玄齋詩歌日誌

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西安城・西の城楼(中国・西安)
Photo by (c) Tomo.Yun
http://www.yunphoto.net
 
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今回訳したのは『説苑(ぜいえん)』という書物です。
前漢の学者である劉向(りゅうきょう)によって書かれた、
始皇帝の秦より前の時代から前漢までの間の
故事や伝説をまとめたものです。
儒学者としての思想が具体的な出来事の中で述べられています。
 
 
今回は第一巻の「君道(くんどう)」の第一回目です。
君主(くんしゅ)、つまり国を統治する人の身につけるべき
道理や心得について書いてあるところです。
 
 
 こちらは原文・書き下し文・現代語訳・語注の記事になります。
 
 この訳の解説は、以下の記事を見て下さい。
 コメント欄も解説の記事の方に設けています。
 
 解説の記事
 
 
 以上のこと、ご了承下さい。よろしくお願いいたします。
 
 
 
●原文:
 
 
『説苑』巻一「君道」 其の一
 
晋平公問於師曠曰:「人君之道如何?」
 
 
対曰:「人君之道清浄無為,務在博愛,趨在任賢。
 
広開耳目,以察万方。不固溺於流俗,不拘繫於左右。
 
廓然遠見,踔然独立。屡省考績,以臨臣下。
 
此人君之操也。」
 
 
平公曰:「善!」
 
 
 
●書き下し文:
 
晋(しん)の平公(へいこう)、師曠(しこう)に問いて曰(いわ)く:
 
「人君(じんくん)の道は如何(いかん)?」と。
 
 
対(こた)えて曰(いわ)く:
 
「人君の道は清浄(せいじょう)にして為すこと無く、
務(つと)むることは博愛(はくあい)に在りて、
趨(はし)ることは賢(けん)に任(にんずる)ずるに在り。
 
広く耳目(じもく)を開き、
以(もっ)て万方(ばんぽう)を察(さっ)す。
 
流俗(りゅうぞく)に固溺(こでき)せず、
左右(さゆう)に拘繫(こうきん)せられず。
 
廓然(かくぜん)として遠見(えんけん)し、
踔然(たくぜん)として独立(どくりつ)す。
 
屡々(しばしば)考績(こうせき)を省(かえり)みて、
以(もっ)て臣下(しんか)に臨(のぞ)む。
此(こ)れ人君(じんくん)の操(みさお)なり。」と。
 
 
平公曰く:「善(よ)し!」と。
 
 
 
●書き下し文
 
晋(しん)の平公(へいこう)は、
自分に仕えている琴の演奏家の師曠(しこう)に質問して言いました。
 
「君主としての道理を守って国を治めていくには
どうしたらよいのだろうか?」
 
 
師曠(しこう)はこの質問に以下のように答えました。
 
「君主が守るべき道理とはとても清らかでけがれのないものです。
陛下はただ以下のことに気をつけて政治を行えばよいのでして、
それ以外にことさらな事をする必要はないのです。
 
君主は常に家臣や民衆たちを分け隔てなく愛することに力を尽くし、
人格と能力に優れた人を任用して、国の政治を任せることを
何より優先させなければならないのです。
 
広く国中の人々の意見や状況を見聞きして
周囲のあらゆる状況を察知するようにして、
 
かたくなになって今までの悪い慣習にとらわれることなく、
近くに仕えている重臣たちに自由を奪われることのないようにして、
 
広い心とさっぱりした気持ちを持つことで
物事の奥深くまで見通すことができ、
そして家臣たちより抜きん出て、誰かに寄りかかることなく
政治を行うことができるのです。
 
そして常に家臣たちの功績や役職が適格かどうかを調べて、
そうして家臣たちの上に君臨することができるのです。
これこそが、君主として常に守るべき事なのです。」と。
 
 
平公はその言葉を聞いて、「よく分かった」と言いました。
 
 
 
●語注
 
 
※晋の平公(しんのへいこう): (?〜紀元前 532 年)古代中国の、
  秦の始皇帝が天下を統一する前の春秋戦国(しゅんじゅうせんごく)
  の春秋(しゅんじゅう)という時代の、晋(しん)の国の三十一代目の
  君主です。平公の養育係を務めた叔向(しゅくきょう)などの
  名臣たちの活躍によって、わりあいに安定した政治を行うことが
  できました。
 
※師曠(しこう): 晋の平公に仕えた琴の演奏家です。盲目でしたが
  聴覚にとてもよくすぐれていて楽器の微妙な音の善し悪しを
  聞き分けていました。
  主君の平公にはしばしば戒めとなる言葉を述べていました。
 
※人君(じんくん): 「君主(くんしゅ)」のことです。
 
※如何(いかん): どうすればよいのかという意味です。
 
※清浄(せいじょう): 清らかで穢(けが)れのないことです。
 
※無為(むい、なすことなし): この場合、「ことさらなことをしなくてもよい」
  という意味で、この文章以下のことだけに気を配らせるために
  使用したことばです。
 
※博愛(はくあい): ひろく分け隔てをせずに愛することです。
 
※任賢(にんけん、けんににんず): 人徳と能力に優れた人を
  任用して、国の政治を任せることです。
 
※万方(ばんぽう): 周囲のあらゆる状況のことです。
 
※流俗(りゅうぞく): 俗世間の悪い慣習のことです。
 
※固溺(こでき): かたくなになるほどに心を奪われることです。
 
※拘繫(こうけい): つかまえてつなげておくことです。
  重臣たちによって君主の自由がきかなくなることを指します。
 
※廓然(かくぜん): 心が広くさっぱりした性格であることです。
 
※遠見(えんけん): 物事の奥深いところまで物事を見通すことです。
 
※踔然(たくぜん): 人より抜きん出ていることです。
 
※独立(どくりつ): 外部の力を借りずに、政治を行うことです。
 
※考績(こうせき): 役人の功績や適格かどうかを調べることです。
 
※操(みさお): 堅く守るべき事です。
 

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