玄齋詩歌日誌

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曹植

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珍珠灘瀑布(中国・四川省)
Photo by : Quarter Repeater

 
 
 前回の曹操の息子の曹植(そうしょく)の有名な詩である、 『洛神賦(らくしんふ)』の翻訳の四回目です。こちらは現代語訳と解説になります。コメント欄はこのブログ記事に設けました。原文と書き下し文と語注については一つ前のブログ記事を参照して下さい。
 
 
 一つ前のブログ記事: (四)曹操の息子の曹植の漢詩である、
 『洛神賦』の訳の四回目です。(原文・書き下し文・語注です)
 
 
 さて、今回の『洛神賦(らくしんふ)』の訳の部分は、洛水(らくすい)という川の女神である宓妃(ふくひ)と曹植の逢瀬の部分から、自分を見失いそうになっていた曹植がきちんと自分を保って対応する態度に感じ入った宓妃は・・・
 
 
 
●現代語訳
 
 
このとき、私のそんな態度に洛水(らくすい)の女神は感銘を受けて、心があちこちをうろうろしながら落ち着かない様子でした。魂(たましい)は離れたり集まったりを繰り返すように落ち着くこともなく、暗くなったり明るくなったりを繰り返していました。その身軽な細長い体が棒立ちになっている様子は、まるで何かを待ち望んで鶴がその身体を伸ばしてつま先立ちをするような美しい姿であり、今から飛び立とうとしていて、まだ飛び立つ前のような姿でした。山椒(さんしょう)の実を塗り込めたような道路の香りが満ちている中を踏みしめて、蘅薄(こうはく)という香草の香りが広がる中を歩いてきました。遠くから寂しいながらも想い慕う気持ちを伝える長く緩やかな歌声に、いつまでも恋い慕う気持ちをかき立てられて、声は激しい哀しさに満ちて、いつまでも長く続いていました。
 
 
 するとその後、多くの神々が集まってきて混雑するほどになり、お互いに言葉を伝えたり、長く緩やかな声で話し合ったりしていました。ある者は清らかな川の流れの中で遊んでいたり、ある者は神々のいる川の中州(なかす)で飛び回っていたり、ある者は珍しい宝珠を取っていたり、ある者は翡翠(カワセミ)の羽根を拾っていました。湘江(しょうこう)という川の南にいる二人の姉妹の女神を引き連れて、さらに漢江(かんこう)という川の二人の女神を引き連れていました。彼女らは箕(き: みぼし)という星座の東で匏瓜(ほうか)という星が、独りで輝いていて連れ合いがいないことを嘆いていたり、さらにその箕(き)の星座の近くで牽牛星(けんぎゅうせい)、つまり彦星(ひこぼし)が一人でいる様子を詩に詠んでいました。
 
 
 そんな中で女神はそのあでやかで美しい薄物の上着を翻(ひるがえ)らせて、長い袖をかざしながらそこに長く止まっていました。身のこなしは空を飛ぶカモのようにすばやく、風に舞い上がる様子はまるで神のようでした。その歩く様子は軽やかでなよなよとしていてもの静かであり、靴下に塵がつくほどでした。その動作には一定の基準に従うようなことはなく、危ういように動いたかと思えば、落ち着いて動くこともありました。立ち居振る舞いは予測することは出来ずに、行ったり戻ったりを繰り返していました。
振り返ってこちらに流し目を送ってきて、明るくて艶のあるその玉のような美しい顔に、さらに美を添えていました。もの言いたげでありながら言葉を表に出すことはなく、その息は蘭(ラン)の花のようにかぐわしいものでした。その花のように美しい顔はしなやかな美しさを讃えていて、私は自分の食事も忘れるほどでした。
 
 
 
●解説
 
 前回の曹操の息子の曹植(そうしょく)の有名な詩である、 『洛神賦(らくしんふ)』の翻訳の四回目です。 洛水(らくすい)という川の女神である宓妃(ふくひ)と曹植の逢瀬の部分から、自分を見失いそうになっていた曹植がきちんと自分を保って対応する態度に感じ入った宓妃は、悲しい恋の歌を歌い、ほかの神々が集まってくる部分です。その中には、昔の故事に出て来た、湘江(しょうこう)と漢江(かんこう)の、二人ずつの川の女神が出て来ます。
 
 湘江(しょうこう)の川の女神は、詩句の中では「南湘(なんしょう)の二妃(にひ)」とあり、これは中国の太古の帝王の堯(ぎょう)の二人の娘の娥皇(がこう)と女英(じょえい)のことです。二人とも帝王の舜(しゅん)の妃となりましたが、舜が行幸中に亡くなったことを知り、二人とも湘江へ身を投げて死にました。その後、湘江の川の女神になったといわれています。
 
 漢江(かんこう)の川の女神は、詩句の中では「漢濱(かんひん)の遊女(ゆうじょ)」とあり、これは前回に出て来た漢の鄭交甫(ていこうほ)という人物の故事です。彼は漢水(かんすい)という川で逢った水の精である二人の仙女と心を通わせて、 お互いに佩玉(はいぎょく)、つまり腰に下げる玉(ぎょく)に 紐を通した飾りを交換しあったけれども、数歩も行かないうちに佩玉は消え去って二人の仙女の姿も見えなくなった、という故事です。
 
 いろんな川の女神の伝説があるなと改めて思いました。 特に湘江(しょうこう)の女神はいろんな漢詩にも出てくるので、きちんと調べていけばお相手の方を想って作る漢詩の良い材料になりそうだと思いました。
 
 
 嘆 匏 瓜 之 無 匹 兮,
 
 匏瓜(ほうか)の匹(つれあい)無(な)きを歎(たん)じ、
 
 
という詩句の部分は、唐の学者で、中国の南北朝時代に編纂された詩文集の『文選(もんぜん)』の注釈を書いた張銑(ちょうせん)の注釈によると、
 
 匏瓜、星名。獨在河鼓東、故云無匹。
 
 匏瓜(ほうか)は星の名なり。独り河鼓(かこ)の東に在りて、
 故に匹(つれあい)無しと云(い)う。
 
 
とありまして、つまり、匏瓜(ほうか)という星が 河鼓(かこ)という星の東に一人で輝いているから匹(つれあい)がいないことを指しているそうです。
 
 
 さらに、唐の学者の李善(りぜん)の注釈によると、『曹植九詠注(そうしょくきゅうえいちゅう)』という本に(この本のタイトルは正確にはわかりませんでした。曹植の書いた『九詠注(きゅうえいちゅう)』という本なのか、ほかの誰かの書いた、『曹植九詠注』という本なのか、判別がつきませんでした)、
 
 牽牛爲夫、織女爲婦。織女、牽牛之星、各處河鼓之旁。
 七月七日、乃得一會。
 
 牽牛(けんぎゅう)は夫と為(な)り、織女(しょくじょ)は婦(つま)と為る。
 織女、牽牛の星は、各々(おのおの)河鼓(かこ)の旁(かたわら)に
 処(お)る。七月七日、乃(すなわ)ち一(ひと)たび会うを得る。
 
 
 これは七夕の祭りの原典に当たる文章だそうです。河鼓(かこ)という星の東にある星が匏瓜(ほうか)で、河鼓(かこ)の近くにある星が牽牛(けんぎゅう)と織女(しょくじょ)だと曹植が思っていただろうということがわかりました。
 
 
 さらに河鼓(かこ)という星を調べて、漢の時代に作られた歴史書の 『史記(しき)』の中の天体の動きのことを記した「天官書(てんかんしょ)」の、魏(ぎ)の学者の孫炎(そんえん)が書いた注釈の中で、
 
 河鼓之旗十二星,在牽牛北。或名河鼓為牽牛也。
 
 河鼓(かこ)は之(こ)れ旗(き)の十二星(じゅうにせい)にして、
 牽牛(けんぎゅう)の北に在り。或(ある)いは名河鼓(かこ)を名づけて
 牽牛(けんぎゅう)と為(な)すなり。
 
 この「旗(き)の十二星(じゅうにせい)」の解釈に詰まりました。旗(き)とはおそらく二十八宿という中国の星座の「箕(き)」、つまり「みぼし」にあたると考えましたが、この星座の星の数は四つで、十二ではないのです。この十二の意味が何であるのかは、現在も調査中です。
 
 
 昨日はそこら中の漢文を調べ回っていました。こういうことも勉強になるなと思いました。お相手の方を想う漢詩を作るために、こういう地道な努力も続けていきます。これからも頑張ります。

閉じる コメント(10)

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今日はいつも嬉しいコメントありがとうございます。この素晴らしい漢訳に応援の☆ポチですよ!

2011/11/15(火) 午後 0:58 [ 清水太郎の部屋 ]

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幾分人間に似た戸惑いや恥ずかしそうな感じと大胆さがあるのが面白い。
ヨーロッパの川や湖に住むというニンフとちょっと似ている部分があるように感じられました。傑作。

2011/11/15(火) 午後 2:27 ひろちん。

清水太郎さん、コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
ようやく半分ほどを経過したので、残りもきちんと訳していこうと思います。
日々がんばっていこうと思います。

2011/11/15(火) 午後 3:16 白川 玄齋

ひろちんさん、コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
僕もこの洛水の川の女神は女神というよりは妖精さんだと思いました。
人間らしい部分が各処に見えていますね。お相手の方の姿を思い浮かべていました。
残り半分ほどもしっかり訳していこうと思います。これからもがんばります。

2011/11/15(火) 午後 3:22 白川 玄齋

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川の女神,水の精,美しい漢詩ですね。
また読ませ下さいね。ポチ

2011/11/15(火) 午後 9:10  HOSI 

ほしさん、コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
川の女神はお相手の方を思い浮かべるのに良い題材だと思っています。
これからも丁寧に続きを訳していこうと思います。
これからもがんばります。

2011/11/15(火) 午後 9:46 白川 玄齋

こんばんは〜♪
なかなか、素敵な解釈ですね^^
若い方がこういう漢詩の訳を
されることはすばらしいことですね^^
亡くなった親父が見たら、きっと喜んだに違いません。
やはり、日本の文学は中国の影響受けているんですね。

明日も素敵な日を。。。。。。。
寒くなりました、御身ご自愛を。
ぽち。

2011/11/15(火) 午後 10:14 -

吉祥天さん、コメント + 傑作ポチ、ありがとうございます。
ほかの著書の日本語訳とかなりずれてきていると思いますので、
いろんな訳と比べて検討していこうと思います。
吉祥天さんのお父様は漢詩を研究しておられたのですね。
僕も現在は漢詩と漢文にはまっています。
中国から取り入れたものを日本風に加工する、
一方ではそれに反発して日本独自のものを作る、
僕も両者のせめぎ合いのようなものを感じました。
お相手の方を想う漢詩の勉強のためにも、
これからもきちんとがんばっていきます。
今日も一日元気に過ごしていきます。

2011/11/16(水) 午前 9:36 白川 玄齋

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写真から −イオンが感じられ さわやかです。

翻訳も ステキな訳だなあ〜〜と 感心します。
凄く勉強されてるんだな!・・・。
玄さんの世界が、透明な感じに思えます。

2011/11/16(水) 午後 2:47 ある おかん

ある おかんさん、コメントありがとうございます。
中国の四川省の九寨溝(きゅうさいこう)のあたりです。
今回の漢詩とは直接の関係はないのですが、
とても美しい場所なので選んでみました。
言葉の意味はとことんまで追求しています。
お相手の方への漢詩に活かせるように、
一語一語きちんと訳していこうと思います。これからもがんばります。

2011/11/16(水) 午後 4:26 白川 玄齋


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