之明霞散綺、
 講之獨繭抽絲、此詩家四關、使一關未透、則非佳句矣、洵知言哉。
 
 

●書き下し文
 
 謝茂秦(しゃもしん)云わく、凡(およ)そ詩を作るに、
 之を誦すれば、行雲流水(こううんりゅうすい)、
 之を聴けば、金声玉振(きんせいぎょくしん)、
 之を観れば明霞(めいか)の綺(あや)を散じ、
 之を講ずれば独り繭(まゆ)の糸を抽(ぬ)く。
 此れ詩家の四関(しかん)、
 一つの関をして未だ透らざらしめば、則ち佳句に非ずと。
 洵(まこと)に知言なるかな。
 
 
 
●現代語訳
 
 
明の民間の詩人の謝榛(しゃしん)は言いました。
 

 「全体的に言うと、詩を作るならば、 
 次のような詩でなければならないのです。
 
 その詩を節を付けて詠むと、行く雲と流れる水のようにとどこおりなく、
 
 その詩を聴くと、音楽を合奏するとき、初めに鐘を鳴らしてもりあげ、
 終わりに磬(けい)という石で作った楽器を打ってしめくくる、というように、
 きちんと詩の中の構成が整って、知恵と道徳が整っており、
 
 その詩を見ると、明るい夕焼けの光がきらびやかに輝くように美しく、
 
 その詩を説明すると、一人で繭の糸を抜いていくように
 細かい所まで整っている、
 
 これは詩人の四つの関門であり、その関門の一つでも
 通ることができないの であれば、良い詩句とは言えない」と。
 

これは本当に詩の本質をとらえた言葉です。
 
 

●語注
 

 ※謝茂秦(しゃもしん): 謝榛(しゃしん)の字(あざな)です。
 
 ※謝榛(しゃしん): 明の時代の官僚ではない民間の詩人です。
  号は四溟山人(しめいさんじん)、又は脱屣山人(だっしさんじん)
  といいます。李攀龍(りはんりょう)や王世貞(おうせいてい)などの
  当時の有名な詩人たちとともに、
  後七子(ごしちし: 明代の嘉靖年間の有名な詩人の七人です。
  少し前の時代の七人と区別して、そのように呼ばれます)
  の一人に数えられています。後に李攀龍と詩論で対立した挙げ句、
  その後七子から名前を外されてしまい、その後はずっと民間の人として
  一生を終えました。後世の人には律詩と絶句がすぐれている
  との評価を受けました。著書に『四溟集(しめいしゅう)』や
  『四溟詩話(しめいしわ)』があります。
 
 ※行雲流水(こううんりゅうすい): 行く雲と流れる水のことです。
  一定の形がなく、様々な状態に移り変わることのたとえです。
  また、物に応じ、事に従って、自然のままでとどこおらぬ態度を
  指すこともあります。
 
 ※金声玉振(きんせいぎょくしん): むかし、中国で音楽を合奏するとき、
  初めに鐘を鳴らしてもりあげ、終わりに磬(けい: 石で作った楽器)を
  打ってしめくくる。転じて、知恵と道徳がじゅうぶんに備わることを
  意味しています。もと、孔子が徳を集大成したのをたたえたことばです。
 
 ※詩家(しか): 詩を作る人、つまり、詩人のことです。
 
 ※知言(ちげん): 物事の本質をとらえた内容の言葉のことです。あるいは、  真理を伝えることばのことです。
 

●解説
 
 
 この一節を二年ほども放り出してあったのは、謝榛(しゃしん)という
 明の時代の詩人のことを理解するのに時間がかかったからです。
 この人名は Wikipedia には載っていないのです。
 吉川幸次郎の『元明詩概説』にも、人名しか載っていなかったのです。
 
 あるとき、中国で出版されたこの詩人の全集を 3,000 円ほどで
 買うことができましたので、そこからようやく手がかりを
 得ることができました。
 
 あとは、簡体字でこの詩人を検索するといろいろと出て来ました。
 これからは簡体字でもいろいろと調べていこうと思います。

 
 作者の津阪孝綽がこの詩人を取り上げたのも、
 この詩人が李攀龍と対立したことが理由ではないかと思います。
 吉川幸次郎著の『元明詩概説』によると、李攀龍は昔の詩文を
 引き写して詩を作っていたことや、常に同じ詩句を常套句のように
 使っていたことなどが批判されていたと書かれています。
 
 それに対してこの謝榛という詩人は、李白や杜甫のすぐれた詩を熟読し、
 声に出して読み、そうやって詩を味わうことで、声の調子や精神を
 自分の中に取り込んで、その上で詩を作る、ということを主張していました。
 
 今の時代からするとどちらが良いかはよく分かりますね。
 

 「学ぶことは模倣だ」とは言っても、漢詩の場合では、
 それはその人の詩句や形式をまるごと借用することではなく、
 その詩を読んで詩句の意味を調べていくことで、
 詩にでてくる考えや感情などをくみ取って、
 その上でまったく言葉も形式も違う、自分なりの言葉に組み立てて
 表現してみる、ということだと思います。
 
 僕も漢詩を作る際はそういうところに気をつけていきたいなと思います。

閉じる コメント(6)

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詩人の全集手に入れられて良かったですね。
沢山の方の詩を詠むことは上達の一歩でしょう。
玄さんは努力を惜しまないですから。。ポチ

2011/9/3(土) 午後 9:44  HOSI 

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声に出すことは『歌』の基本でしょうね、調べのよい歌が詠めると気持ちがいい^^ ポチ。

2011/9/4(日) 午前 0:54 ひろちん。

こんばんは✿
以前の玄さんが訳したものも
少し読ませていただきました。
改めて凄いなと思いました☆
とても勉強になりますし、学ぶ姿勢が
とても素敵だと思いました。
これからもお身体を労わりつつ頑張ってくださいね。
ポチッ♫☆。.:*:・'°★°'・:☆*゜✽。+*✽ +*✽ +*✽

2011/9/4(日) 午前 1:07 ゆーみん♪

ほしさん、コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
日本語訳とかを必要としなければ、中国語の書籍として
安く買えるということがわかりました。
昔の漢詩をいろんなところから入手して、役立てていこうと思います。
これからも少しずつ勉強していきます。

2011/9/4(日) 午前 9:56 白川 玄齋

ひろちんさん、コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
声に出しても美しい詩歌は理想ですね。
音にまで気を配った昔の短歌はすごいなと思います。
そこに向けて努力していきたいなと僕も思います。

2011/9/4(日) 午前 9:59 白川 玄齋

ゆーみんさん、コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
日付を見ると、かなり中断の期間が多いことに気づきます。
資料を揃えることに時間を割いています。
できる限り確実に訳していこうと思います。
訳しながら、自分の体験を重ね合わせて、
良い漢詩を作れればいいなと思っています。
健康に気をつけて少しずつでも進めていきたいなと思いました。
またこれからもがんばっていきます。

2011/9/4(日) 午前 10:10 白川 玄齋


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