玄齋詩歌日誌

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古詩(長い漢詩)

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虎丘(中国 / 蘇州)
Photo by (c)Tomo.Yun
 (
http://www.yunphoto.net)
 
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  偶成・二十七韻 玄齋  (上平聲四支韻)
 
幾 流 佳 人 涙,  毎 夜 屯 難 時。
 
迂 儒 重 失 言,  正 似 累 卵 危。
 
言 拙 似 薄 情,  夜 深 恐 別 離。
 
吟 詠 我 所 長,  案 句 啓 愁 眉。
 
事 理 與 文 才,  兩 得 挽 回 期。
 
 ●
 
事 理 誠 難 得,  易 傳 聞 程 頤。
 
不 屈 論 敵 苛,  終 生 儒 学 師。
 
我 好 受 難 人,  求 道 深 如 之。
 
道 心 識 機 微,  易 理 足 自 支。
 
体 得 周 易 義,  来 復 問 伏 羲。
 
只 不 言 吉 凶,  善 道 柔 軟 隨。
 
此 人 有 此 言,  共 苦 不 懷 疑。

 ●
 
道 義 多 論 者,  文 才 識 人 誰。
 
經 世 覓 周 公,  刪 詩 求 仲 尼。
 
聖 人 雖 足 尊,  不 暇 長 措 辭。
 
得 才 佳 亂 世,  三 國 得 時 宜。
 
七 子 生 建 安,  三 曹 長 文 詞。
 
姦 雄 父 曹 操,  宿 志 詠 乘 騎。
 
受 難 弟 曹 植,  與 難 兄 曹 丕。
 
弟 有 七 歩 才,  即 吟 得 自 持。
 
復 同 賦 戀 情,  欲 學 此 神 竒。
 
 ●
 
兩 得 吟 箋 前,  彩 筆 投 硯 池。
 
戀 情 應 燃 焼,  素 襟 今 在 茲。
 
其 情 載 吟 筆,  箋 上 莫 相 欺。
 
陳 志 吟 古 體,  懷 君 綴 竹 枝。
 
一 生 偏 爲 君,  終 生 心 不 移。
 
我 生 此 句 裏,  斯 道 賭 生 涯。
 
 
 
書き下し文:

  題「偶成(ぐうせい)」

幾たびか流す佳人の涙,
毎夜 屯難の時。
迂儒 失言を重ね,
正に累卵の危うきに似たり。
言の拙きは薄情に似て,
夜は深くして別離を恐る。
吟詠 我が長ずる所,
句を案じて愁眉を啓かん。
事理と文才と,
両ながら得て挽回 期せん。

 ●
 
事理は誠に得難く,
易伝の程頤に聞かん。
論敵の苛むるに屈せず,
終生 儒学の師なり。
我の受難の人を好むは,
道を求むることの深きこと之の如くなればなり。
道心の機微を識り,
易理自ら支うるに足る。
周易の義を体得し,
来復を伏羲に問う。
只だ吉凶を言わず,
善道に柔軟に随えと。
此の人にして此の言 有り,
苦を共にすれば懐疑せず。
 
 ●
 
道義は論者 多し,
文才 識る人は誰ぞ。
経世を周公に覓め,
詩を刪るを仲尼に求む。
聖人 尊ぶに足ると雖も,
措辞を長ずるに暇あらず。
才を得るは乱世に佳し,
三国 時宜を得たり。
七子を建安に生み,
三曹 文詞を長ず。
姦雄なる父の曹操,
宿志 騎に乗りて詠ず。
難を受ける弟の曹植,
難を与える兄の曹丕。
弟は七歩の才 有り,
即吟 自ら持するを得ん。
恋情を賦するも復た同じ,
此の神奇を学ばんと欲す。
 
 ●
 
両ながら得て 吟箋の前,
彩筆を硯池に投ず。
恋情 応に燃焼すべし,
素襟 今 茲に在り。
其の情を吟筆に載せ,
箋上 相い欺く莫れ。
志を陳ぶるに古体を吟じ,
君を懐うて竹枝を綴る。
一生 偏に君が為なり,
終生 心移らず。
我が生 此の句の裏,
斯道に生涯を賭けん。
 
 
現代語訳:

 題:「偶成(ぐうせい)、つまりたまたまできた詩」

何度、美しい人の涙を流させてしまったのだろう。
毎夜毎夜、思うようにいかず苦しむ時を過ごしています。
世事に疎い学者は何度も失言を重ねて、
いまはまさに、卵を重ねて崩れやすいような、そんな危険な状態なのです。
言葉を表現する能力が拙いとなれば、まるで薄情者のようになり、
この夜更けに別れてしまうのではないかと恐れる状況なのです。
詩句を作ることは私の得意な所です。
詩句を考えて、あなたの憂いによってしかめられた眉を、
憂いを解いて元に戻そうと思います。
物事の実際の道理と、文を作る才能と、
両方を手に入れて何とか挽回(ばんかい)をしたいものです。
 
 ●
 
物事の実際の道理は本当に手に入れにくいものです。
周易(しゅうえき)、つまり中国の周の時代から伝わった易(えき)の
解説書を書いた、宋(そう)の時代の儒学者(じゅがくしゃ)の
程頤(ていい)に聞いてみましょう。
彼は自分の学説のライバルたちの嫌がらせにも屈することなく、
一生を儒学の先生として過ごした人です。
私が苦難を味わった人のことが好きなのは、
道理を求めることがこのように深い人だからです。
道理を得たいという気持ちで、道理の微妙な所まで知って、
易(えき)に書かれた道理は、彼の苦難の人生を支えるのに十分なのです。
周易(しゅうえき)の中で説明された意味をきちんと身につけて、
来復(らいふく)、つまり苦しい時期から幸運が開けてくる道理を、
古代の帝王で易を始めたという伏羲(ふくぎ)に問いかけたいのです。
ただひたすらに、吉か凶か、幸運か災いかということを言わずに、
正しい道理への導きに、柔軟に従いなさい。とありました。
この苦難を味わった人から、この言葉が出てくるのです。
苦難を共にしている私は、この言葉に疑いを持つことはありません。
 
 ●
 
人の正しい道理については論じる人が多いのですが、
文章の才能について知っているのは誰でしょうか。
国の治め方については、古代の周の時代の武王(ぶおう)の弟である
周公旦(しゅうこう たん)に求めることができますし、
古代の詩集である詩経(しきょう)の詩を三百編だけ残した道理を、
孔子(こうし)に求めることができます。
聖人は尊敬するのに十分だけれども、
言葉の使い方に熟練するには時間がなかったのです。
そのような才能のある人を得るには、乱世のほうが良いのです。
三国志の時代は、まさにそんな良い時期なのです。
建安の七子(けんあんのしちし)という文の才能にすぐれた
七人を生んだのは、三曹(さんそう)、つまり魏(ぎ)の曹操(そうそう)と
その二人の息子なのです。
悪知恵のすぐれた父の曹操(そうそう)は、
自分のかねてからの志を馬に乗って詩を作って歌いました。
苦難を受けるのは弟の曹植(そうしょく)のほうで、
苦難を与えるのは兄の曹丕(そうひ)のほうでした。
その弟の曹植には七歩の才(しちほのさい)というものがあります。
兄の曹丕が弟に、「七歩、歩くうちに詩を作らないと殺すぞ」と命じると、
弟はすぐに詩を作って、自分の身を保つことができました。
彼が恋心を詩にするときもまた同じ才能を発揮してすぐれた詩を作りました。
この飛び抜けて優れた才能を、私も学ぼうと思いました。
 
 ●
 
さて今、物事の実際の道理と文章の才能を二つとも手に入れて、
詩を書く小さな紙の前にいます。
きれいな筆を硯(すずり)の墨の入ったくぼんだ部分へ投げ入れました。
僕の恋心は今まさに燃焼しようとしている所です。
僕のあなたを想うありのままの気持ちが、今ここにあります。
この気持ちを詩人の筆に載せて、
紙の上で、欺くようなことをしてはいけないのです。
自分の志を表現するには唐の時代より前の古い詩の形で長い詩を作り、
あなたを想う気持ちを表現するのに竹枝(ちくし)という恋の詩をつづります。
私の一生は、ひたすらあなたのためにだけ存在するのです。
一生、その気持ちを変えることはありません。
私の人生は、この詩句の中にあるのです。
この漢詩という道に、生涯を賭けているのです。
 
 
 
このあとの記事で、語注と解説の記事を分けています。
コメント覧は解説の方のブログ記事に載せています。
そちらでコメントしていただくために、こちらのコメント覧は外しておきます。
 
 
 漢詩の語注の記事 - 先ほどの漢詩「偶成・二十七韻」の語注です。
 
 漢詩の解説とコメント覧の記事 - 先ほどの漢詩「偶成・二十七韻」の
 解説です。 (コメント覧はこちらに設けました)
 
 
 ということにいたしましたので、よろしくお願いいたします。

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